第七話 屁理屈
ーー王都 城内ーー
社は明朝に王都から呼び出され周りには兵士やメイドなどが立ち社はその中央に立たされていた。周りは社を敵視するように疎ましい視線を送る。
「昨夜、私を襲ったの祐吾ですよね?」
リーリスは開口一番に社を犯人呼ばわりするが当然、社はなんの事かさっぱりだった。
「一体なんの事だ、襲う?俺が?」
「嘘を言わないで、昨日は私は襲われる前に顔を見たし、その近くにいたメイドも見たんだから!」
「いやだからなんの事だよ…」
詳しいことを聞かされずただ永遠と責めるリーリスに社は首を傾げることしか出来なかった。
「アデル姫!」
突然、メイド達のいる方から声が聞こえた。それは小さいながらも手を挙げるシャロだった。
「アデル姫、発言よろしいですか?」
「いいわよ」
「ありがとうございます、では…」
シャロは小走りで社の元に行き横にピッタリとつく。
「私は社さんがやったとは思えません!」
「シャロ、悪いけど貴方が何言っても祐吾が襲ってきたのは事実だわ」
「ですが…」
シャロの発言に周りはどよめく、リーリスも一瞬驚いたが落ち着いてシャロの発言を否定する。シャロの発言はリーリスの目撃証言より信憑性は皆無、しかし社は確かに何もしてない。シャロの発言は正しいがこの場に置いては混乱を招く証言にしかならなかった。
「…祐吾、何か言うことは?」
「だからぁ話が読めない。一体なんの事を話してるんだ?」
「あくまでしらを切るつもり?」
何言っても聞かないリーリスに呆れた社は隣にいるシャロに小声で聞いた。
「シャロ、俺何かしたのか?」
「昨晩に社さんがアデル姫を襲ったと事件が起こりまして朝から大騒ぎでした」
「なんだよそれ、証拠は?」
「アデル姫とメイドの目撃が2つだけです」
「目撃証言だけかよ、はぁ………、まあそれだけ分かればいいや」
少し頭の中を整理したのち社は1歩前に出る。
「リーリス。俺がお前を襲ったという決定的な証拠はあるのか?目撃証言だけでは犯人と決めつけるのは早計じゃないのか?」
「うっ…確かに……しかし私は祐吾が襲ってこようとしたのを見た!!この目で!」
「往生際の悪い姫だな、じゃあ俺がお前を襲って何のメリットがある?仮にお前の首をとってもこの国が滅ぶだけだ、しかし俺にはメリットがない。むしろデメリットだ、バレたらどうなるか分からないというデメリットしかない。ましてやお前は俺に助けを求めてるはずだ、そんな奴を易々と犯人扱いしてもいいのか?」
「うぐっ………」
単なる屁理屈にしか過ぎないが決定的な証拠がない相手には有効手段ではある。
案の定、リーリスは言葉に詰まる。周りもリーリス側についていたが段々と傾きつつある。
一国の王女である人の方が味方はつきやすいが決定的な証拠もなし犯人扱いするという怪しさが露わになると段々と傾きやすくなる。
「………分かったわ、祐吾は無実とするわ。けどまだ疑いは晴れた訳じゃないわ」
「無実になれば十分だ」
「良かったですね、社さん!」
事実、このやり方はシャロがいなければ成立しなかった。本来は味方でもあるリーリス側から1人でも反対が出たからこそなんとか屁理屈を並べ済んだ話。
社はシャロにお礼を言うとシャロは笑顔を見せる。
周りのメイドや兵士達はホッとしたのかまだ疑ってるのか半々の空気だが大広間から出て通常業務に戻っていく。
「あ、リーリス」
「にゃによ…」
めちゃくちゃ不敵腐れてるリーリス。社を犯人に出来なかったのが悔しいのか言い返されて何も言えなくなった自分が悔しいのか分からないが肘掛けに肘を立て顎を手のひらに乗せて口を尖らせていた。
「俺を参謀にしてほしい」
「サンマ?」
「さ・ん・ぼ・う。作戦の指揮系統など主に計画やその指導を行う職務だ」
「あの人がいるけどまぁいいか。いいわよ、けど部屋は空け渡せない。疑いは晴れてないから」
「構わない、それと参謀補佐にシャロを就かせる」
「えっ!?シャロを!」
「社さん!?」
「別に煮るなり焼くなりする訳じゃない。単に手伝いが必要だ。まだこの世界全て把握した訳じゃないから」
「はぁ…シャロは?」
「やってみます!やってみたいです!!」
