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ロストしたら俺のモノ-酒飲み自由人のダメ男生活-  作者: タヌキ汁
第一章 日常生活と非日常編
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口は災いの元なり


 本日の飲んだくれのダメ男こと修二は、何と仕事をいくつかこなしてきた。

 とはいってもギルド職員が喜ぶような奉仕依頼ではなく、常時依頼されている薬草採取(Fランク)の依頼をこなしてきただけだ。

 薬草は生い茂った草原に隠れるように生えている為、見つけるのが面倒だが、こと修二の能力の前では面倒とはほど遠い依頼であった。


 まあ、冒険者内では所詮は雑草拾いとバカにされる依頼だ。

 魔物と戦う気概の無い臆病者が受けるような依頼だと言われていた。

 脳筋冒険者の戯言であり、人の評価を気にしない修二には関係の無い話である。

 臆病で結構。

 外にこそ面白い金目の物が落ちており、手つかずの資源があるのだ。

 それを得るついでに薬草も拾ってくるだけで鬼シエルの溜飲が下がるので、これほど楽な依頼などない。


「ぷはぁーーー! 激務後のエールってのもまた乙なもんだぜっ!!」


 一日まともに働いたくらいで、酒盛りを開くこのダメ男の神経はどうかと思うが・・。


 森の、それも比較的浅い場所に行き、なんの苦労もせずに薬草を拾い、金になる落とし物を拾って来ただけにも関わらず、そんなふざけたことを宣う修二であるが、そのことを知らないオヤジは、まあ激務ではないだろうが良く働いたんじゃねぇのと、僅かにねぎらいの言葉をかける。

 オヤジが修二の能力を知っていれば、絶対ねぎらいの言葉など吐かなかっただろう。


「しかし、また随分と稼いできたな。スカンピンだったくせに何で一日出歩いただけで、そんなに稼げるんだ? まるで意味が分からん」

「くかかかかっ、いったろ。俺は運がいいんだよ。幸運の女神様って最高の女に溺愛されてっからな。いやいや、モテる男はつらいねぇ~」


 膨らんだ財布を自慢するように、そして見せつけるように手遊びしながら、修二は酒を煽る。


「そりゃあ羨ましいこったな。だが、そんな見せつけてっと、馬鹿共に襲われるぞ。少しは警戒したらどうだ」

「必要ねぇ、必要ねぇ。俺は戦闘に関しちゃクズだが、逃げ足だけはピカ一だから心配ねぇ。 それにヤベェッと思ったら有り金ばら撒いて逃げてやるよ」


 秘儀桜吹雪の舞! などと言いながら金をばら撒くような動きを見せる。


「それによ~。んな事この街でしたら一発でしめぇだろ? たかだかうだつの上がらねぇおっさんの金奪って、あのクソヤベェ僕達正義の味方(笑)騎士共が出張ってくるんだぜ? 捕まったら正義の名のもとに悪は断罪とかほざいて、酷い目にあわされるなんて話は、スラムのガキでも知っている常識だろう?」

「そうだが、魔が差す野郎なんていくらでもいるだろ?」

「くかかかかっ、魔、魔が差す! いいなそれ。正義の味方様は魔が大嫌いだから。それだけで縛り首にされるぞ」


 もう酒に酔っているのか、修二は何げないオヤジの言葉に笑い声をあげる。

 まあ、酔っ払いのツボを理解するのは困難であるから放置でいいだろう。


「くかかっ、しかし魔が差すねぇ~。そう言う奴ってのは大抵金に余裕がねぇ貧乏人だろ?」

「そうだと言いたいところだが、一概にそうだとは言えねぇだろ。誰しも稼いでいる奴を見ると嫉むもんだし、日頃遊び歩いている奴がテメェの飲んでる酒より上等なモノ飲んでたらやっかみもあろうさ」

「くはーっ! 嫌だねイヤだね。そう言う荒んだ心。そう言うのは酒と一緒に全部流しちまえばいいのによ! これだから運も金もねぇ奴はダメだな! ダメダメだぜ~」

「運だけで食っていける奴なんざお前くらいだ」

「くはははっ! 確かになっ! 俺は選ばれた男だからよ。おかげで運だけでCランクにまでのし上がれたぜ。まっ! 運も実力のうちだ。どれだけ腕があろうと、活かす頭を持ち合わせてなけりゃゴブリン以下だぜ! おんや~? そうなると低級冒険者ってのはゴブリン以下のクソ雑魚の集まりか? やべぇぞオヤジ! そんな奴等ばかりだとギルド潰れちまう! ギルドオワタ! クカカカカカカッ!!」


