いざ魔法国家マルスへ!! その①
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出発の日は、朝から気持ちの良い晴天となった。
「エマ嬢、馬車の乗り心地はどうですか?出発してからしばらくたちましたし、少し休憩しますか?」
木々が生い茂る山道を、騎士様方に周りを護衛してもらいながら、私の乗る馬車はガラガラガラと進んでいる。
私はのんびり馬車の中から外の景色を眺めていたのだが、向かいの席に座っていたナオ様が優しく提案してくれた。
ナオ様の隣には金髪の騎士様も座っていて、少し前までド田舎で育った世間知らずの私に、私の住んでる国のこと。
そして、これから向かう魔法の国マルスについて色々教えてくれていた。
私は聞いたことのない話ばかりで、時間があっという間に感じているけど、時間的には夜もまだ明けきれない早朝に出発したから、おそらくもう昼近くになっているに違いない。
まだ大丈夫かと言えばいける感じであるが、長時間馬車の中にいることには変わりない。
せっかくだから、外の空気にふれて休めたら嬉しいかなとも思う。
(それにきっと騎士様達も馬に乗りっぱなしだから疲れてるよね。馬達も休ませなきゃだろうし…)
「じゃあ…、お言葉に甘えてお願いします。せっかくですし、少し早いですがお昼にしませんか?村から持ってきた野菜や保存食もたくさん持たせてもらえたので、私の手料理で大丈夫ならぜひ作らせてください」
私は素直にナオ様の提案にのせてもらうことにした。
「それは嬉しいですね。エマ嬢の料理をいただけるなんて。さっそく少し開けた所に出たら、馬を止めて休憩しましょう。クリス様もよろしいですね?」
「……ああ。ご馳走になったエマ嬢の料理はうまかったからな。他の騎士達も喜ぶだろう」
それでは決定ですね。と、さっそくナオ様は御者台で馬を操る騎士様や、周りを護衛してくれている騎士様達に指示を出した。
それから間もなく、少し休憩できそうな川べりに来た所で、私たちは必要な荷物を下ろして小休憩…。
昼御飯作りにとりかかることになった。
またすぐ移動しなきゃだから手のこんだものは作れないが、簡単な野菜スープと肉も多少使わせてもらって、野菜の焼き物なら手間もかからず作れるはずだ。
串焼きでも良いだろうか…?パンもあるし、大丈夫でしょう。
心配性の村人から渡された食べきれないほどの
食べ物の数々は、しっかりと荷馬車にてんこ盛りだ。
「…じゃあ、嬢ちゃん!!俺らは肉を調達してくるな!!時間が限られてるから昼は無理だろうが、夜も夜営になったらその肉を料理してくれるか!?」
「もちろんですよ。美味しいお肉期待してますね。それに早く帰ってきてください。遅かったら料理残ってないかもですよ?」
「そりゃ困る!よぉしっ!!さっさと行って、大物獲ってとっとと帰ってくるぞ!!!」
よっしゃあああ!!!と、今ではエママイスター事件で仲良くなった騎士様達が意気揚々と山の中に入っていく。
「……じゃあ、我々は薪拾いして火をおこしますか。薪に火を着けるくらいなら、魔法も使ってもかまわないでしょう。水も川の水を使うより、ここは我々以外誰も見ていませんし、衛生面を考えて水の精霊に出してもらいましょう。クリス様。水は頼みましたよ?」
「あぁ…。この鍋に水を出せば良いか?騎士達は大食らいだから、多めに料理も作っていたほうが……」
金髪の騎士様がそう言って、上下関係なくそれぞれの作業にさっと動く騎士様達の姿に感心していた私だが、二人の話の内容を聞いて、思わずフリーズしてしまう。
「…………………………………………」
「…………?どうしたんだ?エマ嬢。こっち見て固まって…。目が飛び出しそうだぞ」
荷馬車から鍋を引っ張り出しているところで固まった私を、金髪の騎士様が怪訝そうに見つめ返してくる。
「エマ嬢?どうしました…?」
ナオ様も不思議そうに見返してくるが…、こんなこと今さら聞いて良いのだろうか?
「お二人供…、魔法使えたんですね……」
「は…?」
「え…?」
衝撃というか、なんというか、今更というか…。
なんとも言えない空気が、その場の空気を占拠した。
ナオ様と金髪の騎士様の顔が、こいつぁアカン!!!という顔をしていたのは、かろうじてその時のエマにもわかった。




