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炎の魔術師 炎帝ハル・グラヴィス 本名は…、④






「………あ、…いや、その……、えっとですねぇ……」





艶やかな黒髪からのぞく、燃える宝石のような赤い瞳がこちらを見つめてくる。





『貴方は、炎帝様ですか』




イエス、ノー?




他の人なら、この質問を率直にさらりと聞けるのだろうか?





いや…………、聞けまい。





あの恐ろしい二人の王の争いの話を聞いた後に、目の前の真実をあばきにいくようなまね、なかなかできる事じゃあない。




なら、このまま相手が名乗るまで、知らぬふりを続けるべきなのだろうか。

どうすべきか。頭の中はすでに大混乱だ。




……でも今の所、彼自身がお茶とお菓子を出してくれて、状況はこれ以上ない程平和に見える……。




見えてはいるが…、




これは詳細を確認してしまえば、デッド・オア・アライブ。

生きて帰れる案件なのだろうか…?





顔が壊れたロボットの様にひきつって固まってくる。




関わらないって……。




意地でも逃げ回って、恐ろしすぎるその二人の存在には絶対関わらないようにしようって、旅立つ時に心に誓ったばかりだったのに…。




私は背中にダラダラ汗をかきながら、頭は真っ白白けだ。




でも、このまま知らないふりしても、私ならよけい墓穴をほる気がする。




私は前世だって、頭が回る方ではなかった。

緑を見ながら、ぼけ〜っと、だら〜っと生きることを、心から愛していたのだ…!!




どうしよう!どうしよう!!

誰か!誰かっ!!ヘルプミーっ!!!





「…………………。変に考えてないで素直に聞け。顔に心の声が出ているぞ」




「へっ!?」




あまりに必死な苦悩が顔に出ていたのか、相手の方から助け船が出た。




「変に固まるな。だいたい察しはつくが、聞きたいことがあるのなら聞いていい。呼び出したのはこちらだし、同じあちらの世界から転生した仲間同士だ。俺にとって同郷の人間は家族にも等しいものだし……、お前は悪だくみをするような人間でもないだろう。理不尽な事はしないから話してみろ」




そう言って、目の前の男は気を悪くする事もなく、やれやれといった様子で腕を組んで聞く体勢をとってくれている。




(あ、あれ?優しい……!?)





近寄るのをためらってしまうような育ちの良い雰囲気と、カリスマ的な風貌に反して、その優しさはまるで近所の面倒見の良いお兄ちゃんだ。





だいぶ聞きかじっていた話や、講義の中で聞いていた印象と全く違う気がするのだが、気のせいだろうか?同郷特典…??





…………本当に言葉に甘えて良いものか。

怖いけれど、私は恐る恐る、思っていた事を口から言葉で発してみる。




「……ま、間違っていたらすみません。私の勘違いかもしれないんですけど…、貴方はあの有名な……炎帝様…だったりしますか…?500年前、魔法使いを率いて戦っていたっていう…」





「炎帝と自分から名乗ったつもりは一度もないが…。お前の言う通り、世間一般的に広がっている俺の通り名は炎帝で間違いない。最初はそんな仰々しくなく、ただの炎の魔術師とかは呼ばれていたがな……」





「や……、やっぱり?」




で、ですよねーーーーー。

魔法らしきものも使ってるし、後ろの生き物と同じくらいの年齢で、プラスその生き物…。

どっからどう見ても、西洋版竜。ドラゴンですもん。

見たことなかったから判断を避けたかったけど、あちらの映画とか絵でよく見た容貌です。






私の予想は当たっていた。





けれども、やっぱりはずれていて欲しかったと思ってしまうのは…………、親切に答えてもらっておきながらも罰当たりな考えなのだろうか?






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