炎の魔術師 炎帝ハル・グラヴィス 本名は…、⑧
「…おい。嫁って何だ。愚弟供」
さすがの問題発言に、炎帝様の方も物思いの渦から覚醒されたらしい…。
すかさず鋭い突っ込みが入る。
【んん?聞いておったか、兄者。大丈夫だ。兄者が呆けている間に、我らが兄者の有能さを娘にアピールしておいたぞ】
【嫁か!嫁か!クハハハハハハハッ。嫁とは確かに言い得て妙だな!!確かにそこいらの女供より、兄者の方がよほど良い嫁だ。やるな兄弟!!】
仲の良い巨大な黒い固まりは、実に楽しそうに炎帝様をからかい、いじっている。
だが、いじられてる炎帝様の方は目が据わって半眼だ。
様子からして、またいつもの悪ふざけが始まったか……という感じだろうか?
「…………嫁とは本来女の場合だろうが。それ以上ふざけるようなら、お前らにこの娘の野菜を使った料理は食べさせんからな」
【それは困る!!我らのせっかくの楽しみがなくなってしまうではないかっ!!では、兄弟。兄者をからかうのはこのくらいにしておくか】
【そうだな、兄弟。娘よ。お前にはうまい飯を期待しているぞ】
「は、はい…‼頑張ります!!!」
大きな威圧感とともに二匹の視線は私へと向けられ、多大なる期待に思わず椅子から跳び上がりそうだ。
【……あと一つ言わせて貰うとすれば……、あの"白い化け物"には気を付ける事だな。あれは我らの母者も喰らおうとした男だからな。奴に転生した事を知られれば、ただでは済むまい】
【ぬしは我らの気に入りだ。奴には殺されてくれるなよ】
そう言って、バサリと羽音をたてた巨大な二匹のドラゴンは、ズシンズシンと大きな足音をたて森の奥へと移動して行く。
……残されたのは私と炎帝様の二人だけで、先ほど二匹の兄弟が最後に投下していった問題発言がいったい何なのか。
確認もできず、さ迷う視線を炎帝様に向ける。
"白い化け物"
……また新しい言葉が出てきてしまった。
人体実験以外にも、まだ何かあるのか…。化け物にも注意しなければってどういう事なのだろう。
「あの…、さっき"白い化け物"とか言ってましたけど…、学園に魔物か何かがいるんですか………??」
「…………。魔物ではない。人間だ。………半分はな」
「半、分…!?」
人間に半分もへったくれもあるのか…!?
ハーフ…!?まさか、何かの混血とかそう意味なのだろうか。
私の頭は大混乱だ。
「命が惜しければ、奴にだけは会わない事だ。奴は……、とうの昔に狂っている」




