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二匹の黒竜を従えた青年③







「…………さて、何から話しましょうか」





ナオ様はゆっくりと考えを巡らせている様だった。

柔らかい沈黙の中、馬車の中にはガラガラガラと馬車の進む音が響いている。




彼の次の言葉を待っていると、ナオ様の隣で黙って目を閉じていたクリス様がふとその目を開け、綺麗な水色の瞳を私へと向けてきた。




「エマ嬢。親が子供達によく聞かせる物語の中に、この国で起きた魔法使いの戦争を簡単に語り継いだものがある。今では周りの国にも広まっているようだが、エマ嬢の故郷では聞いたことがあるか?」




(……魔法使いの戦争って、あの話の事だよね?)




クリス様にそう問われて、私はすぐに思い至る。"お隣の魔法使いの国"といえば、私達はこの物語を一番に連想するのだ。



「えっと……、はい。あります。確か、"白と赤の魔法使い"って話で、私は母から聞きました」



「それを俺達に語ってみせてくれ。どのように語り継がれているか知りたい」



「……わかりました。うろ覚えの所もありますが、それは許してくださいね」




そう言って、私はクリス様に言われた通り、このマルスから広く私達の国にも伝わる、幼い頃聞いた魔法使いの物語を少しずつ話し始める。

国境を超え、誰もが聞いたことがあるであろう、有名な物語である。




「昔…。この広い大陸は、二人の女神。大地と深緑の女神、グロアニキア様と、アシュタリテ様の恩みによって、緑が溢れ、豊かな大地がどこまでも広がる楽園のような場所でした………………」







◇◇◇◇◇◇◇◇◇








女神様方は、幻獣達や獣達の他にも、その大地に人間が住むことも許されました。

そして、一握りではあるものの、才ある志の良い人間に"魔法"という祝福をくださったのです。

二人の女神様に続き、他の神々や精霊も、ほんの一握りの人間にその祝福を送りました。




"魔法使い"の誕生です。




魔法使いはよく人を導き、やがて大陸の至るところで国を作り栄えさせましたが、




親から子供へ代を重ねれば重ねるほど、"神からの祝福"を自らの力と勘違いをし始めたのです。




やがて時が経てば経つほど、その力が与えてもらった"祝福"だったことも忘れ果て、"魔法使い"達は大陸の全てを自らの力に屈服させようと争いを始めました。




長い長い、大陸全土を巻き込んだ魔法戦争の始まりです。




互いの国を滅ぼしては新たな力を取り込み、大陸に住む他の生き物や幻獣達も、やがて行き場を失っていきました。




多くの者が血を流し、大地はどす黒く染まっていったといいます。




そして、終わりの見えない争いの中。そこに二人の魔法使いが頭角をあらわし始めます。




"白の魔法使い"と、"赤の魔法使い"です。




二人の王の元、大陸は大きく分断されていき、

ついに決着をつけようと、王達が大地の力の流れを無理矢理操作して暴発させようとしました。その時……。




とうとう、女神様方の怒りが爆発したのです。

大地が大きく音をたてて、大陸中に地割れを起こしました。




割れは多くの魔法使いや人間を飲み込んでゆき、大地は形を大きく変え、新しい山々がいくつも産声を上げました。




女神様の声が大地に響き渡ります。



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