「本人がやると言うならいいわ、けど絶対にシャロには手を出さないで、手を出したらその手を噛むわ」
鋭い眼光を飛ばし今にも噛み付いてきそうなリーリスに苦笑いしつつも社はその場をあとにする。
「ーーえ!?部屋一つしかとれない?!」
「はい、申し訳ございませんが空き部屋は既になくて…」
ある程度、街の様子を見て周り日が沈む頃に宿についてシャロの部屋を取ろうと思い、宿のカウンターにいる女性に頼んだが、あいにく部屋がとれなく社の分しかなかった。
「はぁ、しょうがないシャロは城に戻っていいぞ」
「いえ!社さんの元を離れる訳にはいきません!!」
ふんすと言わんばかりにシャロはやる気満々だが今は特にやる事もないためシャロが居て意味は無い。
「俺と同じになるぞ?いいのか?」
「正直に申し上げますと心配ですが、大丈夫です」
「分かったよ…」
部屋の鍵をもらい、部屋に入る社とシャロ。
「ベッドは一つしかないからシャロが使っていい、俺は椅子とか使って寝るから」
「それはいけません!社さんはサンマですし、ちゃんと休息は必要です」
「いやいや、さすがに幼い女の子を椅子やら床やらに寝かせられないよ。それにサンマじゃない参謀だ」
「私はこれでもメイドなのですよ!そんなのへっちゃらです!」
「メイドは関係ないだろ。いいからベッドを使え」
「ダメです!あ!いい事思いつきました!」
「ん?」
「二人でベッド使うのはどうでしょう?」
「...はぁ?!」
「少し狭くなりますけどちゃんと寝れますので」
「そういう問題じゃないだろ…」
シャロは一緒に使うと言うが色々と問題がある、まず男女という問題、そして年齢的にも色々とある。ましてや付き合ってる仲でもないことに一緒に寝るというのはさすがにマズいと思った社。
「流石にマズい」
「私は大丈夫です!」
「いやシャロは良くても俺がヤバい」
「大丈夫ですよ、私達の部屋ですから」
「うん、何も根拠になってない」
2人で寝たいシャロに断る社とどちらも譲らず言い争いが続くがシャロの粘り強さに負ける社。
「分かった、決まりだ、とりあえず先にシャワーを浴びさせてもらうから」
「はい」
社はシャワー室に入り数分経ちシャワー室から社が出てきた。
「次いいぞ」
「はい」
シャロは入れ違うようにしてシャワー室に入って扉を閉めた、しかしちょっと経った瞬間、シャワー室の扉が開いた。
「あ、着替えを忘れました〜」
シャロがシャワー室から出てきた、出てきたまでは分かったがその姿がまずかった、なんと可愛い下着姿で出てきたのだ。
「おい!シャロ!」
「え?」
社は慌ててシャロに声をかけた、社はこの時シャロの可愛らしい下着姿をしっかりと見てしまったが急いで手で両目を隠した、シャロは一瞬疑問に思ったがすぐに状況を理解した。
「す、すみません!」
シャロは慌てて着替えをとりシャワー室に戻りシャワー室から謝る。
「すみません、私いつもシャワー浴びる時に着替えを忘れる癖がありましてそのままの下着姿で取りに行ってしまうことが多々あるので…えっと、見ましたか?」
「いやいや、見てない!大丈夫だ、可愛い下着を付けていたなんて知らないから見てない!あっ!…」
社は見てないことを主張したがシャロの下着のことを思わず口からでてしまった。
「やっぱり見たじゃないですかー!社さんの変態!!」
「悪い!俺は先に寝てる!」
慌てて布団の中に入る社、しかしモヤモヤとシャロの下着姿が思い浮かぶ、必死に頭から消そうとするが逆効果になり頭から離れなくなる。
「あ〜もう、違うことを考えよう」
天井を見上げ違うことを考える、前の世界や今の世界の事を。
「なんとか参謀の地位は就けた。これで当分ヘマさえしなければこの国から追い出されることはないだろう。しかしリーリスを襲ったのは一体誰なんだ、問題が山積みだよ。ふぁ〜眠い…寝よ……」
先が思いやらる社は大きくため息を吐く、そして段々と瞼が重くなり眠りについた。
シャワーを浴び終わり部屋に戻ると社は既に眠りについていた。
「社さん、もう寝ましたか?」
シャロがシャワー室から出てベッドの方を見て社に声をかけたがしかし返答はない。
「社さん…、私はお役に立てるよう頑張ります」
ベッドにそっと入り社の顔を眺めたまま眠りについた。