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やっと入学 アステリア魔法学園②





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






(………とうとうこの日が来てしまった)





朝の身支度が一応済んで、私は公爵邸の豪華な鏡台の前で、ただ呆然と椅子に座っていた。




この後…。

朝食が終わって準備が済み次第、私はアステリア魔法学園に入学する為に、お世話になったクリス様の実家。ヴィート公爵家を出発する事になっている。





生まれ変わって以来初だろう、上等な服に袖を通し、鏡を見た瞬間。果たしてこれで外に出て良いものだろうかと、よくわからない自問自答の迷宮にはまってしまっていた。





まるで、着こなせてないというか、似合っていないというか……、自分の中の違和感が異常なほど半端なかったのだ。





(……何て言えば良いんだろう。この完全に服のオーラに負けてる感じ…。服に着せられてる感ってこんな事を言うのかな……?)





朝起きて手渡された魔法学園の制服は、見た目はあっちの世界の学生服とあんまり変わらない感じで、パッと見セーラー服に近い。





肌で感じるパリッとのりのきいたとても上質な生地。




デザインもなかなか趣味が良くて、深緑の生地に、黒地の襟とリボンとスカート。

そして黒ソックス。胸の所に金糸で星のようなマークも刺繍されている。実に品の良い、可愛い制服だと思う。




(……それにスカートなんて、いつぶりだろう……?)





私はスカートのひだを触りながら、何だか奇妙な心地だ。

スカート丈はひざ位だから、まぁ、短いとは言わないけれど…、心もとなくて中にしっかり短パンを装着済みだ。





女としてどうなのかと言われてしまうかもしれないが、こっちの世界で生まれてからずっとオーバーオールの様なズボン姿で動きまわっていたから、どうしても抵抗感が半端なかったのだ。





(こんな感じで大丈夫なのかな…?とりあえずは、普通な感じに着れてるはずだけど…。これ着て本当に授業受けるんだよね?頭良い人達の中で、公爵家の名前も背負って…)





「…………………………」





詰んでるかもしれない。

その感がぬぐえないのは、きっと気のせいではないはずだ。





コンコンコン。





いつまでも、ぐだぐだ踏ん切りがつけられないでいると、ノックの後に、私についてくれているメイドさんが扉を開けてしずしずと部屋の中に入ってきた。





「エマ様。失礼致します。ご準備はよろしいでしょうか?奥様がいらっしゃったのでお通ししても?」





そう言って、しとやかに頭を下げるメイドさんの後ろから、ひょっこりと公爵婦人が顔を覗かせた。





「おはよう~、エマ様。体調は万全かしら?学園に必要な物やたりないものはありません?」





そう花の様に微笑むのは、春の妖精の様に可愛らしい、赤髪のお姫様。

少女と言っても何ら違和感のないこの可憐な方は、まごうことなきクリス様のお母上。イザベラ・ヴィート様だ。





「あ…、ありがとうございます。イザベラ様。お陰様で要り様な物は全部揃えていただいてます。というか、むしろご好意に甘えすぎて申し訳ないくらいで…」





「あら!気にする事なんてないのよ?自分の家だと思って、どんどん私達を頼ってくれると嬉しいわ。貴方が来てくれてから、屋敷が楽しくて楽しくてたまらないんですもの。もういっそ、うちにず~…っと居て欲しいくらいよ。準備ができていたら、朝食にしましょう?息子達も待ってるわ」





「……はっ!そうですね。今すぐ行きます!!」





(……しまったっ!!またお世話になってる身で、公爵婦人自ら迎えに来させてしまった…!!)





何度目になるだろう分からない失敗に、私は思わず頭を抱えたくなってしまう。

一応、朝食の時間までまだ少し余裕があるのだが、世話になってる私の方が早めに出向いているのが筋だと思う。





そのたびに毎回慌てふためいてしまう私なのだが、イザベラ様は毎度気負わないよう、いつもの花の舞う様な雰囲気で、ふふふと微笑んで流してくれる。





「エマ様。ま~た変な事考えてるわね?かしこまらない、かしこまらない~。私がてんでバラバラの時間に来ちゃってるのだし、好きで迎えに来てるのだから気楽で良いのよ~。今日は料理長に教わって、頑張ってトルックを焼いてみたの。ささ、行きましょう~?」


 



そう言って、ふんふんふんふん鼻歌を歌いながら、イザベラ様は私の肩を押し、食卓のある部屋に向けて楽しそうに歩き始める。





(い…、良いのかなぁ………?)






こんな事があるたびに、毎回そんな苦悩に襲われるのだけれど………、いやいやいやいや。

マルスの国でも筆頭大貴族である公爵夫人に対して、この接し方はあんまりにもフレンドリー過ぎというものだ。





というか、それだけじゃない。

クリス様のお母様、イザベラ様はこの国の王様の妹君…。

つまり、今も私の後ろで肩をグイグイ押しながら楽しそうに歩くこの少女のように美しい人は……、






公爵家に嫁いだ、正真正銘歴史ある魔法国家の由緒正しいお姫様で、王妹殿下なのである。






本来であれば、絶対、絶対、絶対、絶対、こんな対応が許されるはずの無い方なのだ。

不敬罪でいつだって牢屋に入れられても文句が言えない方なのである。






「皆~~~!!エマ様を連れてきたわ。朝食にしましょう~?席について~~~」





目的の部屋に着いて、イザベラ様の華やかで可愛らしい声が辺りに響き渡る。





「「「「「はーーい!!イザベラ様ーーー!!!」」」」」





応える声は多数…。

広い公爵邸の食卓の一室に、今日もみっちり人が集まっていた。




公爵家のご一家はもちろん。

使用人から第二師団の方々に、私の教育係の先生方。

屋敷にいるほとんど全員の人間が今、この公爵邸の食卓の部屋に大集合していた。





…………ある人物の影響でイザベラ様に火が着き、気が付くとこんな風になってしまっていたのだ。






「………………何でこんな事になった」






「さぁね~…。母上が母上だからじゃないかな?ねぇ、父上」






「フッフッフッフ。妻はいつでも魅力的なんだよ。食卓がにぎやかで私も嬉しいよ」





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