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ロストしたら俺のモノ-酒飲み自由人のダメ男生活-  作者: タヌキ汁
第一章 日常生活と非日常編
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今日はシラフだ。縁起が悪い


 今日の修二は完全なシラフであり、一滴も酒を飲んでいない。

 なんとも珍しい事であり、その理由はこれから依頼を受けに行く・・・からではなかった。

 ならば何故シラフなのかと言うと、数日前犯罪ギルドの構成員を捕まえた(捕まえさせた)時の話が聞きたいと呼び出されたからだ。

 面倒この上ないが、シカトすると碌な目に合わないので、致し方なくギルドに向かっている。

 酒の匂いを漂わせてギルドに行くといい顔されないからな。


 まあ、ついでのギルドから慰謝料を貰うために脳みそをさえわたらせている為でもある。

 ギルドが強制依頼してきた。というか、もうほとんど脅迫だな。うん、脅迫して無理やり受けさせたくせに、契約を反故にしたのだ。

 低ランク冒険者との衝突が無いようにケアをするだの、迷惑を掛けないようにするだの言っておきながら、胸倉をつかまれ喧嘩にまで発展しそうになったのだ。

 依頼書に書いておいた約束事を守れていない以上、それなりの誠意を見せてもらおうじゃないか。

 まっ、別に金など腐るほどあるので、ピカール(副ギルド長)の顔を歪めさせることができればそれで満足である。

 ピカールは怒ると禿頭にシワが寄せるから見ていて面白いからな。

 頭のシワが動く人は禿げないって聞いたことがあるけれど、たぶんあれは迷信だったのだろう。


「うお~い、シエル~。いるか~」


 受付に着くと、目の前の受付嬢など無視して、奥で作業しているであろうシエルを呼ぶ。

 すると修二の声が聞こえたのか、奥からシエルが姿を現した。


「これはシュウジさん。お待ちしておりました」

「うぃ~す。来てやったぞ~。つか、さっさと終わらせてくれ~。こっちは朝から酒飲めなくてめっちゃテンション下がってんだからよ~」

「少しはお酒を控えるのを覚えてください。いつか身体を壊しますよ?」

「そうなったらそうなっただなぁ~」

「まったく・・・まあ、人の人生ですから強くは止められませんから仕方がないですね。それではこちらへどうぞ」


 シエルが優しく忠告を口にしながら、丁寧な接客で個室へと案内する。

 鬼化していないシエルは基本できる良い女である。

 まあ、普通鬼化するまで怒らせる人間はまずいないのだが・・。

 

 そして個室に連れてこられた修二だが、そこにはシエルの他に、ピカール(本名ではない)副ギルド長が無駄に偉そうにふんぞり返っていた。

 頭が光っていて眩しい。

 更に頭の光がシエルの眼鏡に反射してなお眩しい。

 などとバカなことを考えながら話は始まった。


 というか、ほとんど修二がピカールに喧嘩を吹っかけているだけだった。

 初めから終わりまでずっとギルドが犯した規約違反に対する愚痴めいた批判に、ピカールの批判。


 この街のギルド長はひと月ほど前に十年に一度の大事な会議に出かけおり、その間ギルドのナンバー2である副ギルド長様が留守を預かっている癖してこの無能さは如何なものか?という煽りから始まり、脅迫まがいに強制的に依頼を受けさせたくせに、己が提示した契約までも反故にする愚鈍さ。