 まるで周りで食事をしている低ランク冒険者達をバカにするかのように、大声でそう宣う。

 そして修二の狙い通り低ランク冒険者達から殺意を向けられることとなった。

 オヤジの店の宿代は安いわけではなく、どちらかと言うと結構高い分類に入る。

 なので宿で寝泊まりしているのは、ほとんどベテランと呼ばれるCランク以上の冒険者ばかり。

 だが、ギルドと契約しているおかげで、ギルドが期待を寄せている低ランク冒険者であれば無料で数日泊まれるようになっていた。

 ギルドの目的は、良い宿の設備や美味い飯の味を覚えさせ、より良い生活を求めるさせ、向上心を損なわせないようにしている。

 そして宿の目的は将来有望になりえる冒険者との顔つなぎ兼顧客を増やす為であった。

 故にオヤジの宿屋には数人ほど低ランクの冒険者が滞在していた。


「おい、流石に言葉が過ぎるぞ」

「なんだよ。お説教か~? 酒の席でそれは勘弁だぜ? つか、低ランクの冒険者は舐められて当然だろ? 何も考えねぇで与えられた情報を鵜呑みにするだけのアホ。素材の相場も知らねぇし、調べもしねぇアホ。やり方を変えればもっと効率よく素材が取れるってのに、手段があるってのに調べやしねぇアホ。更にいやあ、テメェが住むこの街の噂話にさえも耳を傾けねぇアホ。その日、その日の依頼で疲れたとかほざいて、なんの情報も得ようとしねぇアホ。そんなアホ共がいいように使われて、奪われて、くたばるのが当然だっての」


 ぐびぐびと酒を煽りながら、修二は知った顔で語り出す。


「今日は随分と饒舌じゃないか?」

「はっ! 稼いだ日にゃあ俺だって舌が回るってもんだ! つかよ! 俺は運がいいって言ってるが、こちだって色々努力してんだぜ? 色々調べて、色々考察して、いろんな奴等の話を聞いて耳を傾けてんだ。どんな話も、どんな言葉も、どんな噂話も全部聞いて調べてんだ。んでずっと調べ続けてるとよ。見えてくるんだよ。ギルドが密かに用意してる金の匂いがよ~」

「お、おう。そうか」

「おう、そうかじゃねぇっての! いいか! オヤジは俺がただの飲んだくれとか思っているようだがな! ただの飲んだくれにも特技ってのがあんだぜ! こと情報収集に関しちゃあ俺の右に出るものはいねぇ! おらあ腕っぷしはクズだが、物探しだ、人探しだはピカ一世よ! ギャハハハッ! ピカ一世! ピカ一じゃ無くてピカ一世! 面白れぇなっ!!」

「・・・・・・・・」


 酔いが回ってきたのか、しょうもないことで笑い出す修二。

 頭のネジがぶっ飛びかけている修二に、オヤジはただ黙して己の仕事をこなす。


「低ランクってのはバカばっかだぜ。与えられた仕事をこなせばいいとか思ってんだぞアイツ等。アホだよなぁ~。ちゃんと調べりゃその仕事の旨みってやつが見つけられるのによぉ。だから腕があってもいつまでも下っ端低ランク止まりの奴が多いんだよ。技ばっか磨いてねぇで、頭も磨けっての。ウチの吹く禿長ふくはげちょうのようにな!! あっ、まちげぇた。副ギルド長だった!!」

