買い物
修二は酒を片手に街を歩く。
この街に居着いてから半年、全く変わり映えの無い日々を送っていたのだが、今日はそんないつもと同じような日々では無かった。
「うらぁ~、今度はあそこのお肉屋さん行くのらぁ!」
「はぁ~・・・・・・」
「ため息つくななのらっ! 悪いのはシュウジなのら!」
「知るかバカ・・・はぁ、なんで俺がこんなことに・・」
「それはこっちのセリフなのらぁ! 全部シュウジのせいなのらっ! とばっちりもいいとこなのらぁ!!」
ぷんぷんと怒るティティティとやる気なさげに歩く修二は、オヤジから言いつけられた食材の買い出しに出かけていた。
何故二人が仲良く買い物に出かけているのかと言うと、時は数時間ほど前に遡る。
数時間前、修二はいつものように自堕落な生活を送っていた。
酒を飲みゴロゴロと寝転がる。そんな風に今日も一日過ごそうとしていたのだが、不意に酒の肴が欲しくなりオヤジに催促しに顔を出したのだが、生憎食堂にオヤジの姿はなく、ティティティが一人掃除をしているだけだった。
そしてそこからは、案の定というか、いつも通りと言うか、二人のちょっとした言い合いが始まった。
酒の肴が欲しい何か寄越せと。
そんなものあるもんか、どっかいけと。
いいからさっさと寄越せ、つかお前に頼んでも意味ないな、料理作れないしと。
シュウジだって大人の癖に作れないじゃないかと。
バカにするな俺は料理の腕だってピカイチだと。
嘘だ。バカシュウジに料理なんてできる訳無いと
なら見せてやる!
らぁ! みせてみろ!
といった感じで、始まった料理人修二と、それを採点するティティティ審査員。
そして勝負が始まればまた予想通りと言うか、なんというか、また二人の言い合いが再熱する。
こんなの料理じゃないとか、こんなの料理とは認められないとか、マズイとかティティティに言われた修二は、なら俺の本気を見せてやるといい。
店の食材を勝手に使い、次々と料理を作っていった。
その結果、対して美味しくも不味くもない料理が大量にできあがった。
そして最後には使いっぱなしの調理器具が散乱した荒れ果てた厨房ができあがってしまったのだった。
どこかに出かけていたオヤジが戻ってきて、その光景を見ればどうなったかなどここで語らずとも想像できるだろう。
まあ、そんなことがあり、二人は今回使った食材の補充を言いつけられ、二人仲良くお買い物へと繰り出したのだ。
勿論食材を補充する金は修二が弁償と言うことになっている。
「いったいどんだけ買うつもりだ。もう流石に持てねぇぞ」
両手いっぱいに荷物を抱えながらも、修二は器用に酒を飲む。
酒を飲んでいる時点でまだまだ余裕がありそうだが、本人はもうこれ以上持てないと言わんばかりに苦言を発していた。
「シュウジは非力なのらぁ! 冒険者の癖によわよわなのらぁ!」
「脳みそ筋肉達磨共と比べんじゃねぇっての。俺は知能派冒険者なんだよ」
「シュウジに知能なんてあるのらぁ?」
「少なくとも計算もできないお前よりは知能は高いだろうよ。さっきも釣銭いくらかわかってねぇ癖に、わかった顔しやがって」
「な、なんのことなのらぁ! 言いがかりは止めるのらぁ!」
「ほほぉう、なら問題だ。小銅貨4枚の野菜を8個買い。更に大銅貨3枚の野菜を7個買った。さてお前は銅棒5本持っているが、いくら払えばいいでしょうか」
「・・・う?」
「更に手元にいくら残るのか三十秒以内にお答えくださ~い」
「あ、あ、・・あうぅ」
修二は行き成りティティティに計算問題を出す。
この世界でティティティくらいの年の子であれば答えられないのが普通ではあり、ティティティにとってとても難易度の高い問題であったのだが、商売人の娘であるならばこれくらい答えられるようにならなければ後々困ることにもなるだろう。
流石に三十秒以内に全ての答えに行きつくことはできなくとも、いくら払えばいいかくらいは回答できるかもしれない。
そう期待していたのだが、ティティティは己の指を何回も折り曲げて、「小銅貨4枚のおやさいが・・いち・にぃ・さん・し~・ごぉ~・ろく」と計算する姿を見てこりゃダメだなと悟る。
「ほら、そろそろ時間だぞ。できねぇのか?」
「う、うるさいのらぁ! いまやってるのらぁ!」
邪魔するなと言いながら、声を掛けられたことでどこまで数を数えていたのかわからなくなり、計算できないことに苛立ち、口をへの字に曲げる。
「お答えは~?」
「・・・・・・・」
「おい、答えはなにか言ってみろ」
「・・・・・わ・・・わからないのらぁ!」
「ですよねぇ~」
「う、ううぅぅぅぅっ!!」
「いてっ! イテイテッ! やめろ蹴るんじゃねぇ!」
バカにしたような修二の声に、ティティティは悔しくて泣きそうになったが、それを我慢する為に修二の足をゲシゲシと何度も蹴る。
幼い女の子の力とは言え地味に痛い。
「やめろってのバカが! たく、計算できねぇお前が悪いんだろうが」
「いきなり問題出すシュウジが悪いのらぁ! それにとっても難しい問題なのらぁ!」
「あの程度の問題で音を上げんじゃねぇっての・・・なら小銅貨2枚の野菜を2個買ったらいくらだ?」
「えっ・・・え~と、え~と・・・・・・小銅貨4枚なのらぁ!」
「正解だ。なら小銅貨4枚の野菜を2個買ったらいくらだ」
「・・・・・・・・・・・小銅貨8枚なのらぁ!」
「正解。だが、次からは銅貨1枚と小銅貨3枚て答えろ。そうすりゃ満点くれてやる。つか、小銅貨5枚で銅貨1枚になるって知ってるよな? 大銅貨は小銅貨10枚分で、銅貨だと2枚分だぞ。わかるよな? つか硬貨が銅貨しかないとか思ってないよな?」
「勿論わかっているのら! バカにするななのらぁ!」
「いやいや、お前の脳みそはまだまだ灰色だからな。バカにするのは仕方がなイテッ!? だから蹴るんじゃねぇっての!」
そしてなんだかんだと面倒見のいい修二は、ティティティをからかいながらも簡単な計算問題を出しながら買い物を続けた。
そんな光景を初めて見た者がいたならば、修二とティティティが仲の良い年の離れた兄妹と思われていたかもしれない。
お金の価値
小銅貨一円
銅貨五円
大銅貨十円
銅棒五十円
小銀貨百円
銀貨千円
大銀貨一万
銀棒十万
金貨百万
大金貨千万
白金貨一億
こんな感じで設定していきたいと思います