 更に、犯罪ギルドの構成員が街に潜んでいるにもかかわらず、その情報を全く知らずに頭を磨くしか能の無い無能。

 ギルド長がいればこうはならなかった。

 所詮はナンバー2。

 所詮はトップがいなければ何もできない口先だけの出来損ないと煽って煽って煽りまくる。

 タコのように赤くなりながらも、副ギルド長は鋼の精神でもって怒りを押し殺し、どうやって情報を得たのかと問いかけてきた。

 まあ、問いかけられても、そんな事もわからないのか禿、そんな禿だからダメ禿なのだと、全く取り合わず、ただ禿、禿、タコと永遠に頭皮に関して侮辱し続けるだけだった。


 毎日頭磨いている時間があるなら、光る頭で考えろ禿。

 禿てる時間があるなら脳みそ磨けやなどと暴言を吐きまくるので、結局最後は、ブチギレた副ギルド長に叩き出されてお開きとなった。


 今回地中に埋められなかったのは、曲がりなりにも犯罪者ギルドの構成員を大量に捕まえた功績があったからだろう。

 そして、気に食わない冒険者とは言え、依頼書に書かれていた契約を守らなかった負い目もあり、そこまで過激な暴力を振るわなかったようだ。





「シュウジさんは副ギルド長がお嫌いなのですか?」

「んあ? 別に嫌いじゃねぇけど?」


 部屋を叩き出された後、呆れるシエルに連れられて受付へきていた。

 賠償金がいくら貰えるとかの交渉を一切していないが、どうやら元々ギルドは渡す気だったようだ。

 流石ギルド、金渡すからこれで終わりだと言うことだな。

 うん、黙って欲しけりゃそれなりの金を払ってくれよ。

 差し出す金で人の口は軽くなったり固くなったりするんだからよ。


「ならば何故あんな怒らせるようなことを・・・」

「クカカッ! あれくらい対して仲良くねぇ冒険者とギルド職員同士なら挨拶みたいなもんだろ。あれくらいの挑発何ぞ普通、普通。つか、全然言い返さないで、すぐ手を出してくる奴が副ギルド長で大丈夫かよ。あれじゃあ、下手したら冒険者共と戦争になるぜ?」


 あながち修二が言っていることは間違いないが、流石に長時間煽り続けることは無いだろう。

 あれは絶対反応を見て遊んでいたのだろうなとシエルは思う。


「副ギルド長は冒険者としての経験がなく、冒険者と関わった経験が皆無に等しいと聞いています。確か帝国魔道戦術学部の学園を次席で卒業した人だとは聞いていますが、何故そんな人がギルドに所属しているのかは聞かされておりません。ギルド長がどこからか拾ってきたことは確かでしょうが」

「ふ~ん、そうなのか。なら、これから苦労するぞ~。高ランクの冒険者の中には俺なんかとは比べ物にならないほど口悪く、暴力的で、自分勝手な現役化け物共がわんさかいるだろうからな。そいつ等の対応にいちいちまともに取り合ってたら、ピカールの野郎、下の毛まで禿げるぞ」

「そう言う下品なこと言っているとまた怒られますよ」

「へいへ~い、きぃつけるよ~」


 全く反省の色のない修二であるが、あながち修二の言っていることは間違いではない。

 元冒険者であったシエルはイヤでも理解している。

 高ランクの冒険者の中には本当に手が付けられない跳ね返りがいることを。


「はい、こちらが例の物になります。ハッキリ言ってシュウジさんが望むほどではないと思いますけど、冒険者経験の無い副ギルド長に、あれほどの暴言を吐いたんです。その分差し引かれたと思って駄々をこねませぬようにお願いします」


 渡された袋の中身を確認してみると金貨にも届かない金が入っているだけだった。

 謝罪にしては想像以上に少ないねぇ。


「なんだ。なんだ~? 俺に先輩として懐のデカさを見せて欲しいのかぁ~??」

「そうして頂ければ幸いです・・・おねがいできませんか」


 シエルも渡す金額が少ない事を知っており、それでもなおお願いしてくる。

 ここはふざけるなと暴れるべきだろう。

 冒険者として舐められてはいけない。

 ギルドと不仲になるのは頂けないが、不仲になるとしてもギルド自体が舐めてかかってくる以上、舐められないように敵対するのが冒険者として正解だ。


 ただまぁ、


「・・・・クカカッ。流石にシエルにお願いされちゃあ今回ばかりは流すっきゃねぇな」

「ありがとうございます」


 シエルは悪くねぇし、面倒もみて貰っているんだ。

 不仲になるにしても、敵対するにしても、極力いい人間を巻き込むべきじゃないだろう。

 つっても、俺は舐められていようがどうでもいいがな。

 だって依頼とか真面目にやる気ねぇし、これ以上ランクを上げる気ねぇもん!


