表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/9

セイラン村

 森の中で足を負傷した上に猛毒に侵された狼の獣人グスタフを救った直征は、グスタフを自転車の後部荷台に乗せて彼の住む村へと向かっていた。

 最初はグスタフを襲ったアカマダラヘビを始めとした森に生息しているという魔物の襲撃を警戒していたが、鳥や小動物を見かけることはあっても敵意のありそうな生き物には全く出くわすことなく快適に自転車を走らせていた。


 これ以上ないほど道行は順調だった。いや、順調すぎるほどだった。


「しかしこの乗り物はすげえな。起伏の激しいこの森の獣道をまるで都の石畳の道路を進んでいるかのようにスイスイ走っているのにも驚いたが、これだけ堂々としているのに魔物一匹出て来やしねえ。最初は気づかれていないのかと思ったが、無害な獣はちらほら見えてるからそうじゃなねえな、なんでか知らねえがいつもは我が物顔で闊歩している大型の魔獣もさっぱり姿が見えねえ。まるで俺たちを避けているようだぜ」


 驚きを隠せない様子のグスタフだが、それ以上踏み込んだ質問を直征にしてこない配慮に内心感謝しつつも、グスタフ曰くこの二つのあり得ない現象に心当たりのあることを思い出した。


(もしかしたらとは思っていたけど、後ろの荷台に人を乗せた状態でも問題なく走れるみたいだ。ていうかグスタフさんが乗っているのが分からないくらいペダルが軽いな。それに魔物の気配すら感じずに進めているのは今朝のアリの件と同じでココノエさんの加護のお陰なんだろうな)


「グスタフさん、この森っていつもこんなに静かな物なんですか?」


「とんでもねえよ!いつもなら何メートルもある巨大な魔獣達がこの森のあちこちで縄張り争いをしている危険なんて言葉じゃ片づけられない魔境そのものだ。こんな開けた場所を通っていたら命がいくつあっても足りない。こんな光景村の連中に話したって誰も信じちゃくれねえよ」


(やっぱりココノエさんの加護のお陰とみて間違いなさそうだ。過信は禁物だけど、この先旅のルート選びを制限されることは少なくなりそうだ)


 物珍しげに周囲を見回しながら興奮気味に話すグスタフに相槌を打ちながら、直征は巨大な木々と植物が創り出すおとぎの世界のような光景に心を奪われながら自転車を走らせた。




 森の中の色彩を夕焼けから薄闇が支配し始めた頃、一度も危険な目に遭うことなく直征とグスタフの二人乗りの自転車は紫の花の花壇に囲まれた集落へと辿り着こうとしていた。


「グスタフさん、あの綺麗な花は何ですか?等間隔で並んでいるところを見ると村の人たちが植えたようですが」


「よくぞ聞いてくれた!あの花はセントルチアと言ってな、俺達には何の影響もないが魔物を一切寄せ付けない力を持っているんだ。俺たちの御先祖様が偶々セントルチアの群生している地帯を発見して苦心の末に栽培に成功して拠点の周りをあの花で囲んだのがこの村の始まりなのさ」


「それはすごいですね。だからこんな厳しい環境の中で村が作れたんですね」


「村の者が普通の人間より生命力の強い獣人というのもあるがな。だが不安がないわけじゃねえ。セントルチアという名は大昔にいた聖人の名前からとったそうなんだが、なんでこの花が魔物を近づけない力を持っているのか、ご先祖様がセントルチアを発見してから三百年が経つそうだが未だに分かってねえんだ」


「専門家に調べてもらったことはないんですか?」


「勿論あるさ。だが何度かやって来たお偉い学者先生たちでも理由を突き止めることができなかったらしい。詳しく調べようと王都の研究施設に運ぼうとしたらしいが、この森を出てすぐにすべての花が枯れちまったんだと。他にも薬効を利用しようとエキスを抽出してポーションに利用しようとしたこともあったそうだが、これも森を出てすぐに劣化して使いもんにならなくなったそうだ」


