クラス分けと濃ゆいクラスメート やっぱり私は畑がいい⑤
「………………………………フフフフッ。クリス様。私の見間違いでしょうか…?見覚えある図体でかい生徒モドキが、エマ嬢の周りで群がってる様に見えるんですが……」
「………………いや。俺にも見える。ナオ。お前、後で奴らをみっちり絞めとけよ」
「分かりました。遠慮なく絞めときます。一週間は足腰立たなくさせますね」
「「「「ひいぃぃぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーっっっっ…………!!!」」」」
ニコニコニコ。上司の二人は怒りながらもほのかに笑っているのだが、彼らの機嫌は部下の自分達が一番良く知っている。
笑みに縁取られた彼らの口が、「あ・と・で・な」と動いた会話も含めて、何故なんだろう……。
遠目でよくは見えていないのに、二人が何を話しているのか私でさえ分かってしまいそうだ。
ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ………!!!!
き……、気の毒に。
揺れる床はもう無いのに、ルッソさんと騎士団の人達の震えが半端ない。
「エ、エマ嬢……!!俺達がどどどどうなっても、俺達がエマ嬢を守るからな!!………ダダダダメだったら、エマ嬢チョイスで良いから、可愛らしくて可憐な花を一輪供えてくれな…………!!!」
怯えながら隣で固まるルッソさんの言葉に、後ろで団子になっている騎士様達も、俺、肉…。酒…。女のコ手作り花輪…。大好きな踊り子の姿絵頼むよ…。と、まるで遺言を残すかの如く続けざまに私に頼んでいく。
「いやいやいやいや…!!皆さん不吉な事言わないでくださいよ!!まだ希望はあるかもしれないじゃないですか。他の新入生にもバレる前に、さり気なくフェードアウトできれば良いんですよ。今なら周りも暗いですし、幻覚か何かでごまかせるかもしれませんよ!?」
「それが無理なんだ!!ここは島の核を守る為に、何重にも結界やトラップが張り巡らされていて、出れないし、下手に不具合起こせば島ごとみんな地上に落ちちまうんだよっっ!!!」
「え……、えぇっ!?………え、え〜〜〜………と。じゃ、じゃあ……。諦めるしかないかもしれませんね…………」
「そ…、そうなんだけど…!!そうなんだけどさっ!!!エマ嬢、諦めるの早すぎねぇか…………っっ!!!!??」
……………………そんなやり取りをしながらも、他の新入生達は、違和感ありまくり&規格外に大人な騎士団生徒が背後に団子になっているのをキワモノ的に横目に見つつ、エレノア副学園長に指示通り、巨大キューブが回る前方にゾロゾロまばらに進み始めている。
中には、「あれ……〇〇家の次男の、確か魔法騎士団に入っていた人じゃない……??」なんて、若干既に身バレしてそうな会話もチラホラ聞こえていて……。
(ま……、まずいわ………。この状況、一体どうすれば………)
…………もうボッチどころの話ではない。
このままルッソさん達ごと、前に進むか、進まざるか…。
開き直って、新入生達になり切るよう彼らを叱咤&洗脳するか。すきを見てどこか物陰探して隠れさせるか…!!!
他の新入生達はどんどん前へ進んでいくし…。どうする、どうしよう、どうすれば…!!!?
(昨日の入学式も大概だったのに、何で次から次へと問題がこうも起こっていくの……!!?)
グルグルグルグル…。予想だにもしてなかった事態に、私がそんなこんな苦悩していると…、ふと後ろの方から数人の知らない若者の声に呼びかけられた。
「………………あ、あのぉ……、いきなりすみません!!入学式の挨拶に出ていた、エマ・ブランドンさんですよね…!?あと、一緒にいる皆さんは、国直属魔法騎士団の第二師団の騎士様達じゃないですか…!??皆さん護衛潜入中なんですよね…!?お疲れ様です!!俺達、第二師団の皆さんのファンなんです!!!」
そう言って、握手して下さいっ……!!!と、勢いよく頭を垂れて握手を求めてきたのは、そばかす顔が可愛らしい、ヤンチャそうなオレンジ髪の男の子…。
他にも…、
「俺も俺もっ!!俺ら平民出身で、魔法学園卒業できたら絶対第二師団に入隊したいって思ってるんです!!もちろん、王宮勤めや地方で就職予定の奴もいますが……、俺達平民出身者は皆、第二師団の方達に憧れてるんですよ!!」
「…………に、任務終わってからで良いので……、サササッ、サイン……。握手も……、お願いしますっ………!!!!」
などなど……、口々に憧れの思いとピュアな瞳をうるめかせ、元気100%にコチラを熱く見つめる若き新入生の集まりがいたのに気づかされたのである。
「「「「「へ……??」」」」」
………………ガタガタ震えて団子になっていた騎士様達も、思わずマヌケな声で止まってしまう。
確かに、平民出の出身者の最高峰就職先は、この国でクリス様率いる魔法騎士団第二師団もその一つではあるのだが………。
「潜入警護って、大変ですよね!!任して下さい。俺達、分かってるんで!!!………あっ!でも俺達がこんな事してたら他の奴にも気づかれるか……。握手はまた後で良いんで、今は前に行きましょう。何かあったら言ってくださいね。俺ら、全力で協力しますから!!!」
そう言って、バチーン!!とウィンクをキメるオレンジ色の青年に続いて、周りの生徒達もすさかずグーサインで応えている…。
………………彼らの熱いパッションを受けた、ルッソさん含め騎士団の皆の皆さんはというと……。
((………………お、俺達の潜入も変装も身元も……、全部初対面の生徒達にバレてる………………))
別の意味で、やっちまった………。と夢から覚めたの如くに真っ青になって固まっている。
「…………………ナオ……。あれ。今どんな状態になってるか分かるか………?」
「……………さぁ?何でしょう?生徒達に変な勘違いでもされて、無意味なエールを贈られてるんですかね……………」
「……………………絞めるか」
「……………………倍、絞めましょう」