「まっ、あのケチクソピカールだからな。賠償金が用意されているだけでも可愛げがあると思っておいてやるぜ。ただし、俺以外にこんな対応しねぇこったな。じゃねぇとギルド長が帰ってくる前にこの街からギルドが消えるか、冒険者がいなくなっちまうぜ」

「そうですね。肝に銘じておきます」


 からからと笑いながら言う修二の言葉を、シエルは静かに頷きかえす。

 恐らく忠告せずとも、今の状況が悪い事をシエルは知っているのだろう。

 ギルド長がいなくなってからひと月しかたってねぇってのに、悪い方に流れるのはすぐだったな。

 まあ俺には関係ねぇけどと修二は金の入った袋を懐にいれ出て行こうとした。

 だが、帰ろうとした修二をシエルがその手を掴み引き止める。


「さて、次は依頼ですね。お仕事しましょう」

「はぁ!? ちょっ!? 仕事なんかしねぇぞ! 今日は東の飲み屋から西の飲み屋まで飲み歩くつもりだったんだから!」


 久しぶりに朝から酒を飲んでおらず、足ものがふらついていないので、街の端っ子にある飲み屋をはしごするつもりだった。


「そんなくだらない予定潰してしまえ。貴方は曲がりなりにもCランクのベテラン冒険者でしょうに。ベテランのランクに籍をおいているのですから、もう少し見本となる行動を心がけてください」

「何が見本だ!! 冒険者は自由なんだよ! 自由に冒険できねぇ冒険者は冒険者じゃねぇ!」

「そこまで言うなら冒険してきなさい。ほら、森の奥にある謎洞窟の探索とかあるから受けなさい。ヘンなの住みついているかもしれないけど、逃げ足だけが取り柄の貴方なら問題ないでしょ?」

「問題大ありだ! 森の奥とかクソあぶねぇじゃねぇか! 俺が行くのは危険度が少ない浅い森までだ! 奥なんざ、そんなクソ疲れるところまで行ってられるかっ!!」

「森が嫌でしたら、ダンジョンにしましょう。貴方の逃げ足の速さなら下層の魔物であろうと逃げられるでしょ。ついでに地図を作成しきてください」

「薄暗くてじめじめしてるダンジョンとかマジねぇから。しかも下層の魔物クソツエェし、罠もパネェほどあるだろうが! 逃げてるときに罠踏んじまったら死ぬわ! ばっかじゃねぇの!」

