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炎の魔術師 炎帝ハル・グラヴィス 本名は…、③








「まぁ…、そんなに気に入ったのであれば、料理くらいいつでも作ってやれなくもないが………、それはだいぶ後の事になるだろう……。あちらに着いたら、お前は入学の準備やらで慌ただしくなるはずだからな。とりあえず…、今はこれを持っていけ」






そう言うと、男はパチンと指をならす。





すると、………なんという事だろう。





何もない空間から、美しくキラキラした光の粒が私の前に現れて、そこからきれいな水の入ったボトルが現れたのだ。





これは………、




「ペットボトル!?」




私は目を疑った。

1.5リットルのペットボトルだ。見間違うはずがない。しかも、カ○ピスって書いてある。久々にあちらの文字も見た。………マジか!!?





「………その入れ物だが、星と一緒に落ちてくるゴミの中に、たまにそういうものが紛れ込んでくる。水を入れるのに調度良くて使っていたんだが、きれいに洗って使ってあるから安心しろ。ここの湧水の水だが、一応煮沸もしてある。馬車であれば、この先の道のりはまだあるし飲み水にも良いだろう。あと、これを…」




そう言って、男は金のキラキラしたものを私に投げて寄越した。ネックレス状で、きれいなチェーンもその飾りと共にキラキラしながら宙に舞って飛んでくる。




「うわぁっと…!!」




丸太の椅子からひっくり返りそうになりながら必死にキャッチすると、あまりに間抜けな姿だったのか、投げた本人からは、女なんだからもっとしとやかに取れないのかとため息混じりでつっこまれる。




だったら投げて寄越すな‼と、ちょっと思ってしまうが………、逆らう勇気は無いので、まぁ…、些末な事だと聞き流しておく。




「これは………、鍵ですか?」




手に取った金色のキラキラした物を確認すると、アンティーク調のおしゃれな鍵が私の手の中におさまっていた。

色とりどりの綺麗な石も飾られていて、とても綺麗だ。




私が鍵の美しさに呆けていると、目の前の男はその様子を眺めながら言葉を続けた。




「それはいつでも行き来できる、ここの空間につながる鍵だ。鍵穴があろうがなかろうが、扉に突き刺せば勝手に鍵穴が現れ、いつでもこの空間に来ることができる。転移可能な貴重な魔道具だ。なくすなよ」





「どこでも!?…………リ、リアルどこでもドア!!?」




あわわわわわわわ…。

聞いた瞬間、私は驚いて鍵を落としそうになってしまう。




誰もが一度は欲しいと願う夢の道具が、

今、この時、私の手の中に…………!?




「………どこでもじゃない。鍵にいくつか石がはめられているだろう。宝玉に記憶できる場所は一つにつき一ヶ所だ。とりあえず、今はここの空間だけに移動できる様に設定してある。……お前が今考えているだろう、青だぬきの出すとんでもドアを実現しようものなら、幾十数万の複雑な術式が必要になってくる。……考えるだけでも面倒だ。デタラメな空想は架空の中だけにしておけ」




「ちょっ……、ある意味よく知っていると言えなくもないですが、かのキャラクターは青だぬきじゃないですよ!?あくまでも猫型です!!話の中では青ダヌキってよくいじられていますが…、国民的キャラクターをそんな風に言わないで下さい。怒られちゃいますよ!?それにそれを言うなら、この鍵だって充分あり得ないですよ…。一つの場所に一瞬で行けるだけでもとんでもなくデタラメな架空の産物なのに………」




思わず恐れも忘れてツッコミをかましてしまう私だが、男性の方はそうなのか…?と、初めて知ったと言わんばかりに怪訝そうな瞳をこちらへと向けてくる。




「なんだ?タヌキじゃないのか…?この手の道具を見せたら、前に現れた異世界人に、そういう架空の生き物がそちらの世界の物語にいると聞いたんだが、違うのか……」





「!?ドラ○もんを知らないんですか!?あんなに人気の国民的キャラクターなのに…!?貴方も私と同じ日本人じゃないんですか!?」





「………俺がこちらに転生したのは、ずいぶん昔の事だ…。長い時間の間に、生まれた故郷が今どうなっているのか、たまに現れる異世界人や転生者を見つけては話を聞てまわっていたんだが……。そのタヌキの話を聞いたのもわりと最近だった気がするが、もうどれくらい前の話だったか……あまり覚えていない」





「ず、ずいぶん昔………??」





はて…?と、私はちょっとした矛盾というか疑問というか……、違和感に首をかしげる。





(昔って……、んん??)





「何だ?」




「さっきも少し気になっていたんですが、…………貴方がこちらに転生したのは、そんなに前の事なのですか?昔という言葉を使うには、だいぶお若そうに見えますが…………」




「あぁ…。確かに…。魔法使いの寿命が延命化するこの世界でなければ、とうの昔に俺の寿命は尽きているな。俺が流れてきたのは、だいたいこいつらが卵から生まれる直前あたりだ。産まれる瞬間に立ち合ったからな」




男の言葉に、後ろで大人しくしていた二匹も話に参加してくる。




【兄者は我らが卵の時に、母者が人間の集落からかっさらってきた子供だからな】



【我らが卵から産まれ、目にした一番は兄者の顔だった。それだけははっきりと覚えている。あの頃の兄者は、凛々しさに加え、ことさらに愛らしかった…】






「へ、へ~……」





待て。

待て待て待て待て…。




この巨大な二匹の生き物は、さっきもうすぐ600歳とか言っていなかったか……!!?







あえて目を背けて見ないでいた嫌な予感が、真実味をおびてきた。いや…。本当はここに来て、彼らを見た瞬間からずっとくすぶっていた嫌な予感……。





何故なら、少し前にクリス様やナオ様達から聞いた講義の中で、恐ろしい例の王達の特徴を軽く聞きかじっていたからだ。






私は…………、もしかすると、もしかしなくても、

この目の前の人物達を知ってはいまいか。







「………何だ。他に気になる事でもあったか?」







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