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ロストしたら俺のモノ-酒飲み自由人のダメ男生活-  作者: タヌキ汁
第一章 日常生活と非日常編
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暴力? 反対


 修二は森の中を駆ける。

 子供と子猫を抱えながら走るため、普段より速度が落ち、追いかけてくる魔物を引き剥がすことはでき無いが、必死に駆ける。


「お、おっさん! うしろ! うしろ!! もう来てるよ!!」

「黙ってろ! 舌噛むぞ!」


 徐々に距離を詰められていることは知っている。

 男の子が不安になるほどだから、かなり距離を詰められているのだろう。

 そんな事わかってんだよ。

 修二は一度振り返り目つぶしとばかりにポーチに仕舞っていた粉薬状に加工した痺れ粉を後ろに撒く。

 だが、効果はあまり見られず、魔物達の迫る速度は衰えなかった。

 それでも、修二は、走って、走って、走り続けて、目的の場所へとたどり着いた。


 そこは特に代わり映えしない森。

 今までと変わらぬ木々や植物が広がっている普通の場所。

 そんな場所なのだが、修二はその場に着くと、子供を守る様に抱きしめながら地面に転がり、最後にはうつぶせに倒れた。

 倒れた隙を魔物達が見逃すわけもなく、一斉に修二に飛び掛かった。

 だが、その瞬間、飛び掛かった魔物達の身体は穴だらけになり絶命した。

 修二は何かに躓いて転んだ訳ではない。

 この場所ではそうしなければいけないのだ。


 ここは、グワンパという食虫木樹系魔物が自生している場所。

 木樹であるため動くことはできず、ただ獲物である虫が通りかかるのを待つだけで、無暗に近づいたり反撃しなければ危険はないのだが、なぜか今は魔物達に向かってグワンパが襲い掛かっている。


