事の始まり
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ある、よく晴れた爽やかな昼下がり。私の元に一通の便りが届いた。
真っ白い封筒には、流れるような美しい文字で宛名にエマ・ブランドンと書いてある。
しかし差出人の名前はない。
それに私宛に手紙が来る事態が珍事件だ。
なぜなら私の知り合いに文字を書ける友人はいないのだから。
不信に思い首をかしげながら手紙を開けて中をのぞき見ると、封筒がいきなりブルリと震えて何かが勢いよく飛び出してきた。
のわぁっ!っと叫びながらそれをとっさに避け、出てきた物をすかさず見返すと…。それはどうやら便箋の紙だったようだ。
便箋はすぐ様宙に飛び出した直後、一瞬で燃え尽き。その残り火からメラメラと炎文字が浮かび上がった。
エマ・ブランドン
貴殿に魔法国家マルス国営、"アステリア魔法学園"の入学を命じる。
目の前の宙にきらめく文字がはっきりと浮かび上がると、それに追従するかのように冷涼とした威厳ある男性の声がその炎文字を読み上げた。
その様を周りで見ていた父も母も、手に持っていたトマトをぼとりと落とした。
………おそらくこれが、両親も私も人生初めて目にした魔法だったに違いない。
そして誰がどこに入学だって……?
家族全員。耳を疑わずにはいられなかった。
(……………生憎ですが、私…。魔法どころか野菜しか作ったことありませんよ……?)