「いいから何か依頼を受けなさい。これは命令です」

「いやだいやだ! 俺は働きたくねぇんだ! 今日も明日も金が尽きるまで酒飲んでぐ~たらするんだ! それが俺の人生なんだ!!」


 まるで子供の様に駄々をこね、仕事を強要しようするシエルから逃げるために、掴まれた手を振り払おうとするが、元Aランク冒険者の手は離れない。

 前線から遠のいてもその力は強大で絶大だ。

 戦闘能力の乏しい修二が振り払えるわけもない。


「横暴だ! また俺に無理やり仕事させるなんて横暴だ! シエルもピカールみてぇに禿げちまえ!」

「ありがたいことに、私の家系は全員フサフサです。いいから何か受けなさい。この飲んだくれ」

「い~や~だ~。酒のむんだ~。は~な~せ~!! クソボケ~」


 なんとも騒がしく、受付で騒ぐなと叩かれても仕方ないのだが、シエルは根気強く、時に荒い口調で説得し続ける。

 まあ、否が応でも何か依頼を受けるまでは修二を逃がすことはないのだが。

 そんな風にやいのやいのとしていると、ギルドに珍しいお客さんが現れた。


「あら?・・・子供?」


 他の受付嬢の呟きに、修二を捕まえたままシエルは視線を入り口へと向ける。

 確かにそこには幼い子供達が立っていた。

 それなりに一般人が入ってきても問題ないようにしているが、流石に子供だけで来ていい場所ではない。

 受付嬢達も流石に放っておけずに、冒険者がちょっかいをかける前に対処しようとしたのだが、その前に子供達が大声を上げて注目を集めてしまった。


「これあげるから! みーま探してっ!」

「こ、これもあげるよ!」

「ぼくはこれ」

「う・・・ん」


 子供達が叫んだせいで特に気にも留めていなかった冒険者達だったが、面白そうなおもちゃを見つけたと言わんばかりにニヤニヤと笑みを浮かべ近寄る。


「おいおい、ガキが何しに来やがった。ああん?」

「「「ひっ!」」」」


 軽く低い声で脅せば尻尾撒いて逃げだすだろう。

 その姿を酒の肴にしようと思っていたのだが、予想に反して子供達は怖がりながらも逃げることなかった。


「み、みーまを探して!・・ください」

「い、いないの! みーまいなくなっちゃたの!」


 怯えながらも、四人の中で年長者の二人が絡んでくる冒険者に己の要望を伝える。


「あん? 何だおめぇらいっちょ前に依頼しに来たのか?」

「う、うん」


 身体を震わせながら、何度もコクコクと頷きながら、子供達は手に持っている物を冒険者に見せる。


「ぼ、ぼくの宝物。これあげるから、みーま探して!」

「あ、あたしのもあげるの!」

「こ、これ」

「う・・・・うい・・ん」


 そう言って子供達が差し出したのは、丸い石や手作りの人形などを差し出した。

 それを見た冒険者は目に涙を溜め


「そうかそうか、それじゃあその依頼俺達冒険者が・・・受けねぇよバーーーカ! ギャハハハハハッ!!」


 盛大に笑い飛ばした。

 そして、笑い出した男の声に合わせて、やり取りを見ていた冒険者達も良くいったと言わんばかりに、盛大に拍手を送り、皆でバカにする。

 なんとも性格の悪いクソ野郎の集まりであるが、冒険者とはこんな奴等ばかりである。

 まあ、中には紳士的な冒険者もいるが、そんな人物など稀である。


 そして笑われた子供達は行き成り強面冒険者にバカにされ、更に多くの大人達から笑われたことに恐怖したのか、それとも悔しいのか、わからないが、感情のままに泣き出してしまう。


「な、なんじぇ! 笑うんだよ! ぼうけんじゃはほうじゅうあればお願いきいでくれじゅんだろ!!」


 涙を流し、声をからしながら、声を張り上げる子供。

 だがその声を聞いても冒険者達は笑うだけである。

 気の毒に思いながらこれ以上子供達が冒険者達のおもちゃにならないようにと、受付嬢達が動き出し、保護する。


「なんとも恐れ知らずのガキ共だな。あの歳であんな強面のオーク集団の所に良くこれるもんだ」

「シュウジさんはビビリですから、無理でしょうね」


 何気に冒険者達を魔物呼ばわりしているのだが、特にシエルも否定することは無い。

 まあ、ほとんどの冒険者の面はお世辞にも子供受けする面ではないので、仕方がないといえば仕方がない。


「ビビりじゃねぇ。俺は慎重なだけだ。というかシエルはいかなくていいのかよ。ガキとはいえ、あのまま放置しておくとギルドの印象クソ悪くなっちまうぞ。少しでも改善しねぇとうざってぇ民衆が騒ぐぜ? 市民様の評価を大事にしているギルドとしては困ったことになるんじゃねぇの?」

「普段から印象最悪にしている飲んだくれが何を言っているのですか? でも確かにあのまま放置はできませんね。といっても、流石にあの報酬では依頼は受けられませんし・・・」

「クカカカカッ! 報酬ならちゃんと用意しているじゃねぇか! お宝が四つもあるぞ! あんな宝じゃ誰も受けねぇだろうから、テメェ等職員が解消することになるがな! まっ! こういう後始末もギルド職員の仕事だ! 頑張って消化してこい!」

「そうですね。放っておくわけにもいきませんし、致し方ないですね」


 そう言うとシエルは、ため息を吐きながら子供達の元へと向かう・・・修二を引きずって。


「オイコラッ! 何で離さねぇんだよ!! 離しやがイデデデデッ!? 何で関節決めんだっ! 意味わかんねぇぞっ!」

「離したらバックレるつもりでしょう? いいから黙ってついて来てください。あの子達の対応が終わり次第、貴方にもちゃんと仕事を渡しますから」

「いらねぇ気遣いじゃボケェェェェェッ!!」


 ギャーギャー騒ぐ修二であるが、シエルは完全に取り合わず、そのまま子供達の元へと向かった。




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