「へえー、不思議な花ですね」


「まあな。さっきはああ言ったがこれまでおかしなことは一度も起きてないからな、俺も含めてセントルチアのことを信用してない奴はこの村にはいねえよ」


「なるほど。ん・・・?それだと村の人達はセントルチアに囲まれた村の中でしか生きていけないってことになりますよね?でもグスタフさんは魔獣がひしめく森の中で狩りをできたこととは矛盾しているような気がするんですが」


「よく気付いたなナオユキ。それについては一つ、お前を案内しなきゃならんところがある。だがもう村が目の前だし日も暮れる。その話は明日してやるよ。

 それよりも、だ。あー、ゴホン、ようこそ俺たちのセイラン村へ。歓迎するぜナオユキ!」


「あ、はい。お世話になります」


 こうして直征はグスタフの住むセイラン村へと足を踏み入れたのだった。




 セントルチアの花壇の先にあったそこそこの広さの畑を二人乗りの自転車がしばらく行くと、木造の家々が立ち並ぶ集落とそれを囲む頑丈そうな木の柵が見えてきた。


「おい、ありゃなんだ。妙な金属の塊に人が乗っているぞ」「後ろに乗っているのはグスタフじゃないか?」「間違いないグスタフだ!誰か村長とマリーの家に急いで知らせに行け!!」


 集落の方が騒がしくなったかと思うと、数人の獣人が村の門から飛び出してきて二人を迎えた。直征たちに近づいてきた獣人たちの中で先頭にいる年長者らしき黒い猫の獣人がグスタフに話しかけた。


「グスタフ無事だったのか!?帰りが遅いから村中心配したぞ!」


「済まなかったなジーン。狩りの途中でアカマダラヘビに襲われてな、危ないところをこの人に助けてもらったんだ」


「アカマダラヘビって、お前よく無事だったな!?今まであいつに襲われて助かった奴はいないのに、おい、よく見たらそこに積んであるのはセージ草じゃないのか!?そんな代物どこで見つけたんだ!?」


「話せば長くなるんだが、その辺も含めてまずは村長に報告しないとな」


 その時、村の門から新たに数人の獣人が歩いてくるのが見えた。先頭にいるのはグスタフより十歳ほど年上に見えるクマの獣人で、その中の唯一の女性の獣人は幼い狼の獣人の女の子を抱いていた。


「グスタフ戻ったか。日暮れまでに帰らなければ明日にも村一番の狩人の葬式を出さねばならんところだった。いや安心したよ」


「心配をかけてすまなかった村長。危ういところをこの旅人に助けてもらったのだ」


「旅人だと?・・・・・・どうやらお前のことも含めて詳しく話を聞く必要がありそうだな。とはいえ家族に心配をかけたまま私の家に連れて行くわけにもいかん、一度家に戻るといい。夕食の支度はこちらでしておくから、そこの客人と二人で後で私の家に来なさい」


「わかった、感謝する村長」


 そう言ってセイラン村の村長は直征の方を値踏みするかのように目顔で挨拶すると女性と女の子以外の獣人を引き連れて村の方へと引き返していった。


「あなた」


「心配をかけたなマリー」


「いいえ、いいえ、あなたが無事でいてくれたならそれだけで・・・うぅっ」


 きょとんとしている自分たちの幼子を包むように抱き合う二人。目のやり場に困った直征だが、ここは場の空気と化すことに決めてひたすら紫色の空を眺めていた。




「待たせたなナオユキ。付いてきてくれ」


 それから少しの間家族との再会を喜んだグスタフは、片手でマリーと手を繋ぎもう片方の手で女の子を抱き上げると直征を自分の家まで案内した。(初対面の直征の目の前でラブラブシーンを見せつけたとは思えないほど堂々とした態度だった)

 足のけがの影響も見せない正に一家の大黒柱というグスタフの姿にちょっと尊敬した直征が連れてこられたのは周りの家よりも少し大きめの木のぬくもりの感じられるログハウス風の家だった。

