表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/91

やっと入学 アステリア魔法学園④





「そ、その節は大変お世話になりました………」






公爵邸に到着した直後の事を思いだし、私は言葉につまりつつも、自分が原因…?といえば原因なので、正直詫びの言葉しか出てこない…。





あの時は私も含め、第二師団の騎士様や公爵邸の皆さんも、それはまぁ………アゴが外れるくらい、口をあんぐり開けて本当に驚いた。





『……これから俺の庇護下の者が世話になるからな』





そう言って、吹き荒れる突風と共に突如空から現れた、巨大な翼をばためかす二匹の黒竜と、黒い人影…。





それらは師団の人達が荷ほどきをしていた公爵邸の広い庭に、ドゴォンと派手な音と土煙をたて、巨大な魔獣の死骸を二、三匹投げ落としたのだ。





『土産だ…。今からそいつらを料理するから、全員分の取り皿を持ってこい』





そう言い放った黒い人影……。もとい炎帝様は、いきなりその場で巨大な魔獣を手際よくさばき始めた。





「いや~……。確か魔獣の肉さばいてたの、あれ国宝級で伝説とまで言われてた刀じゃなかったかなぁ…?俺達が持っている一等級の剣も石ころみたいに霞んじゃうくらいのさ。あれでザクザク綺麗に肉を切り分けていくの見て、本当笑っちゃったな~」





そうケラケラ笑うユース様以外にも、突然目の前で繰り広げらた炎帝様の料理姿は、その場にいた全員に衝撃的な影響を与えた様だった…。




「あっ!はいはいはいはいっ!!自分は炎帝様が持っていた、巨大な鉄板にビックリしましたっ!!あの鉄板どれくらいの大きさありました?あれほど大きな物を収納できるアイテム空間、普通考えられないですよね~。だって他にも網やら鍋やらいろんな規格外のサイズが出てきてたじゃないですか…!!」




「俺はあの肉のさばき方が何とも言えないくらいしびれたなぁ……。刀もそりゃスゴかったけど、肉の切り口、めちゃくちゃ綺麗だったろ?あれだったらどんな剣や包丁でも同じだったと思うな…。刃物の扱いを究極に極めた感じの切り方だったよ…」




「ほ~……。騎士の方々もそう思われますか。我々料理人の目にも、なかなか素晴らしいカリスマ性を感じました。あの肉の処理の美しさ…。無駄がなく……、そして的確な肉の部位の料理チョイス。私も端から見ていてしびれましたなぁ……」




「わ、私は、炎帝様の後始末と段取りの手際の良さにビックリしましたっ!!何か……、先輩方に教わってる仕事のお手本見ている感じで……正直、本業であるはずのこっちの方が頭が上がらない感じがして……………」





「ぼくはステーキに上がっていたハーブですね。皆さん、気づかなかったかもしれませんが、実はあれ、幻と言われている物凄く貴重な香草なんですよ?」





そうだよな。ああだよなぁ~…。

ユース様の言葉から始まり、いつの間にか食堂にいる騎士もメイドも使用人達も、全員が炎帝様の事を口々に熱く語り始める事態となっていた。




そして、あの日炎帝様から最たる影響を受けたのが…。




「皆~~~っ!!トルック配るわよ~!遠慮しないで、じゃんじゃん食べてね~!!!!」




この公爵邸の女主人。イザベラ・ヴィード様。

この方の様だった。





「母上さ…。若い時は炎帝様に憧れて、来る縁談来る縁談、全部突っぱねてたらしいんだよね。誰とも浮き名を流さないで、しかも王族の姫で魔力も強いし、長寿だから結婚もそんなにタイミング的に意識しなくても良い……。だから父上と恋するまで結構こじらせていたらしいんだよ。人妻になったって初恋の思い出がなくなる訳では無いし。その影響で今回火がついちゃったんだろうねぇ」





……彼女自身。元々世話好きだったという事もあるのだろうけど、目の前で長年憧れ続けた存在が、次々手際よくたくさんのメニューを形にしていく姿が、何ともぐっときて刺激されてしまったらしい。




(………イザベラ様、初恋が炎帝様だったんだなぁ………)





ユース様の話を聞いて、私はあの日、たまたま通りがかりに目にした光景を思い出してしまう。





『あ、あの……、後からのお声がけ、失礼致します。炎の君』





炎帝様が公爵邸に現れた日。使用人やメイドの人達を後ろに控えさせ、ドレスをつまんで美しい仕草で礼をとっていた可憐な貴婦人。




花のようなその容姿を緊張に染め、不在だった公爵様の代わりにイザベラ様が挨拶に出向いていたのを見たのが、私が初めて彼女を目にした最初の出来事だった。




『恐れ多くも夫に代わり、ご挨拶状申し上げます。わたくしはヴィート公爵の妻。イザベラ・ヴィー………』





イザベラ様が言葉を続ける中、炎帝様は聞いているのかいないのか。




彼女が言葉を終える前に有無を言わさず、ちょうど目の前で焼いていた肉を綺麗に切り分け、近くにあった皿にのせてイザベラ様に手渡した。




『………………お前は今代王の王妹だったな。降嫁した様だが、お前の聡明さは多少評価に値するものだった。王族の人間としての気概もある。お前達の家になら、俺の庇護下の娘を預けられるだろう。今朝焼いてきたトルックもそこにある。好きに持っていけ』




それだけ言って、炎帝様はもう用は済んだとばかり再び新しい肉の調理に取りかかっていたが…………、少し離れた所で、私はたまたまその様子を見る場面に居合わせてしまった。





その場で、もう興味が無いという感じで作業を進める炎帝様に反して、一方のイザベラ様が全身を真っ赤にされている様子は…………。遠くから見ていても、彼女の中で炎帝様がどんな存在で位置に存在してるのか。容易に見てとれるものだった。




それ以来だ。

イザベラ様のスイッチが入り、毎朝の手作り料理の他に、その場にいた騎士団、使用人全員ひっくるめて、私の入学までの強化教育プログラム合宿が始まったのは。




お陰で、短期間に貴族の学校の小学部一年レベルの内容はびしばし叩き込まれ、騎士団の人達からは護身術…。




鍛えるのは逃げ足だけの予定が、なぜだか剣まで持たされた。(※私の希望はクワかカマとかだったはず)





イザベラ様に関しては、何故か王妃教育でやるようなことまで組み込んでいたらしいが……、ここまでの厚待遇を炎帝様に感謝すべきか、そうなんだろうなとは思いつつも…。




(…………めっっっっっちゃ、キツかったぁぁぁ………………!!!)





それが公爵邸に着いてからの、私の日々の感想だった……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