いざ魔法国家マルスへ!! その③
ざっと講義とお説教は2時間は経過しただろうか…?
一通りの話を聞き終えて頭を抱え困惑する私に、ナオ様はにっこりとどめの言葉を言い放つ。
「まぁ、付け焼き刃でも入学まであと一月もありますし、知識に関してはゆっくり詰め込んでいきましょう。学園に入ってしまえば我々は助けてあげることはできませんからね。エマ嬢のそ今の危機感のなさじゃぁ、他の生徒に魔法召喚の生け贄にでもされかねませんし………」
「…………、そうだな。あそこには良くも悪くも優秀ゆえに極端な人間も集まりやすい。変なのに目をつけられれば魔法構築の人体実験にされる可能性もある。呪詛魔法の試験体やらもろもろ……」
「へっ!!!???」
私は二人の言葉に思わず度肝を抜かされる。
不穏な言葉の羅列に驚きすぎて、思わず目玉が飛び出しそうだ。
「いや、あの……人体実験って………」
「万が一の話です。国一番の魔法学園ともなれば、極端に振り切った方々も多いのですよ。いろいろと」
「い、いろいろって…!?いろいろってなんですか!?」
「いろいろだ。行けばわかるし、今は聞かない方がいい」
嫌な方向にしか想像が回らなくて、私はナオ様の言葉を繰り返して聞いてしまうが、金髪の騎士様にぴしりと止められてしまった。
そんな事を言われたら、ますます不安と恐怖でおかしくなりそうだ。
こういうものは、教えてもらえない方が逆に嫌な方に嫌な方にと思考が持っていかれるものなのだ。
(いっそ…、いっそ、事細かに教えてくれればいいのに……!!!)
私はその気持ちを目で必死に訴えてみるが、二人はどこ吹く風だ。
全然教えてくれる気が無い。
「さぁ、頑張りましょうね。エマ嬢は農園の為に最低限の読み書きはできると領主様からも聞いていますし、せめて少しでもきれいな文字の書き取りと、墓穴を掘らない程度の一般常識!!これを重点的にやっていきましょう。これもご縁ですし、私達第二師団が道中のエマ嬢のバックアップさせていただきましょう。ね?クリス様」
「ああ…。それが良いだろうな。命令とはいえ村から連れ出したのは俺達だ。何かあったら村の連中やエマ嬢の親たちに顔向けができない。いい妹分ができて団員達も喜ぶんじゃないか?」
そう言って、金髪の騎士様は一息ついて座席の背もたれに体を預ける。
「しかし、エマ嬢といると本当に飽きる時間がないな。私がこんなに声を張り上げて説教したのなんていつぶりだ…?少し前までは腹が割れるほど笑わせられるし…」
「確かに。耽美の騎士様と言われるクリス様の"気だるげなクールビューティー"がどっかに吹っ飛んでますしね。あなたの笑い転げる姿、国の皆さんにも見て頂きたかったですよ」
「やめろ、ナオ…。何なんだ、そのふざけた呼び名は。耽美とか、クールビューティーとか、聞いてるだけで消えたくなってくる。いゃ…、金輪際絶対二度と口にするな。口にしたら俺は二度と社交の場には出ない。代わりにお前を行かせるからな」
「さぁ、どうしましょうか?私はともかく、ご婦人方が許してくれなさそうな気がしますが…。それも一波乱起きそうで、国に戻るまでの楽しみがまた一つ増えましたね」
にっこりと爽やかに悪い顔で笑うナオ様に、絶対してくれるなと恨みがましそうに見返す金髪の騎士様。
目の前の席で二人が楽しそうに会話を続けているのを仲良いな~と思いながら見つつも、私の方は正直それどころではなかった。
突きつけられた命の危機。
先程二人が言った言葉が頭を占拠して、目の前にグルグルと回っているかのようだ。
(生け贄………?試験体…………!?)
なんて命の危険を感じるワードなんだろう。
出発前に、父さんや母さん達が自分の身は自分で守りなさいって言っていたけれど、本当に洒落にならないレベルでその通りではないか。
身を守る…。
それならば…。私はぐっと拳に力をこめて、握りしめる。
「お二人とも…、少し良いですか?」
二人の会話を遮って、私は一大決心をする。
目一杯の決意を込めて私は二人を見つめた。
そして腹に力をこめて、誠心誠意言葉を発する。
「………、どうした?エマ嬢。そんな必死な顔して…」
「私を、皆さんの弟子にしてください!!!!!」
「は?」
「はい?」
「私は、皆さん全員に弟子入りします!!!!」