 家に招かれた直征は荷物と自転車を置かせてもらった後グスタフの奥さんと娘を軽く紹介されて(娘の名前はやはりアーヤだった)、話もそこそこに二人に見送られて村長の家に向かうことにした。


「本来なら茶の一杯でも出してもてなしたいところなんだが、村長との話が長引きそうなんでな。あまり帰りが遅くなってまたマリーに心配させるのもなんだしな」


「そうですね。あんなに美しい奥さんと可愛い娘さんがいるんですから、早く家に帰りたくなる気持ちはわかる気がします」


「バ、バカヤロウ!!だれが村一番の愛妻家だよ!?褒めてもなんも出ねえぞ!」


「い、痛い痛い!!グスタフさん照れ隠しにそれ以上背中を叩かないで!ゲホッゴホッ」


 バンバンと遠慮なしに背中を叩いてくるグスタフとそんな会話をしている内にグスタフの家よりさらに一回り大きい村長の家に辿り着いた。


「村長、グスタフだ。ナオユキも連れて来た、入るぞ」


「来たか。二人とも入りなさい」


 グスタフの後に続いて村長の家にお邪魔した直征は、村長の勧められるがままに居間の大きなテーブルに案内され椅子に腰かけた。

 三人が座るのを見計らったかのように奥から村長の奥さんらしき人が木製のコップに入ったお茶を配ると一言もしゃべることなく笑顔で黙礼するとそのまま戻っていった。


「さて、改めてようこそナオユキ君、そしてグスタフの命を救ってくれてありがとう。ああ、なぜそのことを知っているのかという顔だね。まだ話を聞いたわけではないが、村一番の狩人であるグスタフがいつもの時間になっても帰ってこなかったのは命の危機にあったこと以外には考えられない。強力な魔獣が闊歩するこの森において我ら人族の命はあまりにも儚い。この村の外では日常から外れた行為に走ることはすなわち死を意味する。その確信があったからこそこうしてお礼を述べているのだよ」


「確かにその通りです。僕が駆け付けた時にはグスタフさんはアカマダラヘビの毒にやられた後でした」


 ある程度予測がついていたという村長に、直征はグスタフと出会ってからセイラン村に来るまでの一部始終を語った。


「なるほどなるほど、ナオユキ君のその自転車とやらのお陰でグスタフは無事に帰ってくることができたのか。それにしてもこの森の魔獣が一匹も近づいてこなかったという話も驚きだが、それ以上にナオユキ君に一つ尋ねたいことがあるのだがいいかね?」


「はい、何でしょうか?」


「これはグスタフへの質問でもあるのだが、グスタフを助けに現れた時のナオユキ君がやって来た方角は村とは真逆だったというのは間違いないかね?しかもナオユキ君は森の獣道の悪路をものともせずに自転車で走ってきたようだがそれも本当かね?」


「はい、その通りです」「間違いないぜ村長」


 そうか、とポツリと呟いた村長はしばらく思い悩むようなそぶりを見せながら考え込んでいたが、意を決したように直征に向き直ると重い口調で話し始めた。


「ナオユキ君も知っていると思うが、この森の環境は人が普通に暮らしていくには厳しすぎて、身体能力に自信のある獣人ですらセントルチアの恩寵なしに生きていくことはできない。ここまではいいかな?」


「はい、グスタフさんからもそう聞いてます」


「だがこの村の外に出るには北の一本道以外に方法はないことは知らなかっただろう。ナオユキ君が現れたのは村の南の方角からだそうだが、その先には人族は勿論ある一種類の生物を除いて地上に生きる者全てが生存すること敵わない荒野、通称死の大地しかないのだよ」


「うええ!?あそこは死の大地なんて呼ばれてるんですか!?」


「そうだ、死の大地ではあそこに唯一生息するデスアントという昆虫が自分のテリトリーに侵入する一切の生き物を食い尽くし、時には共食いまで行って不毛の大地に変えてしまっているのだよ。もう一度確認するが、ナオユキ君の話を聞く限り君はどういうわけか死の大地からやって来たとしか考えられない」


