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エマ・ブランドン嬢③(ナオ・ビフケル目線)





「……ナオ。このまま探し続けたとして、お前は彼女が見つかると思うか?」





「…え?あぁ…」





ふいに隣にいた上司に問いかけられ、思考に沈んでいた意識が現実に引き戻される。





「………少なくとも、日が暮れるまではこのまま探すべきでしょう。あと…、学園にだけは現状を報告しておいた方が良いと思います。そうすれば、あちらの方でも何かあった際に判断して動いてくださるはずです。万が一見つけられなかった場合……、我々の方は団員を数名残して早朝王都に戻り、それから騎士団全体で捜索が妥当だと思います」





………そう、頭に浮かんだ一番無難な案を口にしてみるが、一瞬でも思考が別の方に飛んでしまった自分が情けない。





(………今はそんな事を考えている時ではないでしょうに)





私は頭の雑念を振り払うかのように、己の剣を手にして馬の方へと歩き出す。




「クリス様はこのままこの場で指揮を取ってください。私も探しに出ます…。日が暮れるまでには戻りますが、まだ見つかっていない時は、その時にまた考えましょう」





「…………そうだな。学園へは俺から連絡しておく。お前も何かあればすぐに連絡しろ」





そう言って、クリス様は携帯用の飲み水と食料を私に投げて寄越す。





「…………………………万が一、何かに鉢合わせしても、絶対に敵わない相手には突進するなよ」





まるで、相手を断定するような言い回し……。

私に忠告するクリス様の目には、想定している相手がしっかりと脳裏に浮かんでいる様だ。





振り返り様。王弟殿下譲りの美しいその顔を氷の様に固くしている彼を見て…、私は興味本意で少しだけ突っついてみる。





「……ちなみにクリス様は"白"と"赤"、どちらだと思います?」



「…………………………………………」




私に問われ押し黙ったクリス様は、視線だけそらし、絞り出すように言葉を口にする。




「……………………………………"赤"は興味を持たないだろう。考えられるのは"白"……。でも断定はできない。全く別の可能性もある」





そう言いながらも、彼は緊張感を隠しきれない様子だ。眉間にシワを寄せ、何かを押しこらえるかのような瞳の色…。






今思えば、私は幾度となく彼のこの表情を見てきた気がする。





クリス様は嫌がっているが、彼は国でも上位に位置する王位継承権を持った王弟殿下の一人息子だ。




クリス様が生まれて早くに殿下が亡くなり、養子として妹姫の降嫁しているヴィート家に引き取られたが、継承権は義理兄のユース様よりも高い…。




それゆえに、例え上位の貴族や学園の生徒でも決して見る事が叶わない至高の方々の存在も、王族に連なる彼はお目にかかる機会が度々訪れる。




たまたま父に連れられ王宮に足を運んだ幼い頃…、顔を真っ青に汗だくで戻ってきた彼に、数度だけ鉢合わせた事があった。




彼の怯え様を見るたびに、"赤"と"白"の至高の存在はいったいどんな化け物だろうかと想像に想像を重ね…、当時の私は怯えに怯えまくっていたものだ。




「………………………………"白"ですね。………だとすれば、聖属性装備をかなり強化して行かねばなりませんか。ルッソの事は頼みましたよ。今の彼なら、至高の方々にも突進して勝負を挑みかねません。そうでなくても、彼を野に解き放った時点で戻ってこなくなるかも……」




「……勘弁してくれ。一人いなくなるだけでも大変なのに、俺の団からも行方不明者が出るのか?…………奴を縄で縛るか」




そんな冗談をクリス様と交わしつつ、私は自分の馬に飛び乗り、拠点を後にした。





索敵魔法も使いつつ捜索範囲を徐々に広げて、どこまでも続く荒れ地を、エマ嬢を探して駆けずりまわった。





それでも、エマ嬢はうんともすんとも見つけられない……。





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