緊急会議その②
「父さん、母さん…。二人は特別措置特待生って聞いたことある?」
私は深刻そうな領主様をわき目で見ながら、何だかんだ不安で、隣に座る両親に小声で聞いてみる。
「バカっ!俺たち田舎の農民が、お隣のでっかい国のお偉い学校の事なんて知るわけがないだろう!?魔法だってめったに見れるもんじゃないのに…」
「そうねぇ。私達が知ることといえば、物語に出てくる大昔の魔法使いの大戦くらいかしら…。ほら、エマにもよく小さい頃聞かせたでしょう?」
そう言われて思い出してみると、寝る前に母さんが聞かせてくれた物語に、確かにそういうものがあったような気がする。
「ええと…、二人の王様が流れ星を取り合った、あの魔法使いの?本当にあった事なの?」
「そうよ。大昔にね。私もおばあちゃんから聞き伝えられたものだからはっきり知っているとは言えないけれど、あの大きな戦いで魔法使い達が大地の力を使いすぎて世界の均衡が崩れたと言われているわ。精霊達の怒りをかったとも言われてる。大地の恵みが少なくなったというのも、それが原因だという言い伝えも昔からあるわね」
「そうなんだ…。今の慢性的な食料不足は、それが原因の一つにあるかもしれないのね」
小さい頃聞かせてもらっていた物語は本当に子供向けのもので詳しくは語られていなかったし、隣の国の不思議な物語なんだと真剣にとらえていなかったエマには小さな驚きだった。
こうやって聞いいるだけでも、魔法の存在がある世界は本当に摩訶不思議である。
「エマや…。その物語に出てくる魔法使いの事、覚えているかえ…?二つに分裂した魔法使いを率いた、二人の魔法使いの王の事じゃが…」
私達の話を聞いて、村の村長のザックじぃが話に入ってきた。
隣では領主様と騎士様が難しい話を今も続けているけど…、難しい話は領主様に任せよう。
ガルアも果敢に話に入っていってスゴいと思う…。
でも正直心配だ。内容はわかっているのかしら?
「ええと…、魔法使いの王様の事よね。もちろん。確か一人は、死人を自由に操る白の世界の王と、灼熱の炎と二匹の黒い龍を従わせる、……炎の帝王…だったかな?」
「そうじゃな。白の魔導王と、炎の帝王…。簡単に白の魔法使いと赤の魔法使いと言われる時もある。両方とも確かに実在した人物じゃ。彼らを上回る魔法使いは、今のところ誰も出てきてはおらん。少なくとも、おそらくこの五百年程はな…」
そう言って、村長はエマ達に信じられない事を語り出し始める。
「エマや。まだ彼らが生きておると言ったら、お前は信じるかぇ…?」