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山の麓の森にて

何気ない日常を書くということがこんなにも大変だとは・・・時間をかけ過ぎました。

「んっ、んああ、ま、眩し・・・」


 直征が最初に感じたのは瞼を閉じていてもはっきりとわかるほどの激しい光の奔流だった。

 目元を手で隠しながら目を開けると、ちょうど朝日が地平線から顔を出すところだった。


「綺麗だ・・・・・・」


 夕焼けとは似て非なる清浄な空気と鮮やかに色彩を帯びてゆく世界にそんな在り来たりな言葉しか出てこないほど美しい光景だった。

 何かの本で皆既日食の直前と直後をダイヤのリングに喩えた話を直征は聞いた事があるが、この朝日もそれに劣らない美しさだと思った。

 そんな日に一度の光景を見続けた直征だったが、次第に太陽がその姿を現して大地を照らすようになると次第に周囲の様子が見て取れるようになった。


「うわっ!?これは・・・」


 大岩の上ににあったのは一本の黒い線、しかもゾワゾワと蠢く(うごめく)アリの行列だった。

 最初は黒い線は直征の所まで伸びていると思ったが、途中で二手に分かれていた。よく観察すると、なんと直征のいるところだけを避けるように二方向から円を描くように迂回して反対側で合流しているではないか。


「これじゃまるで結界だな。どうなっているんだ?」


 その言葉を聞いていたかのように傍らのリュックにしまっていたスマホが振動音を立てた。そういえばあの人専用の通信手段になったんだよなと思いつつ、直征は通話ボタンを押した。


「おはようございます一道さん。初めての異世界での目覚めはいかがでしたか?」


「おはようございますココノエさん。目覚め自体は感動的な朝日が見られてよかったのですが、寝心地はお世辞にもよくはなかったですね、はははっ。」


「それについてはちょっと気になっていたんです。もし一道さんに準備があるのなら、と昨日言いだすのを控えていたんですがあれが必要なようですね。一道さん、リュックの中を見てみてください」


「わかりました、・・・コレは一体?」


 直征がリュックの中から取り出したのは手のひらサイズの巾着型の革袋だった。赤い紐で口が絞られている。


「論より証拠です。一道さん袋を開けて中の物を取り出してみてください」


 直征が言われた通りにしようと袋に手を突っ込んでみると


「なんだこれ!?デカッ!!・・・これは、テント?」


 革袋から何か見えたと思った瞬間、まるで激流に流されるように独りでに出てきたそれは、何の物音を立てることもなく直征の近くの地面に着地した。それは直征の世界のホームセンターなどで見かけるタイプのテントだった。


「これは僕の世界のテントですか?」


「そうですね、こちらにも同じような物はあるんですが一人で使うには大きすぎるんで、直征さんの世界を観光した時に見たものを参考にさせてもらいました。若干実物と違うでしょうが、使い勝手はいいはずですよ。テントを元に戻したい時は袋の口をくっつけると勝手に入っていくようになってます」


 流石に今から二度寝するわけにもいかないのでココノエの言う通りにやってみると、出てきた時と同じ勢いで革袋の中に戻っていった。


「はあぁ、異世界の技術はすごいですねー」


「あ、直征さん、その袋のこともできるだけ内緒にしてくださいね。下界にも似たものはあるんですけど、その袋自体は私の特別製なので」


「わかりました。それと野宿の時のことまで考えてもらってありがとうございます。これでより安心して旅ができます」


「それからもう一つ是非とも直征さんに受け取ってもらいたいものがあります。リュックのいつもスマホを入れているサイドポケットを見てみてください」


 さっきは何もなかったけどな、と思いつつ直征が改めてサイドポケットを探ってみると何か布地の物に手が当たった。取り出してみると神社などでよく売られていたお守りにそっくりだった。表には金糸で封筒にあったものと同じマークが刺繍(ししゅう)されていた。


