クラス分けと濃ゆいクラスメート やっぱり私は畑がいい⑫
そう言って、老人は杖をぷるぷる震わせ生徒をかき分け進んだ末に…、よりにもよって銀髪ソードマスター青年の真隣にドドン!とナチュラルに陣取ってしまったのである。
「…………………っっ…!!」
先程まで、生徒じゃない人間がこの場にいる!と皆の前で追及してしていた銀髪ソードマスター青年は、(………コイツ正気か!?)と言いたげに、言葉には出さずとも眉間のシワに流れ落ちる汗…。表情でそう考えているのが見て取れた。
…………しかし、老人の方は全然気にも留めていないので、ふぉっふぉっふぉっふぉっとなおも笑いつつ、そんな気まずさ100%のソードマスター青年や周りの取り巻き達に、「主らもサイン貰っとかんでええのか?ワシ、予備たくさん持っとるから、譲ってやろうか?」
………なんて、声をかけまくっている。
その周りにいる他の生徒達も、状況に適応できない者達が顔を青、紫、白と顔を青ざめさせて、自分達だけはせめて巻き込んでくれるなよ……とジリジリジリジリ距離をとっている様だった。
前に呼び出された私はというと……、ルッソさんと必死にコソコソ。この状況の対応を考えあぐねて、焦っていた。
『どうしましょう、ルッソさん。………、私、呼ばれてしまってますけど、行った……方が良いんですよね?だ、大丈夫でしょうか……?』
『……………あ、ああ。今はこのまま学園長先生の言葉に従った方が良いかもな……。大丈夫さ。いざとなったら、俺らが速攻助けに入るし……。ほら。クリス様達も前にいるし、とりあえず今はこの場をうまくのりきらねぇと……だよ……な?』
ルッソさんはそう答えながらも考えがまとまらない様子で、話しながらも最後の語尾が疑問系に自問自答になってしまっている。
『……………………………………いや。やっぱり俺もエマ嬢と一緒に前に…………っ!!』
だけど、やっぱり不安になってしまったルッソさんが前のめりに考えを変えようとすると……。
【 ………ホッホッ。横の護衛は、そこで大人しく留守番しておれ。心配でついて来てしまったのは分かるが、これ以上物事を複雑にせんようにの〜? 】
『『 !!! 』』
まるで隣の至近距離から話しかけられたかの如く届く声に、私もルッソさんも思わず二人でギョッとしてしまう。
思い当たる声の主を探して前方を見ると……、フリフリと手を振りながら、あいも変わらずホッホッホッ。のほほんと笑う学園長の姿…。
【 ………どれ、距離も離れとるし、魔法で呼んだほうが早いかのぅ〜?周りの第ニ師団は、大人しくしておれよ?エマ殿はそのままリラックスじゃ。風が吹いたら、そのまま身をまかせるのじゃぞ? 】
そう言って、またもや学園長の声が間近に隣に聞こえたかと思うと…。
私の周りに、ふわりとピンクの淡い光と乳白色の霞が風をまとって現れ、渦を巻いて服や髪。体を軽く巻き上げ…………、
「……うわわっ!?」
少しの浮遊感から数秒…。気がつけば視界は新入生のど真ん前。
空挺石がブゥン…ブゥンとまわるのが背中で感じられる、学園長の隣に私はワープさせられていたのである。
前に移動した今では、右端の方で、ルッソさん含めて他の騎士様達がわたわた、あせあせ…。一緒にいた同じ平民出の気の良い生徒達も、見ていた周りの新入生同様。一緒に驚いているのが前からも見て取れた。
「ホッホッホッ。それでは皆、一度前を見るようにの。さっそく彼女の事を紹介しようと思うのじゃが、よいかの〜?」
そう言って、隣にいた学園長は再びゆったり話し始めたのだが………。
「新入生代表の挨拶の件でも、彼女の名前は皆もう知っておるじゃろうな?彼女の名はエマ・ブランドン。隣国からはるばるこのアステリア魔法学園に入学を要請された生徒なのじゃが、彼女は緑化魔法師として実にユニークな可能性を秘めておってのぅ。
それがたまたま学園に向かう道中《古の王》の一方の目に止まり、《赤の王》の加護を得た唯一無二の歴史上でも初の女性となったわけなのじゃが……、
とりあえず。わしから言える事は、一つじゃ。彼女に取り入ろうとか利用しようとか、変な事は考えぬ事じゃの。《古の王》は《白の王》《赤の王》共に神出鬼没。特に《赤の王》は苛烈で情にも厚く、魔法具技術の鬼才。且つどこまでも破壊的な王じゃ。少しでも逆鱗に触れでもしようものなら、学園どころか王都も国も焼け野原になりかねぬから、それはくれぐれも気をつけるようにの〜〜!」
「……………ヒェッ!?」
(あれっっっ!?その説明、全然大丈夫じゃなくないですかっっっ!??)
真横で聞いていた、本当は当たり障りの無い説明をしてもらうつもりで立っていたはずの私は、いきなり結構ありのままを話してしまっているけど、最後の方物騒すぎだけど多分間違ってない有りのままの警告だよね!!?………………という学園長の説明に、思わず度肝を抜かされ悲鳴に近い声が出てしまう。
それでも学園長の説明はなおも続いていって……。
「………じゃが《王》の加護を得ているとはいえ、彼女自身は至って普通の生徒じゃ。変に気兼ねする事なく、皆で普通に仲良く生活し楽しく共に勉学に励んでおれば、何も天災など起こることも無く。
それでいて、《古の王》に心酔する魔法使いであれば誰もが羨んでやまない、王から得られる経験と知識の厚遇が彼女を通して受けられる可能性を主らは持っておるのじゃ。
諸君は実に運が良い。…………そう。わしの口から何度でも言えるが、今年入学した新入生生徒は、実に運がよい。ポテニアのツチノコを見つけ出すよりも、天文学的確率で運が良いのじゃ」
「そうじゃそうじゃ!!ふぅーーーーーーーーーーーっっっっ!!!!」




