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ロストしたら俺のモノ-酒飲み自由人のダメ男生活-  作者: タヌキ汁
第二章 ドリル令嬢と酒切れ編
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無法者達の戦場怖い


 泥沼化したとはいえまだ始まったばかり、そこかしこから戦闘音や悲鳴が聞こえてくるも、未だにむせ返るほどの血の匂いはしない。

 先行した猪達と比べて、ここにいる冒険者や賞金稼ぎ達はそれなりの腕を持っているのだろうな。

 なんとも頼もしく、なんとも残念である。

 もっと数が減ってくれた方がいいのにと思いつつ、修二は危険な戦場を駆ける。

 冒険者達にちょっかいをかけながら。


「ヤバイぞベッソ! テメェが相棒の女と寝てるのがバレた!」

「はあっ!? マジか、じゃねぇ! 今の誰だ!」

「おい、今の話はマジかコラ?」

「バカ野郎! 今は戦闘中だぞ!」

「今叫んだ奴が受付嬢達の下着を盗み、裏で売りさばいている奴だぞ!」

「んな!? 何でそれを!? つか、さっきから誰だ!」

「「「誰だじゃねぇこのヤロウが! だから最近羽振りがいいのかこのヤロウ! 俺等にも儲け寄越しやがれ!」」」

「ああ、あそこに御座すはかの有名なゲイホルン。最近男性兵士(数百人)とただならぬ関係を持ち、次に同業者のケツを狙うハンター! 賞金稼ぎならぬ男金稼ぎの凄腕ハンターだ! ゲイホルンさん! 今ならあそこに傷付いた男達が食べ放題ですよ!!」

「言われずとも狙っておるわい」

「「「「「「・・・・・・・え?」」」」」」


 確かに、ここにいる者達は腕がいいのだろう

 だが私生活まで良いとは限らない。

 誰にだって、というか、戦闘を生業とする奴等は何かしら世間様に言えない問題と言うか、秘密を抱えている。

 女癖が悪いのは勿論の事、金遣いが荒かったり、犯罪ぎりぎりの行為に手を染めたり、性癖が常人には理解できなかったりと色々な秘密を持っており、知られたくないと思っている。

 俺の知り合い達は隠さずフルオープンな奴等ばかりだが、あんなのはホント稀だからな。

 今回約一名知り合いと同じようなオープン野郎がいたが、ホントに稀なんだからな。

 まあ、それはそれとして、俺はこんな感じで皆にちょっかいをかけては戦闘の邪魔をしていた。

 この程度が隙になるなどとは思っていないが、この戦闘が落ち着いた後皆どういう関係になるのか、それがとても楽しみで仕方がない。

 喧嘩するのか、全てを許し和解するのかわからないが、確実に街から離れる者達が多く出るだろう。

 気の良いパーティーとして今までうまくやって来れていたのに、それが壊れるかもしれないのは、当人達にとっては悲しい事だな。

 俺には関係ないから、指差して笑ってやるけど。


 そして、そんな事をしていれば嫌でも目立つ。

 できるだけ一箇所にとどまらずに走り続けているが、気付かれない訳がない。

 なので余計な茶々を入れる俺を黙らせようとする者や、殺そうとしてくる者が現れた。

 大体黙らせようとする者は全体の一割程度で、残りの九割は俺を殺そうとしてくる奴等。

 耳障りと言う理由で殺しに来る奴がほとんどだが、僅かに俺の正体に感づいた奴等や殺し屋が向かって来ていた。

 今の様に一人でな。

 手柄を己のモノにしたいのか、それとも魔物のせいで仲間を引き連れる余裕がないのか知らないが、こちらとしてはとてもありがたい。


「シッ!」


 今回襲い掛かってきた奴は能力を持たない努力と才能で強くなった、とてもイケメンで女にモテる殺し屋さん。

 何かしらの能力を持っていたらもっと強くなり、もっと上位の殺し屋となったであろうな。

 などと思いながら、元々わかりきっていた攻撃をするりと避けると、置きみやげとして刺激物を顔面に投げ付けつつ、股間に毒付きナイフを突き刺しておいた。


「アアアァアアァァッ!!」

「ウッ、えげつねぇことを」


 別にイケメンがムカつくからわざわざ股間を狙ったわけじゃないからな。

 ただ、その顔が自慢みたいだから傷をつけないように下を狙っただけだ。

 今後どれだけ女を誑かそうと、最後まで行けない不能になったかもしれないが、それも気にする事無いだろう。

 これからは真実の愛を探せばいいだけなのだから。

 おお、そう考えると俺って彼にとてもいいことをしたのかもしれないな。


「グソッォォォ! クソォォォォッ!! テメェ! コロシテヤル! コロシテヤルゥゥ!! ゲボッ」


 まあ、結局彼は真実の愛を探すことなく死んでしまったんだけどな。

 いや、戦場で蹲り、血を流しながらあれだけ叫んでいれば魔物が逃すわけもあるまい。

 更に言えば周りにはお仲間はいない状況。

 周囲に賞金稼ぎや冒険者達がいようが、仲間では無く、怪我を負った足手纏いなら助ける訳もない。

 というか、魔物の身動きを止めるための餌として使われていた。

 いやホント戦場ってのは地獄そのものですなぁ。怖い怖い。ナンマンダブ、ナンマンダブ。


「おぉ? やっと動いたか」


 無価値な命が消えるのを心の中で合唱していると、能力で兵士達が動くのを知った。

 己が引き起こした惨状を目の当たりにしても、まるで他人事のように心は動かない神経はどうかと思うが、まあ敵なので、念仏唱えるだけ慈愛の心はあるのかもしれない。


「つか、おっせぇな。あんま遅いとからかう時間が無くなっちまうぜ」


 領主は俺を捕まえたい、というか侯爵令嬢をなんとしても手に入れたいようだが、兵士達はそうでもねぇからな。 

 なんか思考を読み取ると、たかが犯罪者一匹の為に軍を動かしているのが気に食わんらしい。

 いくら民衆を安心させるためのポーズとはいえ、ぞんざいに扱われているのが我慢ならないらしい。

 領主は侯爵令嬢を使ってパイプを繋げるなり、弱みを握るなりしたいようだが、兵士達には関係ないから仕方ないっちゃ仕方ないか。

 それに国境線近くに配備されている為か、自分達はエリートでこの国を守るために選ばれた騎士だとか思っている奴が大半だ。

 間違っちゃいねぇんだけど、あの街でエリートと呼ばれる兵士は隊長クラスからなんだよな。

 後は少し腕に覚えのある兵士だけなんだよな。


「まっ、からかえねぇなら仕方ねぇ。そのぶん死んでもらうか。ああ、ナンマンダブ、ナンマンダブ・・・いや、今からやることを考えるとご愁傷様の方が合ってるのかもな」


 物騒な事を呟きながら、修二はこの世界では使われないふざけた念仏を唱えながら、兵士達に起こる悲劇の準備に取り掛かった。



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