「これは、お守りですか?」


「あの紹介状だけだと私の客人だという身分証明にはちょっと弱いのでお渡ししておきますね。憲兵に拘束された時などには効き目があると思いますよ。お気づきかもしれませんが自転車に賭けた加護には周囲に害あるものを寄せ付けない効果も含まれています。一道さんが自転車から離れた場合のことも考えてそのお守りにも同様の効果を付与しておきました。これで道中毒を持つ生き物に襲われることはないと思います。あ、お礼はもう十分言われましたから遠慮せずに受け取ってくださいね」


「なるほど、それでアリが寄ってこなかったんですね。わかりました、大事にします」


「はい、それでは一道さんが快適な旅ができるように祈ってますね」


 直征はココノエとの電話が切れた後軽い準備運動と入念なストレッチを行い、寝床にしていた草を適当に散らして片づけた。


「忘れ物は・・・無いな、よし!」


 大岩の上を点検した後、再び山に向けて出発した。




 昨日とは違って所々に雲が見えるものの相変わらずの旅日和とあって、荒野のサイクリングに慣れてきた直征の旅程は快適そのものだった。


「でもさすがにココノエさんの加護も雨までは防いでくれないだろうな。できれば今日中に人里に辿り着きたいところだけど・・・」


 その直征の願いが天に通じたのか、霞のように見えていた山が次第にはっきり見えるところまで直征の乗るクロスバイクは近づいてきていた。その山肌や地平線に薄っすらと緑色が見えてきたことが何よりも直征を安心させた。


「やれやれ、あの様子なら川か池くらいならきっとあるだろうから、何とか旅を続けられそうだ」


 その時、直征の背後から何かが軽く当たって落ちたような感触がした。何か落とし物でもしたかなと自転車を止めて振り返ってみると、見たこともないような大きなコンドルのような鳥が痙攣しながら地面に横たわっていた。


「これって、もしかして襲われた?」


 翼を広げた状態の翼開長は3mにも達すると思われるその黒い鳥は人間を害するには十分すぎるほどの鋭い嘴と爪を持っているようだった。だが、爪の方はどういうわけかすべての先端が潰れていて、最早用をなさなくなっているようだった。

 どうやら直征を掴んで空中へと攫おうとしたが、ココノエの加護に阻まれて逆にダメージを負ったらしい。


「あの山に近づいたから見つかって襲ってきたのかな?とにかく何ができるってわけじゃないけど、空にも気を配っておかないと」


 流石の直征も明確に襲ってきたと確信できる相手に同情するほど馬鹿ではない。反撃された時のことも考えて魔物と思える鳥をそのまま放置して出発した。少しの後に後ろの方から複数の鳥の鳴き声が聞こえた気がしたが、振り返ることなく前に進んだ。




「はぁーー、ようやくここからが本当の異世界旅って感じだな。今まではどう見ても人の住める場所じゃなかったからな」


 そう直征が独り言ちている間にも殺風景としか言いようのない荒野と、暫定的な目的地として走ってきた山の手前にある生命の息遣いをはっきりと感じる森との間の境界線というところまで近づいてきていた。


「でも、あれ?なんか遠近感がおかしい気が・・・」


 森の入り口からは木々の一本一本まで見えるようになり、上空には鳥らしき影もいくつかあるようだ。しかし確実に近づいているのは間違いないのに、いくら進んでも森に辿り着かない。その理由を直征が知ったのはそれから5分後のことだった。




「ハハハ、言葉もないってこういうときに使うんだろうな・・・」


 遠くから見た時には想像もつかなかった空を覆いつくさんばかりの巨木の群体、その入り口に直征は立っていた。大小様々な木々の中でも特に大きいものは直径が大型ビルほどもあり、高さに至っては先端が見えないほど聳え(そびえ)立っていた。

 木の幹からはこれまた遠近感の狂うほどのサイズの枝が空一面に葉を茂らせて緑色に染めており木漏れ日が優しく地面を照らしていた。その一方で見渡した限りでは動物の気配が一切感じられなかったが、それが逆にこの森の広大さを物語っているようだった。