「・・・・・・」


「このセイラン村は秘境と呼ばれるほど外界と隔絶した場所にあるが、この森で採れる薬草などの素材は人族の間で珍重されていてね、村の歴史の中で外から侵略行為を受けた回数は数知れないのだが、なんとかそれを跳ね返してこられたのはこの森の険しさと一本しかない村への道のお陰で防衛が容易かったからなんだ」


「僕はスパイなんかじゃないですよ!ただの旅人です!」


「大丈夫だ、君がスパイではないことはアカマダラヘビを前にしてグスタフを助けたことから言っても信用している。だが村への道以外の侵入方法の存在を村長として見過ごすことはできんのだ。ナオユキ君、事情を話してはくれないか?それとこのことはグスタフにも言っていない私の独断だから、彼に責任はないことだけは知っておいてくれ」


「ナオユキ、村長の言い分に賛成するわけじゃねえが、お前の言動は明らかに旅になれていない奴のそれだ。事情を話してくれれば何か助けられることがあるかもしれねえ。話せることだけでいいから話してはくれねえか?」


 直征は真剣に話す二人の目を見た。元々人を疑うより信じることを優先する性格の直征だが、二人の真っ直ぐな眼差しを見て信じてみようと改めて思った。どうせ知り合いの一人もいない異世界だ、自分の直感を頼りに生きていくしかないのなら、一度信じた人はとことん信じてみようと心に決めた。


「わかりました、村長さん、グスタフさん、僕が知っていることはすべてお話しします。荒唐無稽な話に聞こえるかもしれませんが、まずは聞いてもらえますか?」


 そう言って直征は自分が異世界人であること、休日のサイクリングで事故を起こしたがきっかけで異世界に来てしまったこと、ココノエという神様に助けてもらって自転車で異世界旅を始めたことなど一部始終を語った。




「「申し訳ございませんでしたぁーーーーーー。どうか、どうかお許しをーーーー!!!!」」


 直征がこれまでの経緯を話し終えた時、グスタフと村長が真っ先に示した反応がこれだった。

 今は丸い木のテーブルの陰になって二人の姿がよく見えないが、おそらく土下座をしているようだ。

 思えば話の途中から兆候はあった。話の最初の辺りは直征の予想通り突拍子もないことを言われて戸惑いの色を隠せない二人だったが、それでも一言も口を挟むことなく聞いてくれていた。どうせこの先も半信半疑だろうなと話していくと、ココノエとの出会いのくだり辺りから目を皿のようにして驚いた表情を見せ始めた。さすがの直征もなぜか次第にぶるぶる震えだした二人の異変に気付いたが、真剣に話に聞き入っていた二人を見ると中断しましょうかと声を掛けるわけにもいかず話を進めた。

 最後に首にかけていたココノエからもらった紋章入りのお守りを取り出して二人に見せた途端、椅子から転げ落ちるように地面に這いつくばると先ほどの絶叫謝罪をして現在に至るのであった。


「ちょ、ちょっと待ってください。いきなり謝られても何が何やら。とりあえず頭を上げてください!」


「いえ!あなた様にスパイの疑いを掛けたこと、万死に値します!私はどうなっても構いません、どうか家族と村の者には累が及ばぬよう何卒、何卒お願いいたします!!」


「なんで村長さんが死ぬ話になるんですか!?グスタフさんも何か言ってやってください!」


「いや、村長を止めなかった俺も同罪だ!神使様に命を救ってもらいながら恩を仇で返す所業、むしろ罪深いのは俺の方だ!ナオユキ様!罰を与えるならどうか俺一人の命で勘弁してくれ!!」


