エマ・ブランドン嬢⑧(魔法学園副学園長 エレノア・ボルチ目線)
【兄弟!!このジジイ、見る目がある!!兄者の偉大さが分かっているぞ!?】
【そうだな!!兄弟!!どれ、我らもそのサインとやらに加わってやろうか!!光栄に思うがいい。お前は史上初、我ら兄弟のサインとやらを手に入れる人間、第一号だ!!】
【ジジイ!!兄者の偉大さ!!土に還ってからも、語り継げよ!!】
「ふおぉぉ……。黒竜王様方もサインして下さると言うのか…!?ふほぉぉぉ………。儂、もうこの学園人生に悔いは無いですじゃ……!!」
……………………。
自分達が愛してやまない王を信奉するロエル長老のハートの熱さが伝わって嬉しくなったのか……、兄弟竜達のウケが物凄く良い。
兄者、書け!!書け!!と、炎を時よりボッポ吐きながら、肩や背中をペシペシ叩く兄弟竜に促され……、
王は少し憮然とした様子ながらも、ロエル長老から魔法万年筆と《観賞用》《持ち歩き用》《完全保存用》の三枚の色紙を受け取り、サラサラサラと何やら見た事をもない文字を書き連ねている。
そこに、お茶を入れ終わった学園長からハンコのインクを強奪した兄弟竜に達が、ペタベタ両手で手型を押しまくり………、
実に斬新な3枚のサインが出来上がると同時に、すぐにロエル長老へと手渡された。
「ほぉぉぉ……っ!!3枚とも別々の言葉を書いてくださったんですな…!!黒竜王様方の手型もご立派で……!!王よ。いったいコレは、何と書かれておるのでしょうか…………!?」
見た事もない、王の駆使する言語の文字をゲット出来た事にロエル長老は頬を高揚させて大感激なのだが、恥じらいつつも、書かれた文字の意味についても王に聞いている…。
「…………………お前を見て、率直に思った事だ」
「ふおぉぉぉ……!!!王が…!!王が儂の事を書いてくださったあぁぁぁ………!!!」
そう言ってロエル長老は勝者のガッツポーズで…、しかし肝心の書かれている内容は分からないままだ。
色紙には流麗な書体で、
『阿呆』『骨』『禿』(※アホ ホネ ハゲ)
と、書かれていたのだが……、王の文字は古代文字とも違う見た事も無い書式で、我々にはその文字の意味を読み取る事が出来ない。
宝に群がる者…。サインに湧く者…。退職は免れても戸惑う者…。カオス半ばの学園長室の様相に、落ち着き払った王の言葉が静かに響く。
「…………用は終わりだ。残った他の教師にも後々特別手当を用意する。後は学園長の坊主なり、副学園長から後の説明を聞け。………消えろ」
そう言うと王は指を鳴らし…、渦を巻く炎と供に、学園長室の床いっぱいに黄金の魔法陣が広がっていく。
「うっそぉん………」
最高峰の魔法学園の教師でさえ、遠く及ばない規格外の魔法…。
教師一人の戸惑いの声を残し…、部屋にいた教師達は全員、宝や賄賂その②のメモが挟まれた菓子箱ごと、一瞬で別の場所へと強制転送されてしまう。
「………………さぁ、これでようやく本題に入れる」
………そう王が話す部屋の中には、もう学園長と副学園長である私…。そして王と二匹の兄弟竜しかいなくなっていた。
「人員整理は済んだ。後は足りない人員の補充だが……、今から俺と坊主でここに書いてある者達を連れてくる。エレノア・ボルチ。その間にお前は学園の受け入れの体制を整えていろ。数日もあれば大方集まる」
そう言われ、私は王から渡された紙を見るのだが………、
書き連ねられているリストの面々の名前に、私は声を失う……。
学園長自身も今見知った事もあるようで、押し付けられた紙を見て老眼鏡越しに、ほぉ…と目をしばたかせている。
「王よ…。いつの間にこの面々と面識をお持ちになっておられたのか……。初耳ですの」
「…………………お前より、俺が幾ばく長く生きていると思ってる。黙って今すぐ準備しろ。従わない奴は、ねじ伏せてでも引きずって来ないといけないからな」