「そうだ、写真を撮っておこう」


 せっかく元の世界の文明の利器があるのだ。この先何かの役に立つかもと思い、直征はいったん自転車を降りて周囲の撮影を始めた。目もくらむような高さの大木はもちろん、近くに生えている様々な植物や背後に広がる荒野など、とにかく目に付く物は手あたり次第に撮りまくった。

 特に植物の果実や木の実の方はこの先非常食としてお世話になることもあるかもしれない、その時に毒のあるなしを知っているかどうかで生死を分けることもあるだろうといつか調べる機会を得た時のために入念に撮影した。




 周囲のめぼしいものを一通り撮り終わってスマホをホーム画面に戻した時、直征は見慣れない虫眼鏡のマークの付いたアプリが一つ増えていることに気づいた。とりあえず開いてみると『どんなアイテムもたちまち解明!異世界なんでも鑑定商会』という如何にも胡散臭げなタイトルがでかでかと出ていた。


「これはおそらく、いや絶対にココノエさんの仕業だな。あの人、僕の世界でバラエティ番組まで見ていたのか・・・」


 アプリのヘルプを読んでみると、スマホで写真を撮った画像をアプリが自動で取り込みアイテムの名前と簡単な説明、異世界での金銭価値まで教えてくれる優れものらしい(通貨の単位はトルというそうだ)。試しに先ほど撮った画像で確認してみるとすべての画像に名前が振られており、食べられるかどうかまでも記載されていた(中には毒草もあり、毒の効果まで書かれていた)。

 せっかくなので食べられる果実の中で一番食欲をそそられたスクの実という洋ナシに似た黄色い果実を食べてみると、熟しかけの歯ごたえに程よい酸味と甘みがマッチして自転車を漕ぎ続けてきた直征の疲れを癒してくれた。


「スクの実は・・・一個2トルか。って言われてもどのくらいの価値なのか見当もつかないな」


 それでもこの世界では実質無一文である直征にとっては非常にありがたいアプリである。とりあえず撮影した画像の中で一番高値の付いたセージ草という薬草一株とスクの実を10個採取して自転車の前の籠に積んで森の中へと出発した。




 森の中は大型動物の通行が活発なのか自転車が余裕で通れる広さの獣道がいくつもあったため、走行には全くと言っていいほど支障がなく、時折姿を見せる小鳥や小動物、鹿っぽい四足動物などが直征の目を楽しませてくれた。


「ん?小鳥同士のケンカかな?はは、何だか微笑まし・・・なんか小鳥の周りの植物がスパスパ斬れていってる!こわっ!?前言撤回!!あんな凶悪な小鳥見たことないよ!?」


 よく見るとリスは何もない空間に石の礫を生み出して枝に生えている木の実を取っているし、何かを食べている様子の鹿も周りの土が食べやすい位置まで不自然に盛り上がっている。

 どうやらこの世界の生き物は見た目で判断してはいけないらしい。また一つ異世界のことを勉強できた機会に感謝と畏怖を覚えつつ、直征はその場を後にした。




「・・・!・・・!・・・・・・・・・!?」


 それから一時間ほど森の獣道を爽快な気分で走ってきた直征の耳に、木々のざわめきや鳥の鳴き声の中に混じって何かの叫び声が聞こえてきた。どうやら進行方向で何か争いごとが起こっているらしい。


「すごく気になるけど、知らない森の中で自転車で急ぐのも危ないしいきなりスピードを上げるわけにはいかないよなぁ」


 そう言いつつもこれまでより集中して周囲に気を配りながら進んでいくと、木にもたれかかって荒い呼吸をしている男を見つけた。足を抑えている様子を見る限りどうやら怪我をしているらしい。


「大丈夫ですか!?今行きますからお気を確かに!!」


 自転車を近くに止めて男の元に駆け寄った直征だったが、怪我の状態を心配するとともに男の体のある二点が気になってしょうがなかった。


(あれは・・・獣の耳と尻尾、だよな?微妙に動いているしどう見ても作り物には見えないな。いやいやいや、そんなことは今は後回しだ!)


