はじめまして。私はエマ・ブランドンです⑨
その言葉に、白の王様は少し、ん…?と周りの気配を探る様な動きをした後、「確かに……、時間は無さそうだね……」と、金の仮面から垣間見える美しい瞳を、ゆっくりとこちらへと向けてきた。
「エマ……。また、会おうね?竜の育てられっ子は……、君を私から……、隠したかった……みたいだけれど………。うん……。久々に上に上がってきたら……、思いの外、面白い面々にも会えて…………、楽しかったよ」
そう言って……、白の王様は片手でふわりと辺りの空気を凪ぎ払った。
すると、白の王様の魔法なのか。
ヒヤリとした突風に白い雪の様な物がホール中に吹き荒れ…、
それが舞い散る一つ一つの白くて小さな花だと気づく頃には、白の王様の姿は忽然とステージの上から消え去っていた。
『入学……、おめでとう』
目の前の幻想的な光景に、誰もが呆然と魔導灯の明かりに照らし出される花の雪景色を見上げていると…、
最後の最後。
少し笑みのまじる白の王様の声が、かすかに私の耳の辺りをかすめていった…。
そしてその声に気づいた直後。
ベシンッ!という衝撃と共に、私の両耳は闇守りと呼ばれた黒い怪人仮面の人の白手袋でふさがれてしまう。
「エマ殿っ!!あの変態死人野郎の言葉は、一切聞かんでよろしい!!白の王に魅入られれば、周りの死霊供があやつの為、勝手に仲間に引き入れようと目をつけてきますぞっ!!……全く主従共々、昔から本当に油断もスキもあったものでないですなっ…!!」
プリプリプリプリ。ダンディ声の怪人の人は、白の王様に対しての怒りが一向に収まらないようだ。
「あ…、あの……!!す、すみません。手……、取ってもらっても……!?」
両耳をがっちりふさがれいて、怪人の人の声も聞きとりづらく…、とりあえず両耳を離してもらえないだろうかとトライしてみるのだが…。
(………というか、……こっちはこっちで……誰なの…!?)
何となく危機は脱した感はあるけれど、目の前の全身黒づくめの仮面の人だって、ついさっき現れたばかりのガチの初対面。姿格好、充分怪しい。
それに、私達の周りでぐるりと囲む只者ならぬ雰囲気の人達も…。
さっきの白の王様とのやり取りの話から察するに、炎帝様関係の人な気もするのだが……。
と、とにかく、このままだと視線が痛いな……。なんて考えていたら……、
(あれ?私、こんな事してて良いんだっけ……?)と思い至った瞬間、ヒュッっと心臓が縮む心地で、今更ながらようやく状況を思い出した。
「にゅ、入学式っ…………!!」
しまったーーーっ!!!と、私は固定された頭で唯一自由のきく視線だけでもと、慌てて周りを見渡す。
(ま……、周りはっ!?生徒はっ!?国賓とか王様とか、偉い人も来てるとか言ってなかったっけ……!!??)
記憶が曖昧で……、目の前の恐怖から逃げなければと必死に考えた辺りから、頭が真っ白になり過ぎて、一切周りの事なんて考えられていなかった。
(やばい、やばい、やばい、まずすぎるっ!!!)
何とか抜け出せないか、両耳の手を振り払うべきか悪戦苦闘していると、横からぐいっと怪人の人の腕を掴む手が現れ、右側の耳が解放された。
「…………申し訳ございません。名のあるご高名な方だとは察せられますが……、エマ嬢を解放して頂けませんか…………!!」
ハァ、ハァ…。
そう言って、息をきらせて怪人の人の腕を掴んで横にいたのは、第二師団長のクリス様と横に控えるナオ様だった。
慌てて壇上まで走ってきてくれたのだろう…。
「式はこの場で中止して頂きます……。エレノア副学園長…。よろしいですね?」
「え…、ええ……!!」
予想もしていなかった白の王の登場…。そして黒ずくめの怪人の人含め一連のやり取りに、共にステージ上で唖然としていたエレノア副学園長も、クリス様の声に反射的に我を取り戻した様だった。
「ナオ…。今すぐ王や貴賓の方々から順に、安全な場所に移ってもらって事態を収拾するよう手配しろ。問題がないなら警備もつけて、そのままお帰り頂けるように…。責任は俺がもつ」
「……分かりました。何かあったら、すぐ連絡してくださいね?」
そう言って、目の前に立つ怪しい面々にも動じずに、クリス様とナオ様が冷静に事の収拾に動き出そうとすると……、周りに立っていた面々の中から、元気100%。小さな女の子の声が喜々高々に響き渡る。
「大丈夫、大丈夫~!!このまま何事もなく式も終わらせられるよ~?エマちゃんも、金髪の騎士さん達も、よく見てみて?皆、ほとんど催眠状態になってるの、見てて分からない~……?」




