はじめまして。私はエマ・ブランドンです⑪
「あ、あの…!!すみません……!!ちょっとだけお待ちいただけませんか……!?今の状況を私が全然理解できていなくて……、少し確認させて頂きたいのですが……」
トントン拍子に進む話の流れに、私は思いきってストップをかける。
怒濤の展開に……、私の頭が限界だったのだ。
頭がこんがらがってしまっている。
目の前の人達も含め、炎帝様にはあれほど警告されていたのに、予想できるはずもなかった白の王様の登場……。
魔法学園に着いてからというものの、イレギュラーにイレギュラーな事態が重なって…、今なんて生まれて初めて、全身がヒヤリとさせられる得体のしれない恐怖を体験したばかりなのに、それさえも未だに現実味が無い。
目の前の人達の事も加え、頭の中が霞の様にモヤモヤでゴチャゴチャでもう……、分からなくなってきてしまったのだ。
「えっと…、一度、全部整理させてもらいますね?……皆さんは、炎帝様の縁のある方々なんですよね?仕えてるっていう事は…、部下の方々……なんでしょうか?……というか、私…。もう挨拶文の続きは読まなくても良い……?」
最後の方は、もはや私の願望&自問自答に近い質問になってしまっている。
少女の先程までの話の様子だと、暗示をかければ何事も無かった様にできると言っていた…。その話に、私はすがりたくなってしまっている。
ぶっちゃけた話……。
新入生の挨拶も含め、ここまでに至る立て続けの予想外な緊張とパニックに、メンタルがごっそり持っていかれてしまっていた。
壇上に上がる前でさえ、心臓が飛び出すほど心理的に追い詰められていたのに…、これ以上の立ち回りは正直キツいのが本音……。だったりする。
「部下っていうか……、皆それぞれ色々じゃないかな…?僕の場合は、あの方がいきなり昨日家に来て呼ばれたから来たんだけれど…。あの方に、部下っていうハッキリとした区切りはないと思う。赤の王は基本面倒見は良いけど……、人嫌いだし、寄せ付けないし、兄弟竜以外とは群れないから………。僕はたまたま拾われた縁で目をかけてもらってるけど……」
そう、私の問いに一番に答えてくれたのは、先程事の収拾を申し出てくれた青年だった。
「うんうんうん!!オルアは小さい時、我が君に助けてもらったんだよね~。あとエマちゃんは、心配しないで大丈夫っ!!式の方は私達で無難な流れで終わった感じにするから、安心して任せて~。加えて私達の事なんだけど、私達は我が主に指名されて集まった、『エマちゃんを守ってフォローするぞ!!隊』だよ?ヨロシクね~!!」
そう言って、ルールと呼ばれた元気いっぱい少女が、手をぶんぶん振りながら私の質問に応えてくれる。
「ル、ルール嬢…。確かに私達がよばれた主旨は間違っていませんが、『エマ殿を守ってフォローするぞ!!隊』は……、ネーミングセンス的にあまりにも安直ではないですかな?あくまで我々は、正式にこの学園の教師として……」
「え~…?闇守りは相変わらずお堅いな~。あとね~、話は変わるけど私の名前はルール!!あっちにいる妹はラーラだよ?私達は、呪術が得意なヤンバル一族の最後の生き残りなんだけど、歴史で勉強にちょこっと出てくるかもだけど、興味持ってくれると嬉しいな~。あとあと!!この真っ黒シルクハットなのが闇守り!!部下はいらないっていう我が君にすがり付いて、もう何百年も付き従ってる、自分でジェントル気取ってるお堅いおじさんだよ~!!」
「なっ……!?ジェントル気取ってるお堅いおじさん!?ルール嬢!!その紹介はあんまりにも酷いのではっ……!?」
「酷くないよ~?闇守りは客観的に自分を見なよ~。あと〜、オルガは我が君に鍛えられた魔法薬学の天才で、隣にいるのがガイにレイリアにヒコに~……、」
そう言って、順繰りに周りに立つ只ならぬオーラをまとった面々を少女が紹介しようと話始めると…、
状況を近くで見守っていた面々から、すかさずストップがかかった。
「………………ルール姉。ここで全員分、言うつもりかぇ?そんなに話してる時間はないようじゃて……」
「そうだよ。花の効果が切れちゃうから、さっさと終わらせて場所を変えよう。それに、ほら……」
「ん…?あ…!!そうだね~!!」
妹であるラーラ。加えてオルガと紹介された青年に促され、青年が軽く指差した上を見て何かに気付いた少女は、じゃあ私がやるね~!!と、話の流れのまま元気いっぱいに前へと飛び出した。
「………………じゃあ私が代表して~……、《みんな~!!さっき皆が見た事は、全部なかった事だよ~!!白い変質者も、黒いジェントル怪人も頭からぽいぽい出しちゃって、スッパリさっぱり忘れてね~!!エマちゃんのスピーチも完璧だったし、いつの間にか式は滞りなく終わってました~!!さぁ、今日はもう皆帰って皆ゆっくり寝るんだよ~!!!》………………はいっ!!おしまい~」
「「「「「ええっ!?」」」」」