「あ、あんたは?」


「私は旅の者で一道直征と言います。偶々近くを通り掛った時に悲鳴が聞こえたものですからこうして駆け付けたんです。何があったんですか?」


「へえ、こんなところで旅人に出会うとは俺の運もまだまだ捨てたもんじゃなかったようだな。俺の名はセイラン村のグスタフ、誇り高き狼の獣人だ」


 狼の獣人グスタフの話によると、狩りに出ていたところを運悪く猛毒を持つアカマダラヘビに出くわして足に毒を食らったらしい。倒れたところをさらに襲われそうになったが、どういうわけかグスタフを仕留める寸前に何かに怯えた様子で逃げだしたところに直征ががその珍妙な物体に乗って現れたというわけらしい。


「なるほど、お話はよく分かりました。ではグスタフさんの村まで行って助けを呼んできますので場所を教えてもらえませんか?」


「いや、俺のことは放っておいてくれ。村の場所は喜んで教えるが、俺は助けが来るまでもたない。お前さんは知らんようだが、アカマダラヘビの毒は用心の暗殺で使われることで有名な猛毒なんだ。この森で最も会いたくない生き物の一つさ。あと五分もすれば心臓に毒が達して鼓動を止めてしまうだろう。だからあんたにはグスタフは偉大な森の一部になったと村の連中に伝えてもらいたいんだ」


「そんな!?何か助かる方法がないんですか?」


「特効薬はただ一つ、大地の恵み豊かなこの森の中ですら希少な万能薬と言われるセージ草なんだが今から探してもとても間に合わん。俺も今までで二度しかお目に掛かったことがないが、鮮やかな緑の葉は森の宝石と言われるほど美しく「これですね、どうぞ」ああ、すまねえな。そう、この葉のような芸術的な文様が芸術家の間でも人気でなぜここにセージ草が!?」


「この森でさっき見つけて採取したものです。確か葉っぱの部分が特に効力が強いんですよね。さあ、遠慮せずにどうぞ」


「本気で言っているのか!?このセージ草の葉一枚で一万トル、金貨一枚分は優に超えるんだぞ?一財産使って見ず知らずの人間を助けようって言うのか?お人よしにも程があるぞ!?」


「目の前に死にそうな人がいるのに黙っていることなんて僕にはできません。それにこうして話している時点でもう他人ではないですしね。幸い今の僕は有難くもお金がなくても困らない境遇ですので、気にしないで食べてくださいグスタフさん」


「・・・・・・わかった。これ以上救いの手を拒むのは俺の流儀に反する、このセージ草の葉は有難くいただくぜ。だがその前に一つだけ、このセイラン村のグスタフ、この恩は一生かけて返す。俺が返しきれない時は俺の一族が何百年かかろうと必ず返す」


「わかりました。グスタフさんがそれで納得するなら何も言うことはありません。それよりもいつ死んでもおかしくない状況なんですから早くセージ草を食べてください」


 そう言った直征がセージ草の葉を少しずつ千切ってグスタフの口に運び、顔色が悪くなっていたグスタフがそれでも何とか咀嚼して飲み込んだ。


(あとは何か飲み物と栄養補給ができた方がいいですけど・・・背に腹は代えられないか。ココノエさんごめんなさい)


 直征は数秒考えこんだ後、リュックからスポーツドリンク入りのペットボトルとチョコレートを取り出した。


「グスタフさん、体力が消耗しているでしょうからこれを飲んでください。あとこれも食べてください」


「二つともものすごい気になる代物だが、ここまでしてもらって今更断るなんて野暮なことは言わねえよ。有難く頂くぜ。甘っ!何だこの水は!?うわさに聞く砂糖水ってのはこれのことなのか?こっちの黒い板は・・・!?!?!?!?」


