エマ・ブランドン嬢⑦(魔法学園副学園長 エレノア・ボルチ目線)
フラァ…。
ズガーーーン!!!
「うわーー!!!ミス・リリーがぶっ倒れたーーっ……!!!」
王から解雇宣言を言い渡された直後…。気の弱い一人の教師が泡を吹いてその場で崩れ落ちた。
指名されたのは私を含め極わずか。ウォッズ女史を含めて5〜6人程度だ。
そして解雇を言い渡されたのは、コボル博士や、ご意見番ロエル長老を含め教師の過半数を超えている…。
正直、正気の沙汰とは到底思えなかった。
入学式を控えタイミングも最悪に悪いのにも加え、アステリア魔法学園は、大陸随一、最高峰の教育施設団。そこで教鞭をとるという事は、並大抵の教師とは教師としての次元が違うのだ。
それを……、解雇……?
代わりになれる人材だって、見つける事は至極至難の業だろう。この学園の教師である事に、誇りを持って生き甲斐にしてる者だっているのだ。
いくら王と言えど、そんな勝手な事……、
「……………赤の王…。恐れながら、申し上げます。これはあまりにも暴挙ではありませんか?メチル先生の件も含め…、いったい王はこの学園で何を………」
そう王に真偽を問おうと発言した……、その時だ。
「ほああああああーーーーーーーーっ!!!!!ここここ、コレはーーーーーーー!!!!」
私が緊張で手に汗を握る中…。圧倒的な覇気を纏う王に決死の進言をしている最中その横を、飢えた獣よろしく興奮した教師達が宝めがけて突進し始めたのは…。
「ひゃ〜〜〜っ!!!!見て下さい!!これ、ブースト魔法増幅機ですよ!?しかも…、えっ!?何これ。使われてる魔法核が見たこと無い石なんですが……、ん!?これ魔神石!!??」
「え!?え!?えっ!?これって、500年前以上前の古文書じゃないですか!??ほとんど燃え尽きたのが多いって聞いてたのに……」
「…………ふむ。何やら歴史にも残っていない、滅びた国の歴史書やら魔法書が山程ですな」
「マジか!?ダンジョンの地図もあるぞ……!!しかも大陸外の……。何だ?こんな島見たことない。おかしい……。あの辺りに島は無かったはずなのに、これは………」
「キャ〜~~〜~!!!私達、お金持ちよ〜~~~!!!」
「 ……………………………。」
横目で確認してみると……、漏れなく解雇を言い渡された先生方は、思いの外王の退職金に食いつきが良いようだった。
そして…。
「………………………………王よ、少しよろしいかな…?」
ロエル長老の声にハッと気がつき、すぐに前方に目を向けてみると、
何と王の前、私の前方に、今まで見た事のないくらいドシリアスな顔のロエル長老が、ドドン!!と立ちはだかっていたのだ…。
王の静かな威圧にも負けず、ロエル長老は白くて長く伸びた眉毛の下から、じっと王を見上げている。
王もロエル長老の視線を、宝石の様に赤く美しい瞳でじっと見つめ返しているが、それに二匹の兄弟竜の黄色い瞳も加わり、後ろから見ていて…、一見一触即発の怪しい雰囲気を醸し出ている。
ロエル長老を止めるべきか、間に入るべきか……、瞬時に迫られる判断に私が戸惑っていると、じっと好戦的な視線を王におくっていたロエル長老が、おもむろに話し始めた。
「…………………………儂は…、この学園に入る為に、幼い頃から平民の学舎で小間使いの仕事を手伝いながら、地道に勉学を重ね申した……。そして、運良くこの学園の教鞭を取るまでになり……、もう学園の教壇に立って、50数年以上ですじゃ……。病気もせず、風邪も極力ひかずに教壇に立ち続けたのは、全てこの日の為……………………」
そう言って……、ロエル長老が懐からふるふる震える手で取り出したのは、魔法万年筆とサインを書く色紙…。
「王よ……!!…………………サ、サインを下され…!!5歳の時から憧れとりました。儂は白と赤の王で言えば、赤の王派のファンです。これ、名誉ファンバッチ………」
そう言って、色紙を王に突き出しつつ、胸のローブの内側につけた真っ赤なファンクラブバッチを、ペラリと頬を染めながら王に披露するロエル長老…。
……………………………………。やってしまった。
もう………、どう事を収集すべきなのか、分からない。
私はもう、天を仰ぐしかなかった。




