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個人的な話

叱り方について

作者: オリンポス

上司が部下を見つめるとき、

部下もこちらを見つめているのだ。

今回は人材育成という教育の現場において、

未熟者の代表格であるワタクシが、

教育を通して学んだことをお話していきたいと思います。


まずは教育なんですけど、

これって教育者が一方的に物を教えているように、

少なくとも一般的にはそう思われているかもしれませんが、

それは大きな間違いで、教育者は生徒から多くのことを学んでいます。


ここでは「叱り方」をテーマにして語りますが、

本当はもっともっと学習させていただいているので、

そこについては、また別の機会に語ることと致します。




まずワタクシが教育に携わるにあたっては、野心がありました。

「必ずうちの班員を使ってトップを獲ってやる!」

当時は本気でそう思っていました。


周りには教育現場のプロフェッショナルがいる中で、

ワタクシだけは右も左もわからぬ新参者です。

でも、ワタクシならやれる! という自信がありました。

自分なりのカリキュラムがあったからです。


それに則って、仕事を教えていくうちに、

"自信"は、"確信"に変わっていきました。

「こいつらなら、やってくれる!」と。


ですが、そう簡単にはいきませんでした。

なんていうんでしょうね…

人って機械じゃないから、

やる気とかモチベーションって

仕事にすごく影響するんですよ。


そしてそのときのワタクシは、

士気の低さを生徒たる部下の責任だと思っていたので、

「自分のモチベーション管理もできないのか!」

「やる気がないなら辞めてしまえ!」

(辞めろとは、自分の主義に反するので言いませんが)

というニュアンスの発言をして、

彼らを叱咤激励したつもりになりました。



ですが、みなさんは、

これを言われたらどんな気持ちですか。


「やる気がみなぎってきました!」

そうなりますか? ならないですよね。

実際の教育現場でも士気は下がったんですよ。


そして冒頭でもお伝えした通り

ワタクシは"未熟者の代表格"なので、

「1+1=2」くらい単純な図式なのに、


「あれ、なんで士気が上がらないんだろう」

「どうして他の班は活気があるのにうちだけ…」

本気でそう思い悩んでしまったんです。


日中夜に渡って彼らのことを考えて、

夢にまで生徒が出てくるのに、「なんで?」と。


そのことがずっと心残りで、

お恥ずかしい話ですが、

小説のことを考える余裕さえありませんでした。




そうしたら、最悪の事態が起こりました。

生徒のことが"嫌い"になってしまったんです。


嫌いになることは悪いことではありません。

人間なのですから、仕方がないと思います。

ですが、いつの間にか、

()()()()()()()()()と、

教え子の悪口を言ってしまっている自分に気が付いたんですよ。


これって、最低じゃないですか。


悪事千里を走るというように、

この言葉もすぐに教え子に伝わりました。

関係性はなおさらギクシャクします。


そこでようやく、

「この問題は彼らの責任じゃない。

 これは自分の課題なのだ!」

と当事者意識を持つようになりました。


そこで信頼関係を復旧するために行ったことは、

"相手の話を素直に聞くこと"です。


「なんでやる気がないの?」

そうやって詰問するのではなく、

「何か嫌なことでもあった?」

と、質問するようにしました。


すると、

「実は風邪気味なんです」

「実は頭が痛くて…」

そう打ち明けてくれました。


ワタクシはそんなことも知らずに、

ただ、"やる気がない"というレッテルを貼っていたのです。


全くこの男は、

"自分が上司にされて嫌だったこと"を

知らず知らずのうちに実践していたんです。


これじゃあ生徒から信頼されるはずがありません。


なのでワタクシはこれまでの態度をすべて改善して、

少しでも部下のことを知る努力を始めました。





この経験からワタクシが言えることは2つあります。


①言った通りになる!

②まずは話を聞く!




①についてです。


「お前らは声が出てないんだよ!

 もっと腹から声を出せ!」

仮にあなたがそう叱ったとします。


すると社員はどうなると思いますか。

お腹の底から声を出すと思いますか?

人によっては出すかもしれませんが、

基本的にボリュームは変わりませんでした。


それはなぜなのか。

「声が出てない!」と言ったからです。

脳の与えるセルフイメージは甚大です。

人は言葉に影響を受けるのです。


ですから、声が出ていないと思ったら

ワタクシはこう言うように変えました。


「いいねえ。声が出てるよ!

 でももっと出せるよ。お腹に力を入れて!」


変えた言葉はたったこれだけなのに、

士気は驚くほど高まりました。

もちろん仕事の能率も上がって、

ある分野ではトップクラスの成績を収めました。


人は言った言葉の通りになるんです。

部下にはプラスのメッセージを投げかけましょう。




②についてです。


一方的に自分の感情をまくしたてる人がいます。


「何でいつも報告書の提出が遅いんだ!」

「すいません。実は~」

「言い訳なんか聞いてないんだよ。いいか~」


そうやって持論を押し付けてくる上司と、


「どうした。報告書の提出が遅いじゃないか。

 何かトラブルでもあったのか?」

「そうなんです。実は~」

「そうか。それは大変だったな。

 よし、俺も手伝うから納期に間に合わせよう!」


そうやって話を聞いてくれる上司の2人がいたとして、

あなたはどちらの話を聞きたいですか。


おそらく後者だと思うんです。


人間は「1」しか自分の話を聞いてくれなかった。

そう思うと、相手の話も「1」しか聞こうとしません。


ですが、「10」も話を聞いてもらえた。

そう感じると、相手の話を「10」聞こうとするんです。


心理学でいうところの"返報性の原理"です。


なので相手に何かを伝えたいときには、

相手の話もしっかりと聞いてやることが大切なんだなと、

そんなことを勉強させられました。


「そんなの当たり前じゃん!」

って思う読者の方もいると思いますが、

この話は上司になればわかります。


なんで上に立つ人って、

下の人の意見を聞かないんだろう。

ワタクシにはそれが不思議でしたが、

人を教える立場になってわかりました。


「わかっている()()()」になるんです。



いや、俺はあいつのこと知ってるし!

違います。昨日と今日では別の人間です。

上に立つ人はもっと"知る努力"をすべきなのかもしれませんね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] いやー、これはわかります。 私も指導する立場にいたことがありますが、上は大変ですよね……笑。そんな突拍子もないことよく平気でできるなとか、常識ないのかとかイライラしていた時期はありましたが…
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