「「「「ブフッ!」」」」


 盗み聞いていた数人のベテラン冒険者達が、皆一斉に吹き出す。

 別に笑いを取りに行ったわけではなく、思ったことが口からでただけである。

 修二に悪気はない・・・と思う。


「あ~あ、知らねぇぞ。副ギルド長地獄耳だから絞られてもしらねぇぞ」

「いやいや、流石にそこまで地獄耳じゃないっしょ~。ありえないっての~」


 いや、あの副ギルド長ならどこであろうと聞き耳を立てているだろうと、副ギルド長を知る冒険者達はオヤジの言葉に頷いた。


「つかよ。この程度で暴力振るうのか? そりゃあギルドとしてどうなの? 理性あるギルドとして示しがつかねぇよなぁ? ギルドの権威を日々磨いて、じゃなくて支える者としてダメでしょ? それで暴力振るってきたら頭部の耐久力無さすぎ、じゃないて忍耐力なさすぎっしょ! つか、絞るって何する気だよ! 濡れた髪でも絞ってくれるの? 自分のがないからって人の触らないで欲しいんですけどぉ~。マジで触って欲しくない。テメェの頭皮でも磨いてろっての。あの頭だったらタオル使わなくとも光魔法で水気が吹き飛ぶけどな! クカカカカッ! ヤベェ! それやられたら目が潰れちまうよ! クギャギャギャギャギャギャッ!! ヒカリガーッ! メガーッ! ギャハハハハッ!! ンギャッ!?」


 不意に長い蛇のような闇の鎖が現れ、修二に絡み付くと腹を締め上げながら宿屋から引きずり出そうとした。

 その闇魔法は先程までバカにしていた副ギルド長の魔法。

 魔力という糧を捧げることによって、生み出される奇跡。

 その力は強大で、人の力だけで抗うことは叶わない。

 そんな力を惜しげもなく副ギルド長は修二に向けて使ってた。


「ウゲェェェ!? マジかよっ! あのインテリ卵! 毛根死滅する代わりに聴力強化されてんじゃねぇのイギャャャャッ!?」


 そして相も変わらず、口の減らない修二は更に暴言を吐き、締め上げられる。

 と言うか、毛根死滅発言が逆鱗に触れたのか鎖の数が増えている。


「や、ヤベェ、オヤジ助けてっ!」

「逃げ足はピカ一世なんだろ? がんばれよ」

「ハッハッハッ! 何言ってんだオヤジ? 流石の俺でも頭部から光放つ特殊禿異体ではなくて、特殊禿生物からは逃げられヌオォォォォッ!? ヤバイ! マジでヤバイ! 物凄く絞めあげてきやがる!? この禿げ鎖! 所有者に似た剥げ腐った鎖が俺の骨を砕きにきてるぅっ!? ちょっ!? まじで! マジデッ助けてオヤジッ!!」


 助ける以前に、それ以上煽るなよと思いながら、もはやそこまで禁句を口にしたのだ。

 助けることなど不可能。

 なので、オヤジはテーブルに置かれていた修二の財布を手に取ると。


「テメェ等! シュウジのおごりで酒だしてやる! シュウジの健闘をゴミクズ程度に祈ってやれ!!」

「「「「おっしゃゃゃゃゃっ!!」」」」

「ざっけんなーーーっ!!」


 人様の金を勝手に他人の酒代に変えようとするオヤジに修二は力の限り叫ぶも、オヤジはただサムズアップするだけで


「今回ばかりは相手が悪い。死ぬなよ」


 聞き入れることはなかった。


「「「「幸運の女神(笑)のご加護があらんことを~。ゲハハハハッ!!」」」」


 聞き耳をたてていたベテラン冒険者達は修二を笑いものとし、低ランク冒険者達は静かに中指を立てた。


「テメェ等覚えてやがれぇー! あの発光生物から逃れたら、テメェ等の頭部も禿長と同じようにしてやクヒュッ!?」


 我慢の限界が訪れたのか、鎖が首に巻き付き修二の意識は奪われ、そのまま引きずられ闇に消えた。

 その日の夜ギルドから汚い男の悲鳴が響いたとか、


「おいおい、埋まってるぞアイツ」

「禁句連発したのはマジモンの話だったんだな」


 汚い男の悲鳴が聞こえた次の日の朝、ギルドの訓練場で首から下を埋められているものがいたとか、


「あら、なんでこんなところに生ごみが転がっているのかしら? 汚いから誰か片付けなさいよ」

「うざってぇぞ。黒パンツ。クソガキド貧乳の癖してなに色気づいてんだ。似合わねぇ」

「・・・えっ?・・・あっ・・・・うにゃーーーー!?」

「ギャーーー!! はものぉぉぉぉぉ!?」



 ある顔見知りの少女のサンドバックにされ、串刺しにされたとか・・・されていないとか・・。




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