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ロストしたら俺のモノ-酒飲み自由人のダメ男生活-  作者: タヌキ汁
第一章 日常生活と非日常編
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図々しいご家族


 桶とタオル、そして洗濯物を手に持ち宿の裏手に向かった。

 今日の修二の予定は洗濯兼風呂である。

 まあ風呂と言っても仕切りもない場所で、井戸の水で汚れを落とすのが一般的で、風呂とは名ばかりの水浴びだが、こと修二の水浴びは他の者達とは違ってちゃんとした風呂を作って暖かな湯につかる。

 土魔法で大人一人入るだけの風呂釜を作り、その中に火魔法と水魔法の合成魔術でお湯を溜め、その中に入る。

 この世界では貴族か金持ちしか得ることのできない風呂を、修二はこともなげに作り出し堪能している。

 更には、火魔法と水魔法の二つの魔法以外にも風魔法や光魔法、森魔法と言ったあらゆる魔法を組み合わせ、シャワーのような魔法で身体を流したり、バブルウォッシュと言う独自に開発した魔法で汚れを落としていた。

 普通の魔法使いよりも魔力が少ない癖に、合成魔法と言う無駄に高等技術は得意で、生活に役立つ魔法だけはこの世の中で世界一の腕を持っている。

 修二が真面目であったならば、もしかしたら一流の合成魔術師として名をはせていたかもしれない。


ジャブジャブジャブジャブ


 修二は桶にお湯を入れると、洗濯物を桶にぶち込み、軽く揉み洗いをする。

 その後、風魔法で新しいお湯ごと洗濯物を浮かばせ、水魔法と森魔法と光魔法の合成魔法、バブルウォッシュという天然泡洗剤魔法で汚れを落とした。

 魔法を使えない一般人は洗濯板などで洗うものだが、魔法を使える修二にとっては洗濯などほとんど労力を使わぬ簡単お仕事である。

 本当に修二には勿体ない才能だ。

 

 数分程で洗濯が終わり、汚れた水を庭の端に蒸発させた後、己の身体もバブルウォッシュで洗ってから湯につかる。

 一応人の目のある街中なので、最低限のマナーとして下を隠せる湯着を着ている。

 本当は全裸で風呂に入りたいが、衛兵に御厄介にはなりたくないのでこればかりは仕方ない。


「あ~~、きもちぃ~~」


 風呂に浸かりながら、修二は頭にバブルウォッシュを纏わせ、自動で髪を洗う。

 魔法ってのは便利だねぇ~。

 大賢者顔負けの魔力があれば、歩くことさえもせず魔法で浮かんでいたいものだ。

 そんな自堕落な願いを描きながら、風呂を楽しんだ。


「あー! シュウジ! ずるーい!!」


 日頃の疲れをお湯に溶かしていると、騒がし声が修二のまったりタイムをぶち壊す。

 少し不機嫌になりながら、視線を向ければ、そこには洗濯籠を抱えたティティティが頬を膨らませ立っている。


「あ? なんだお前かよ」

「お前じゃないのらぁ! ちゃんとティティティにはティティティって名前があるのらぁ!!」

「あーあー、うるせぇ。洗濯するなら勝手にやれよ。俺の貴重な、まったりタイムを邪魔するな」

「うー! だってシュウジズルイのらぁっ!! それ魔法なのらぁっ!!」


 洗濯籠を地面に置きながら、ティティティは風呂を指差す。


「お水汲むだけでも大変なのに! シュウジは一人でそんなにお湯使ってズルイのらぁ! 魔法ズルイのらぁ!!」

「魔法がズルなわけあるか。いいからお前はそっちで洗濯してろ・・ああ、ガキのお前じゃあ井戸から水を引き上げられねぇか。ならオヤジ達大人が来るまで大人しくしてな。非力なガキじゃどうやっても汲めやしねぇよ」

