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エマ・ブランドン嬢②(クリス・ヴィート目線)





………その変化は進むほど如実に現れ、まるで一歩足を踏み出すごとに、別の世界に足を踏み入れている感覚だった。




心地いい木漏れ日の中を鳥のさえずりを聞きながら不思議な思いで進んでいると、とうとう峠を越えれば彼女が住む村という所まで来た。



夜…。

夜営をしながら空を見上げると、満点の星空に、虫の声。




深く息を吸うと、青々と繁る緑の…草の香りが胸一杯に入ってくる。




石も、土も、川も、木々も、空気も。




周りにある全てのものが、美しいと初めて思った。




そして失われる前の本来あったはずの世界の姿を目にした様な気がして、

それと同時に、人間の業の深さも同時に見てしまった気がして、



その夜は、胸の底で苦いモヤの様なものが渦巻いているような感覚におちいった。




そして、夜明けのまだ周りが薄暗い頃。

村へと入る山道を下っていると、霞がかった山のふもとに村の建物がちらほらと見えてきた。




そのまま馬を進め、ふもとの霞が時間を経て徐々に晴れてくると……、



現れた景色に誰もが足を止め、息を飲んだ。




村の四方を埋め尽くす、整然と綺麗に整備された、どこまでも続く広大な野菜畑…。




圧巻だった。




あの日恩師が渡してきたトマトという野菜も、無数に赤い実をつけ、実や枝葉からは独特なツンとした香りを辺りに漂わせていた。



その他にも、見たこともない野菜らしき実や葉たちが、広々と広がる大地めいっぱいに植えられている。




仲間の騎士達もその景色に圧倒されて言葉が出ないようだったが、俺はふと、村の方から生意気そうな少年の声が、エマ!!と何度も呼ぶ声を聞き取った。




その声に、足が自然とそちらの方に歩き始める。




そして、家の前でわめいていた生意気な少年の首根っこを部下へと渡し、出会った少女の姿は…。




なんの変哲もない、普通の村の少女だった。





エマ・ブランドン。


歳は15と聞いていた。

ダークブラウンの髪を後ろで緩く三つ編みにまとめて、ドアのぶ片手に、キョトンとほうけた様子でこちらを見上げている。




女の子なのに、姿格好はしっかりとズボン姿で、今から農作業にいく直前だったという所だろうか?




薄暗い朝焼けの中で、ぷっくりと色づく茜色の頬が可愛らしいと思った。



焦げ茶色の少女の瞳に、自分の姿が映りこんでいる。




(………………とんでもない任務を任されてしまったな…)




脳裏に浮かぶのは、相も変わらず好好爺と笑っている恩師の姿。




きっとこの少女は、これからとんでもないものになる。





俺の中の直感が、そう告げていた。





それは希望か、諸刃のに剣か…。





そんな訳もわからない確信が胸中で警鐘を鳴らしながら、それが本当に諸刃の剣にならないよう、恩師は俺をここに来させたのだろうかと…、そんな馬鹿げた考えがぼんやりと頭の中をかすめた。




俺は考えを巡らせる。





さぁ、いったい、





どうしたものだろうか…………。





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