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エマ・ブランドン嬢①(魔法学園副学園長 エレノア・ボルチ目線)





…………これは時を少し遡り、




今回はアステリア魔法学園の副学園長であるエレノア・ボルチ。この私が目のあたりにした、入学式を迎える前の数日間に起こった本当の出来事を、ここで今のうちに話させて頂きたいと思います。




良くも悪くも、歴史的事件には間違い無いのですから…。




あの日も、私達は例年とは比でない緊張感の中で連日過ごしておりました。





それは、例の"特別措置特待生"。





魔法の使えぬ異例の中でも異例中の少女を迎え入れる為、入念な準備をせねばならない事情の為でした。







◇◇◇◇◇◇◇◇◇






「副学園長!!副学園長っ!!エレノア副学園長殿ーーーーっ!!!!」

 



ドダドダドダーっと聞き覚えある小太り中年教諭の慌てて走りくる音が、教諭室へと忙しなく近づいてきていた。





「た、大変ですぞーーーっ!!事件っ!!事件ですぞっ!!?今外に…、今外にぃ〜……!!!」





ヒュ〜、ヒュ〜、息をきらせながら、小人族で歴史妖精学の教諭。コボル・ヴェルドリッチ博士は、長いヒゲもぶちゃっとした顔も汗だくに、教諭室の扉にタックルする勢いで勢い良く飛び込んできた。




床にズベシッ!とダイブ&スライドし、それでも必死に息を整え、何かをパクパク口を動かし話そうとしていた。




「コボル博士…。いったいどうしたのです?あれほど学園内は走らないよう、生徒の模範になるためにお願いしたばかりではありませんか。もうお忘れですか?」




「ハァ、ハァ。ハァ…。申し訳…っ。グフッ。……でも良かった…!!副学園長殿……を、学園中。さ、さ、探し回らんといかんかと、心配しておりましたぞぉ……」




「…………そんなに息をきらせて、いったい何があったんですか。それに教諭は全員、教諭室に集まる予定で話し合わせていたではありませんか。博士は10分遅刻です」




「いや…、ぐっ……、今はっ、今は、そんな場合ではぁ〜………」




そう言いながら、小人族の博士はゴホゴホ咳き込みながら、何かを訴えようと、必死にもがいていた。




「お、王がっ…、王っ…!王がっ……!!ゲフゴホゴホッ…!!」





 王……?





「「「「っ…!!??」」」」




コボル博士の口からその言葉が出た途端、教諭室の空気にヒヤリと緊張がはしる。




「ちょ…、待ってくださいよ。王…!?今、王と言いました…!?コボル博士っ!!冗談ですよね!?」




「う、嘘言うわけ、無かろうがっ……!!ゲホッ。それこそこっちの心臓がやられるわ……!!」




コボル博士の言葉に、否応なく嘘ではない事がその場にいる全員に突きつけられる。




「あ、あぁ〜…。嘘だろ。何てタイミングの悪い時に…。せめて入学式で一番忙しいこのタイミング以外にしてくれれば…………」




「……………何しに出てきたんでしょうね…?生徒がいない時だったのは幸いですが……」




周りで集まっていた教師陣も、予期せぬ事態にざわつき始めている。




私自身もコボル博士の遅刻が、まさか"例の御方"の来訪による物とはついぞ思っておらず……。思わず一瞬、思考が停止してしまう。




「エ、エレノア様……」




「…………………………。何ともまぁ、随分予期せぬ来訪ですね。……コボル博士。もう一度、落ち着いて我々に説明してください。……………"白の王"が地下街から出てきたのですね……?」





王の出現を不安がる教師達を前に、私自身もなるべく平静さを保つ様努めて言葉を発する…。





………………そう。"白の王"が地上に姿を現すことは、さほど珍しい事ではないのだ。




ほとんどの場合、何も手出ししなければ、王は霧のように元の地下街へとそのまま帰っていく…。





そうやって、毎度の事ながらと分かっていても…。





良くも悪くも相手は王。大方無害と分かっていても…、相手は"死を司るネクロマンサーの王"なのだ。やはり内心、とてつもない緊張感がじわじわと襲ってくる。





「そ、そ、それがっ……!!今回は違うのですよ!!もうお一人のあの御方です…!!あの御方が、学園の中庭にっ…、空から突然現れて………っ!!学園長に…、今すぐお目通りしたいと………っ!!ゲフゴフッ!!」





「ちょっ……、待ってくださいよ。コボル博士…。違う…!?違うって、まさか………、赤?炎の王だと言うのですか…!?」





年若い教諭が、嘘だろ!?と思わず声を荒らげ、教員達全員に動揺が広がっていく。





(まさか………、普段学園に寄り付きもしない"あの御方"が学園に………??)





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