「むっかぁぁぁ!! ティティティだってできるのらぁ! そこで見てろなのらぁ!」

「やめとけ、やめとけ。ケガするぞ」

「しないのらぁっ!! イイから黙って見てろなのらぁっ!!」


 ドスドスと音を鳴らすほど地面を踏みしめ、井戸に向かうティティティに本当に大丈夫かよと思いつつも、駆け寄ることはせず、風呂を堪能する。


「むぅぅぅぅぅぅっ!」


 そんな修二の行動がお気に召さないのか、ティティティは頬を膨らませる。

 行き成り現れて、絡んできたかと思えば、勝手に怒り出す。

 いったい何がしたいのやら。


「む~、っら!! む~~っら!!・・む~~~~~~らっ!」


 ティティティは独特な掛け声を発しながら井戸から水を汲むためにハンドルを回す。

 縄を引っ張る純粋な力でのみ滑車を回していた時代よりも、今はハンドルで滑車を回しながら少しずつ持ち上げられる仕組みになった。

 最近は力のない子供でも簡単に水汲みができる、手押しポンプが開発されているようだが、まだ数が少なく、未だに庶民には行き届いていなかった。

 まあ数が少ないのも原因ではあるが、物珍しい物、新しい物が好きな貴族共が独占しており、庶民にいきわたらせるよりも、オーダーメイドで作らせて遊んでいるので、庶民へ回ってこないのだろう。