 最初は村長とグスタフの冗談かと思った直征だが、必死を通り越して蒼白な二人の顔を見ると本気以外の何物でもないとはっきり気づいた。


「二人ともちょっと落ち着いてください!罰とか与えませんから!むしろ神使ってなんですか!?こっちが教えてもらいたいくらいですよ!どうか立ってから説明してください!あ、くれぐれも敬語はやめてくださいね」


 土下座の姿勢を崩さない二人の傍まで行って、何とか立たせることに成功する直征。直征にその気がないことを知った村長とグスタフは思わず安堵の表情を浮かべて椅子に座り直した。そしてどちらが話すかを目顔で確認し合うと、村長が口を開いた。


「そうか、ナオユキ君は神使のことを知らないのか。考えてみれば異世界からやって来たというなら当然のことだな。だがナオユキ君、私は今でも先ほどの謝罪を大げさなものだとは考えていない。なにしろ神使という存在はまさに神の代行者、その動向は常に神に見守られている存在と伝えられているからだ」


「え?ちょっと待ってください。僕ってこの世界に来てからずっとココノエさんに見られているってことですか?」


「その通りだナオユキ君、君はココノ、空と大地の神であるイナリ様と共に旅をしていると言っていい存在だ。先ほどの謝罪はもちろん君に対するものではあるのだが、同時にイナリ様への懺悔でもあったのだよ」


「はあ、なんとなく事情は分かりました。そういえばこちらの世界ではイナリ様と呼んでいるんですか?」


「少なくとも私はイナリ様の他の名を知らないし、おそらくこの世界の全ての者が知らぬ名だと思う。そしてナオユキ君、我々から見たら傲岸不遜としか言いようのない君の言動をイナリ様がお許しになられている事実が、君が神使であるという何よりの証拠なのだよ」


「ココノエさんが許している、ですか?そういえばこの世界の人達と神様との距離はとても近いとココノエさんが言ってましたけど、仮に許されなかったらどうなってしまうんですか?」


 直征からしたら何気ない質問の一つだったのだが、それを聞いた村長はビクンと身を震わせた後、言葉の一つ一つを噛み締めるようにゆっくりと答えた。


「天罰が下る」


「天罰、ですか?もうちょっと具体的に言ってもらえたらありがたいんですが・・・」


「・・・これから話すことは本来なら絶対に口にしたくないことだが、ナオユキ君のたっての頼みを聞くということで特別に話すことにする。一度しか言わないからよく聞いてくれ。ある愚か者はイナリ様をバカにするような発言をした次の瞬間、特大の落雷で消し炭になった。その日は雲一つない快晴だったらしい」


「そ、それは恐ろしいですね」


「確かに恐ろしい。だがこんなものはまだ序の口だ。他にもある国の王が戦争のためにイナリ神殿の銅像を供出しようとしたら激しい地震が起きて王城だけが甚大な被害を受けたとか、ある神官の一派が経典の解釈を捻じ曲げようと画策した時には、首謀者達の拠点の町で一年間一度も雨が降らずにあっという間に町民が逃げ出して滅んだらしい。あくまで伝説として伝えられているだけなので真偽のほどは定かではないが、この世界の者で神の罰を信じぬ者はおらぬよ」


「そして一部の天罰は神が遣わした神使に手を出した奴がくらった、と伝えられているわけなのさ」


 苦しそうな表情でそれでも何とか語り終えた村長の話を後を受けるようにグスタフが補足した。


「公式の記録で最後に神使が確認されたのは三百年前だと言われているが、ナオユキ、あんたは三百年ぶりに現れた神の意志の代弁者だってことだ。俺たちのような下々の者でもあんたの正体を知れば腰を抜かすほど驚くだろうが、神殿の神官を始めとした宗教関係者の手にかかったら現人神のような扱いを受けるだろうぜ」


 二人の話を黙って聞いていた直征だったが、曽於の態度とは裏腹に心の中は動揺でお祭り状態だった。


(僕はただ静かにひっそりと旅がしたかっただけなのに、これじゃ約束が違う!何してくれてるんですかココノエさーーーん!!)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