 食用は虫であり、肉などは好まない危険の少ない魔物のはずなのにだ。

 ならば何故魔物達を襲い掛かっているのかと言うと、それはここに訪れる前に修二が撒いた痺れ粉にある。

 修二が撒いた痺れ粉の材料の一つに特殊個体のグワンパの花粉を使われている。

 そして面白いことに、グワンパと言う魔物は木樹系であるくせに、子孫を残すための花粉が生成できないのだ。

 なので花は咲いても、おしべは存在せず、めしべ単体が存在する。

 要するに、このグワンパという魔物は雌しかおらず、雄となるグワンパは稀に現れる特殊個体のグワンパしかいないと言うことだ。

 そして俺が撒いたのは特殊個体の花粉を使った痺れ粉。

 魔物達に効果はあまりなくとも、雄に飢えた雌のグワンパは歓喜し、己の子を宿すために暴れ狂う。

 ただそれだけの話だ。


「クカカッ、グワンパの世界は雌ばかり、雄は生まれた瞬間から、有無を言わさずハーレム天国。男の夢だが、肉食すぎて俺はごめんだな。クカカッ」

「あれの何が面白いんだよ!」

「おいおい、見ねぇほうがいいぞ。ガキの頃から死体何ぞみてっと、価値観がぶっ壊れっぞ~。クカカッ」


 穴だらけになっていく魔物を尻目に、修二は袖の中から魔道具の糸玉を取り出し、魔力を流す。

 糸玉は蛇の様に地を這い、道の先にある木に巻き付いた。


「さて・・・ガキ。少しこえぇぞ」

「・・?? なんかいったぁぁぁぁぁぁっ!?」


 子供の質問が終わる前に、修二は糸玉に大量の魔力を流した。

 それだけで糸玉は勢いよく修二を引き寄せ、そのままの勢いのまま宙へと放り投げた。


「いってぇ~。これ昔の蜘蛛ヒーローみたいな感じなんだが、使うたびに肩外れんだよ。やっぱヒーローの身体能力はやべえ・・なっと!」


 宙に投げ出されながら、慣れたように外れた肩を入れ直す。

 身体能力はこの際置いておくとして、普通そんな簡単に肩を入れ直すなどできないと思うが、修二にとっては普通のようで、本人はその異常さに気が付いていない。


「うわぁぁぁぁぁっ!? おちるっおちるっおちるっおちるぅぅぅぅっ!?」

「落ちるんじゃなくて落ちてんだよば~か。つか口閉じた方がいいぞ~」


 徐々に勢いが落ちていき地面が近づく。

 叩きつけられればただでは済まないにも関わらず修二は特に慌てた様子も見せない。

 そして、そのまま修二と男の子は勢いよく地面に叩きつけられたのだが、可笑しなことに、その地面は藁の様の柔らかく、モサモサしていた。

 おかげで修二も男の子も怪我無く地面に足を付けることが出来た。


「よっと、う~わ、チクチクすんなぁ~」

「うえ、うええ。んんぅ!・・・あ、あに・・ごれ」

「あん? あ~~、大型草食魔獣のクソ溜まりだ。パンダとかの糞みてぇにうまく消化されねぇで集まった奴・・的な?」

「ぱ、ぱんだ?」

「あぁ、パンダとか馴染みねぇか・・・あれだ、猫が吐き出す毛玉みてぇなもんさ」

「け・・ひっく・・・だま・・・」


 空を飛んだのが相当怖かったのか泣きそうになりながらも、男の意地だと言わんばかりに必死に我慢し、気を紛らわせるためなのか質問する子供。

 そんな子供の状況を知っていても優しくするつもりもない修二は、適当に質問されたことについて説明する。


「さて、やっと一駅がすんだところだ。まだまだ先はなげぇから気合入れろよガキ」

「え、まだ、あるの? もう逃げ切ったはずじゃあ・・」

「そううまくいかないのが、この森の嫌な所なんだよねぇ」

「「「ギギギギギッタタタタタタ!!」」」


 ほらおいでなすったと言わんばかりに、修二はめんどくさそうに頭を搔きながら駆けだした。


「次は衝突、衝突。前後左右にはお気を付けくださいってなぁ~」

「意味わかんねぇよぉぉぉぉ!!」

「行きゃあわかるさ」


 それから修二は森の中に生息する魔物に向かって走り続けた。

 己を餌として、魔物を引き寄せ、引き寄せた魔物を引き連れて、多種族の魔物の住み家に突撃し、殺し合いをさせたり。

 温厚で手を出さなければ襲ってこない魔物の子供を捕まえては、怒った親の魔物に興奮剤と幻覚剤を使い、子供を捕まえた奴を誤認させ襲い来る魔物と戦わせたり、獣型魔物が発情する薬を無遠慮に撒き散らし、種族性別関係なく交尾させ、それを餌として大型肉食魔獣から逃げたりと、全く正々堂々戦うことはせず逃げ回った。


 なんだろうな。

 やっていることが縄張りを荒らして、多種族同士で殺し合いをさせて、子供を攫って、薬で可笑しくさせて、可笑しくなった奴等は囮として使用する。

 うん、外道の一言である。

 それしか感想が出てこない。


「力のねぇ俺じゃあ魔物の世界は生き残れねぇが、周りにヤバいほど利用できる力がゴロゴロ転がってんだ。それ使えば俺でも何とか生き残れるってもんだな」

「・・・カッコイイ事言っているつもりだろうけど、おっさんはクズのクソ野郎なのは変わらないと思う」

「クカカッ、クズで結構。クソも結構。魔物の世界で、クズでクソ野郎は誉め言葉だ。騙して、脅して、煽って、殺す。どんな汚い手を使おうが、生き残ったもんが正しい」

「・・・盗賊みたい」

「クカカッ、よくわかったな。俺の副業は盗賊だ」

「・・・嘘っぽい」

「なんだよ騙されて怯えろよ。可愛げのねぇガキだぜ。さて、次だ次、まだまだ行くぞ」

「うぅ・・・もう帰りたい」


 子供の泣きごとを耳にしながらも、それができるほど甘くはねぇよボケナスと悪態つきながら、修二は次の場所へ向かった。



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