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エマ・ブランドン嬢②(魔法学園副学園長 エレノア・ボルチ目線)






(よりにもよって……)






思わずそんな思考が頭をかすめてしまう。





白の王と違って、"あの御方"が姿を現したという事は、何らかの目的があってこの学園に訪れたという事だ。





加えて学園長への面会を求めているという事は……。






(………まさか今回の"特別措置特待生"の件に、古の王も絡んでいるとはおっしゃられないでしょうね…!?学園長……!!)






私の頭の中で、己の真っ白なヒゲをのうのう脳天気に撫で下ろす…。我が魔法学園のすっとぼけおさの姿が脳裏をかすめる。






(おそらくいつもの如く、補佐である私にも全く話を通さないで、勝手に何かを企んでるんでしょう……!!!)






そう…。憤りや戸惑いの感情よりも、怒りに近い感情を自分の中に感じながら。私の中で戦闘……、もとい仕事モードへのスイッチが一気に入る。





「…………今すぐご挨拶に向かいましょう。他の先生方は、王をご案内できる貴賓室の準備を。学園長にも、至急来るよう、今すぐとっ捕まえて来てください。まずは王を学園長室にお通しします。さぁ、急いで!!」





「「「「は、はいっっっ……!!!」」」





私の声を皮切りに、一斉に教諭室の教師陣が動き始める。




「ウォッズ女史……。私と一緒に王を迎えに行ってくださいますか?」




「分かりましたよ。エレノア。やれやれ…。この歳になって、初めて赤の王に拝謁かぃ…。今年の学園は、何だか忙しない一年になりそうですねぇ」





長年の旧友であるウォッズ女史に同行を頼み、私もさっそく中庭に向かって歩き始める…。





(…………コボル博士の最初の対応が悪くないと良いのですが…。王の機嫌を最初から損ねたくはないわ……)





そう思いながら、足早に中庭に向かう大廊下に差し掛かった時…。





その"御方"はいらっしゃった。






「……………この学園には、たいして足を運んだ記憶はないが……。何百年と経とうが、さほど様相は変わらないものだな」






そう言いながら、コツ…。コツ…。コツ…。コツ…と、長身の黒い軍服姿の美しい若者が、休校中で静まりかえった学園の大廊下を、こちらに向かって歩いてきていた。





そして、羽織る黒いマントや軍服にしがみつく黒色の二匹の小型な蜥蜴のようなものが、若者の体をチョロチョロはったり、近くをパタパタ飛んで、まとわりついたりしている。





……ッボ!!と、蜥蜴の口から小さな炎が吐かれ、それが小型のドラゴンだと気づいた時には、若者はもう私の目の前まで歩みを進めていた。





「…………………手を出せ…………」





「!?」





「……………………手を出せと言っている………」






「エレノア…!!言われたとおりに、手を出しなさい!!ほら、はやくっ!!!」





「え、ええ……!!!」





艷やかな黒い髪の隙間から見える、真っ赤で美しい宝石のような瞳に見下ろされ…、思わず思考が停止してしまっていた。




付き添ってくれていたウォッズ女史が、慌てて私の腹の脇を肘でつついて正気を取り戻させてくれる。






「………………………受け取れ…」






そう言って若者が前に手をかざすと………。





すると、どういう魔法なのか…。

詠唱も無しに若者……、いえ。王の手から亜空間の穴が生じて、その穴からドサドサドサと両手に納まりきらない程の、宝石やら、金貨やら、見た事も無いような魔道具。珍しい魔獣の角や牙やら骨やらやら……。

そして、甘い洋菓子の美味しそうな匂いのする包箱も…。




「…………………………賄賂だ」





「賄賂………………!?」





王の思わぬ言葉に、私は復唱してしまう。






「今すぐ学園の運用に関係している人間達を、全てリスト化して俺の元に連れて来い。学園の小僧……。あいつの部屋で待たせてもらおう…。今すぐだ」





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