はじめまして。私はエマ・ブランドンです⑩
ほらほら、見てみて~?と、楽しげに自信たっぷりで言い放つ女の子の言葉に、私もクリス様…。そしてナオ様とエレノア副学園長も戸惑うばかりだ。
しかし、女の子に促されるまま周りの様子を見てみると…、魔導灯の灯りに照らし出される客席の顔は、確かに皆。目がトロ〜ンとぼんやり…。
小さな白い花が雪の様に舞う様を…、ただひたすら魂を抜かれたかの様に見上げ続けていた。
一見…、はらはらと舞う小さくて可愛らしい花に見とれてるだけ…?とも見えなくもないけれど、目の力がどことなく虚ろで…。
どこか別の幻想の世界に、意識が持っていかれている感じが漂っている。
ね?ね?ね?面白いでしょ~?という女の子の言葉に、具体的に何が面白くてスゴいのか。
あいにく魔法の知識も現象も知らない私は、『全然、分かりません!!』としか内心言葉が出てこなくて、面白いよりもホール中に広がる…、幻想的で美しい光景の印象の方が圧倒的に大きい。
しかし、私の腕を掴んでいる目の前のクリス様や、側に控えていたナオ様の顔が、呆気にとられて止まってしまっている。
エレノア副学園長に関しては、いったいいつの間に……。と信じられないものを見てるかのように呆然とぶやいていた。
「うっ、うぅむ……。白の王め…、こしゃくな真似を…。こんな事をするくらいなら、最初から大人しく巣穴から出てこなければ良いものをっ!!…………確かに、リトルレディの言う様に、ほとんどの客席の人間は、軽い催眠状態に陥っているようですが……、これは魔法ではなく、この白い花自体が持つ独自の効果ですな。まさかこの花………」
「そうそう~!!この小さい花は、死者の世界の入り口でよく咲いてる、《リトルメモリーフラワー》。《白い灯籠花》だよっ!!花の持つ効果は〜、死の直前の恐怖や、戸惑いを和らげる鎮静効果と、その人の記憶の一端を映したり見たいものを見せたり~…!!
どこでも咲いてる花じゃないから、ほとんど知られてないんだけど、今は灯籠花の花の作用で皆意識が朦朧としているから、ほんっとうに簡単な催眠魔法で記憶隠蔽できるから大丈夫〜!!今なら、よく覚えてないや~!!くらいに、簡単完璧にごまかせるよっ!!」
そう言って、怪人仮面の人に元気一杯…。
副作用も後遺症も無くて、すごく良いんだよ~!!と、グー!!サインを出しているのは、手持ちの大きな荷物の上にポスンと座った、素朴な民俗衣装に身を包む、5歳くらいの女の子…。
日にこんがり焼けた頬に、白いライン模様の化粧を入れて…、元気いっぱいケラケラ笑いながら、陽気に自分の知識を惜しげなく提供してくれている。
「おやぁ…、ルール姉。また久々に会ったら、一段と若返ってやしないかぇ…?呪いのせいとはいえ、姉妹でこうも真逆に歳を重ねるとはのぅ」
「あっ!!ラーラ、久しぶりっ!!ちょっと力を使いすぎるダンジョンに潜っちゃってね~…!!会うのは何十年ぶりだろうね〜!!ラーラにも会いたくて、我が君の要請に探検を切り上げて来たんだよ~!!元気そうで何よりっ!!お互い寿命が尽きる前に、また会えて良かったねっ!!」
…………そうやって女の子と仲良く姉妹トークをし始めたのは、先程白の王様に早く帰るように話かけていた、あの年老いたお婆さん…。
「え…!?お二人供姉妹なんですか…!?」
想像もつかない関係性が目の前に飛び出して、私は反射的にツッコんでしまう。
(………はっ!!いけない。失礼だったよね………!?)
ツッコんだ直後に気がついて、私は慌てて自分の口を手で覆うが……、もう遅い。
クリス様やナオ様。エレノア副学園長など皆の視線も集まる中、ごめんなさいと素直に謝ろうと慌てて話そうとすると…。
「君がエマちゃんだね~…??そうだよっ!!私もラーラも、実の姉妹〜!!私達もビックリなんだけど、二人で魔法の実験に失敗しちゃってね~!!魔法を使いすぎると私とラーラ、年齢が真逆に早く進むようになっちゃったんだ~!!」
「ふむ……。まことに数奇な運命じゃて…。ルール姉が幼児後退。わたしゃぁ成長前進。………まぁ、見たまんまの老化なんじゃが、魔法使いの寿命のお陰で、長生きは充分しとるから問題は差程もない。むしろ普通の人の人生より倍は生きられとる。実験も失敗はしとったが、思わぬ恩恵もしっかりと受けとるからのぅ。気にせんでええぞ……?」
そう言って、当の二人は全然気にせずにケロリと流してくれる。
「まぁ、ルールもラーラも、我らが主から魔法時間軸を遅らせる魔導具を与えられていますからな!!お二人供、まだまだピチピチ長生きするでしょう。下手すると寿命で言えば私の方が……?」
「闇守りは、我が君に使えて一番の古株層だもんね~っ!!気合いが違うよ~!!皆にも聞いたけど、長生きするために民間療法から迷信まで、片っ端から健康法試してるって~?さすが我が主バカだ~!!」
そう、ルールと呼ばれた女の子が元気一杯ケラケラ笑って言うと…、うんうんうんうんと、周りにぐるりと囲む只ならぬオーラの仲間達も一緒になって相づちを打っている。
「…………とりあえず、はやく事態の収拾したらどうかな?僕たちも学園に着いたばかりだし、引き継ぎとか……、色々やる事たくさんでしょ?」
と、その中から一人の青年が何なら僕がやろうか……?と申し出てくるのだが…。