 スポーツドリンクの味に驚いて百面相をしていたグスタフだったが、その後に食べたチョコレートの異次元の甘さに(本当に異世界のお菓子なのだが)表情をなくすほど驚いていた。


「しまった、ハラが減っててつい全部食べちまった。マリーとアーヤに持って帰る分を残しておくべきだった!?」


 チョコレートを食べる時の綻んだ顔を見せたかと思えば、次の瞬間には家族らしき人たちの名前を呼んで涙を滲ませながら本気で後悔しているグスタフ。どうやら相当に喜怒哀楽の激しい人物らしい。


「あの、今あげたものに関しては口外しないでもらうとありがたいんですけど」


「わかった。ナオユキがそう言うなら、たとえ地獄に落ちようが神に見捨てられようが絶対に秘密は守る」


「いや、即答してくれることは有難いんですが、神様には素直に告白してくださいよ」


 そんな雑談に興じている内に土気色だったグスタフの顔に徐々に赤みが増してきた。どうやらセージ草の効果が出てきたようだ。


「グスタフさん、体長はどんな感じですか?」


「おう、さっきまでは全身の力が抜けていく感じだったが、セージ草のお陰で歩くくらいならなんとかいけそうだぜ」


「それは良かったです。本当ならこのまま安静にしてほしいところですけど、流石に魔物が行きかう森の中で野宿するわけにもいきませんしね。僕が村まで送りますよ」


「重ね重ね済まねえな。もう日が傾いてきてるしここから村まで帰るとなると走ったとしても日没に間に合うかどうかだ。今の俺の足だと確実に夜の強行軍になるが確かに魔物に食われるよりはマシだな。ナオユキ、もし魔物が襲ってきたら迷うことなく俺を見捨てて逃げてくれ。覚悟はできている」


「いえ、心配しなくても多分大丈夫ですよ。日没までには着くと思いますから」


「いや、そりゃ無理だって。ナオユキのお陰で毒は治ったがアカマダラヘビに咬まれた足の傷はそのままだから歩くので精一杯だ。もし無理をして傷が開いたら血の匂いに敏感な魔物が集まってくるぞ」


「さすがに怪我人のグスタフさんを歩かせるようなことはしませんよ。グスタフさんの傷を悪化させることなく日没までに村に着く簡単な方法がここにありますから。さあ、座ってください」


 そう言って直征が指さしたのは近くに停めていた自転車の後部荷台だった。


「最初から気にはなっていたんだが、何なんだそれは?」


「夕暮れも迫っていることですし、まあ説明は道中にしましょう。この荷台に座って僕の腰に手を回してください」


「いや、こっちこそ疑うようなことを言って悪かった。お前を信じるといった口で聞くような事じゃなかったな。乗り掛かった舟だ、直征に全部任せるぜ。あっちの方角へ行ってくれ」


 グスタフはそう言って先に自転車に乗っっていた直征の後ろに回り込んで荷台に腰を下ろし、直征の胴に灰色の毛並みが美しい手を回して体を固定した。


「じゃあ行きますよ。右よし、左よし、もう一度右よし、出発」


「うおおっ!?前に進んだ!!どうなってるんだこの物体は!?しかも歩くよりはるかに速いし静かだ、こんなもの見たことがないぞ!?」


 グスタフは初めて乗る自転車の走行に驚きの言葉が止まらなかったが、後部荷台の上でも姿勢を崩すことなくしっかりと直征に摑まっていた。


(元の世界だと法律が厳しくなって街中だとなかなか二人乗りはできないけど、ここでは気にする必要なないかな。それにしても仕方のないこととはいえ、初の二人乗りが僕より一回り以上も大きな男の人というのは少々悲しいものがあるな・・・)


 ロマンチックの欠片もない男二人の森林サイクリングに切なさを感じつつも周囲への警戒を怠ることなく、直征はグスタフの案内で村への道を進むのだった。

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