 貴族共が飽きない限り庶民に回ってくることは無いだろうな。


「ほ~れ、頑張れ~」

「う、うるさいのらぁぁぁぁ!!」


 奮闘するティティティを茶化すように声を掛けながら、見守る。

 そしてしばらくティティティは奮闘していたが、流石に最後まで水を持ち上げることが出来ず、荒く息を吐きながらハンドルから手を放して尻餅をついてしまった。


「あっ! ばかっ!」


 途中ストッパーをかけておけばいいだけなのだが、そんな知識など無いのか、せっかく回したハンドルが勢いよく逆回転して今までの頑張りを無に帰した。

 幸い勢いよく回っていたハンドルがティティティにぶつかることは無く怪我はなかったが、物凄く危ない光景で下手したら怪我をしていただろう。


「あう~」


 そんな危機的状況であったことにティティティは気付かず、ただ勢いよく尻餅をついたために、お尻を痛いと涙を目に浮かべていた。


「う、うぅぅ~」

「はぁ、何やってんだか」


 生意気な奴だが、流石に泣きだされても困るので、仕方なく風呂から上がると、ティティティの元に訪れる。


「少しばかりケツ打ったくらいで泣くんじゃねぇよ」

「な、ないてないのらぁっ!!」


 修二の言葉にティティティは負けじと言い返し、グシグシと目を擦りながら立ち上がる。

 そしてまたハンドルに手を伸ばし、水を汲もうとしていたのだが、流石に放置できずにティティティの首根っこを掴み止める。


「なんなのらぁ!! はなすのらぁ!!」

「うるせぇな。いちいち甲高い声出すな。頭が痛くなるわ」


 文句を言いながら、修二はめんどうそうにティティティが持ってきたタライに魔法で水を灌ぐ。


「ほら、あれでいいだろ」

「・・・お湯がいい」


 別に水が冷たいなどと言う季節でもない。

 そもそも井戸の水よりも暖かいのだからこれで十分のはずだ。


「お湯がいい!」


 はずなのだが、ティティティはお湯を寄越せと我儘を言い出す。


「あったかいのがいい! お湯だしてっ!!」

「う~わ。クソメンドクセェこと抜かしやがる。うざってぇこと言ってねぇで、あれで洗濯しろ」

「やーー! あったかいのがいいーー!!」


 キャンキャンと子犬が喚くように騒ぐティティティに顔を顰めながら、ぶん殴りたい衝動に駆られる修二。

 だが、流石に子供に手を上げるクズ野郎ではないので、仕方なくタライの水を捨て、代わりにお湯を作り出し、タライに入れてやった。


「おら、これでいいだろ」

「・・・あわあわがほしふがっ!?」


 次は何を要求してくるのか予想できた修二は、ティティティの鼻をつまむ。


「おいガキ、お前マジで図々しいな。誰に似たんだこの野郎」

「いたいのらぁ! いたいのらぁっ!! バカシュウジはなすのらぁ!!」

「誰がバカだ。クソガキ。悪口言う前に感謝の言葉が先だろうがよ。おら、行ってみろよ。ありがとうございますってよ。お礼の言葉を言ってみろや」

「ぷぎーっ!! 誰が言うかー! あっち行けバカシュウジー!!」


 ヘンな悲鳴を上げ、フガフガと鼻を鳴らす姿に、豚みたいだと思いながら、未だに生意気なティティティの鼻をつまみ続けた。


「もう、それくらいにしてくれませんか? シュウジさん」

「あん? ようカルラ」


 ティティティの鼻をつまみ続けていると、背後から声を掛けられた。

 そこにいたのはタライを2つ抱えた線の細い女性。

 彼女の名はカルラ、この宿屋のオヤジの妻であり、ティティティの母親だ。

 ぶっちゃけ性格は大人しめで、ティティティのように騒がしくない。

 オヤジも騒がしい感じではないので、性格はどちらにも似ていないように見える。

 なんであの二人からこんなに騒がしいガキが生まれたのか疑問だ。


「つかおせぇよ。ガキを一人で井戸に近寄らせんな。落ちたら死んじまうぞ」


 一応井戸に蓋がしてあるが、あんなものないと同じだ。

 ガキでも簡単に開けることが出来るからな。


「ティティティはしっかりした子ですから大丈夫ですよ」

「いや、それは無い」


 半年近くこの宿にいるが、コイツは基本単純で考えなしのバカだ。

 今回も少し煽っただけであぶねぇ水汲みに危機感なく手を出したからな。

 このガキは下手すりゃ冒険者共と変わらねぇほどの無鉄砲さだぞ。


「つか、オヤジは何してんだよ。水汲みとかの力仕事はオヤジの仕事だろうがよ」

「そうなんですけど丁度シュウジさんが井戸の方へ向かうのを見かけたので、後は任せたと言っていましたよ」

「おい、なんで勝手にあてにされてんだ。腰に来る水汲みなんざ俺はしねぇぞ」

「でしたら魔法で、こちらにお湯ください」


 タライを2つも抱えているわりに洗濯物が数える程しかないのはそう言う意味かと思い修二は顔を顰める。


「何で俺がそんなことしなきゃならねぇんだ」


 こっちは客だというのに、こき使おうとするカルラの物言いに不満そうにしながら、今度はティティティの頬を引っ張る。

 鼻をつまむのをやめているので豚のような鳴き声はやんだが、今度は猫のような悲鳴を上げてベシベシと修二の手を叩いていた。


「主人が特別に冷やしたエールを用意していますよ。お風呂上りに冷やしたエールはさぞおいしいでしょうね」

「ピクッ」

「へぴゅっ!?」


 カルラの言葉に、修二はティティティの頬を押しつぶした状態で固まる。

 ティティティの口から変な声が聞こえたが、気にしてはいけない。


「今日の夕食に揚げ物を用意していますけど、流石に揚げ物は時間がかかりますので作り置きしておくものばかりです。揚げたてを摘まみながら冷たいエールを飲む機会はそうそうありませんけど、いりませんか?」


 できたて、揚げたて、熱々の美味しい揚げ物、食べたかったらお湯下さい。と言わんばかりにタライを修二の目の前に並べる。

 これは手伝わなければ食わせないぞと言うことだな。


「・・・いい性格してるぜ」


 そう愚痴をこぼしながら、修二は仕方なくタライにお湯を注いだ。

 まあ少し手間だが、魔法で洗濯の手助けをするだけでうまい酒と食い物にありつけるのだから文句はない・・面倒ではあるが。


「良ければ魔法で洗ってもらえませんか?」

「流石に図々しいぞ」

「お願い聞いていただければ、あの人の特製ピクルスがでてくると思いますけど?」

「・・・そうくるか」


 オヤジの特性ピクルス。

 店のメニューにはなく、オヤジが飲むときにしか出てこない酒の友。

 ここに泊まって半年程たつというのに、食わしてもらったのは一度だけ。

 もはや幻と言っていいほどの酒の肴。


「一口だけとか言わねぇよな」

「最低でも一本はご用意します」

「そうか・・・」


 なら仕方ないと思い、修二はティティティの頬から手を離す。


「着替えている間に軽くお湯で洗っとけよ。そしたら一気に終わらせてやる。代わりにぜってぇ食わせろ。クソうめぇ特製ピクルス」


 そう言うと、修二は火魔法と風魔法を合成させた温風魔法で身体や下着に着いた水滴を吹き飛ばし、着替え始めた。


「できればその魔法で洗濯物を乾かしてほしいのですけど」

「それは流石に欲張りすぎだ。蒸発させるだけならまだしも物を傷めないように乾かす魔法は継続するのも調整するのもクソ疲れんだよ。魔力も半端なく消費すっから、テメェの持ちもの乾かすので限界だ」

「残念ですね~」

「う~・・・しゅうじのば~か」





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