第五話 救世主
ーー王都 城内通路ーー
「さてと、王女様に報告だ。といってもアイツ自身はどこの国から来たか知ってると思うけど口を割らない事だから時間を掛けても無駄だな」
社は地下から出てリーリスがいる場所へと戻る途中にシャロと合流する。
「社さんどうでした?」
「時間の無駄だった、アデル王女の所へ戻ろう」
「分かりました、こちらです」
シャロが案内してリーリスの部屋の前に着いた、シャロは扉をコンコンとノックしてリーリスがいることを確認した。
「アデル姫いらっしゃいますか?社さんが用事があるそうで連れてきました」
「ええ、入っていいわよ」
「失礼します」
シャロは扉を開けて中にはいる。
「アデル姫、社さんが用事があるそうで…」
「いいわ、シャロは下がっていつもの仕事に戻りなさい、ありがとう」
「はい、失礼します」
シャロはリーリスの部屋から出て行く。リーリスの部屋は普通の部屋より少し大きめに造られて社から見て右側にベッドがおいてあり、左側には二つ扉があり、一つはトイレでもう一つはお風呂だろうと思い、壁には高そうな絵画が飾られていた。そして所々には棚が置いてあり、それぞれの棚なは本や食器などが収納されていた。
リーリスはベッドの端に座って部屋着に着替えたのか白いワンピースを着て社の方を向いていた。
「で、私に何の用なの?」
「この世界についてだ」
「あら?先に報酬についてかと思った、まぁ、いいわ何を知りたいの?」
「この世界は今はどうゆう状況だ?」
「この世界の状況は来た時に話した通りだわ」
「いや、もっとだ。情報がほしい」
「それよりも、この世界の始まりを聞きたくない?」
「そう言うってことは始まりからこの世界は不安定だと?」
「そうね、平和なんてないのかもしれないね」
「平和か、そりゃいいもんだな」
リーリスは立ち上がり棚からティーセットを二つ取り出す。
「話は長いからゆっくりとお茶しながら話さない?」
「まぁ聞かなければこちらの話は聞かなそうだからな」
「意外と素直ね、さっきみたいに睨みつけさっさと話せ、とか言いそうなのに」
「シャロにも言ったが俺はあの時はキャラを作っていてね、普通の俺は普通だよ」
「……なんだ、ちょっと安心した。そこのソファーに座ってお茶を淹れるわ」
「それは有難い、そうさせてもらう」
リーリスはお茶を用意しはじめた。社はソファーに座り一息ついて先程までの戦いの緊張が途切れたかのようにホッとした。
「口に合うか分からないけど、どうぞ」
「ありがとう」
リーリスは社の前にティーカップを置いたあとに社の正面に座りカップを口に運び啜った。
「あちち…」
リーリスのネコミミとしっぽがビビッと逆立ち舌を出す。
「猫舌か、やはりそのネコミミは本物なんだな」
「にゃによ…、悪い?」
「いや少しばかり可愛いと思ってしまってな」
「かわっ!!」
リーリスは可愛いと言われ頬が赤くなるが社は猫を見た時と同じように可愛いと言ったまでで特別な感情などないがリーリスは変に勘違いして社を少し警戒する。
「ゴホン、んじゃ、話すわよ」
「ああ、わかった」
リーリスは仕切り直したかのように咳払いして話を始めた
◇◆◇◆
約200年前にこの世界は造られた
世界は一つの大陸で繋がっており14の国ができた
最初は平和に他国との貿易により豊かに暮らしていた
しかし約10年前にバーン・エリック王のバーン王都が近くのアルト王都を壊滅させた
アルト王都は貿易において物資が大変盛んであり貿易においては一番であった
しかしそのアルト王都が壊滅したことにより貿易が著しく低下しバーン王都は貿易をせずアルト王都の物資を全て占領した
エリック王はそれだけじゃ飽き足らず次に狙ってきたのがここアデル王都
アデル王都は至って平和だったため攻めやすかった
しかしアデル王都には他と違って預言者が居た、そして祐吾がこの世界に来ることが予言で分かり祐吾をアデル王都に連れてきた
今では逆転勝ちだったためバーン王都にとってはある意味ここのアデル王都は攻めづらくなった、しかし次いつ攻めてくるかは分からない
◇◆◇◆
「と、まぁ簡潔で言うとこんな感じだわ」
「話が長くなる筈が短いな、それは別にいいか。アデル王都は平和を維持してたってことでいいのか?」
「そーゆーこと、あなたはこの世界では救世主なのだからここのアデル王都だけじゃなく他の国も救ってほしい」
「他の国も?」
「実際バーン王都の勢力は無尽蔵と言っても過言ではないわ、悪く言ってしまうと今回勝てたのはたまたまかもしれない。向こうには強い人がいるの」
「それは分かるのか?」
「昔の血筋とバーン王都の運命と言うのかな、バーン王都には戦闘に特化した物が沢山ある。そして噂ではアルト王都の人達は奴隷のように扱われてるらしいの」
「それは酷い話だな、けど他の国を助けるメリットは?」
「う〜ん、メリットね〜。正直無いと言えるわ」
「だろうな、分かった一応助ける」
「ホントに!?」
「前の世界で死んだからこの世界に生きていくしかないからな」
社は絶対にメリットを求めてる訳ではない。しかしタダで動く訳にはいかないため表上ではメリットを求める、そうすることで対等に立つことが可能である程度の無茶は出来る。
「この国含めてバカそうだから簡単だと思うから助けるだけだし」
「なっ!?さっきから聞いていれば私はね、リーリスという名前があるの、というか最初に名乗ったでしょ!!」
「悪い悪い、俺は祐吾でいいよ」
「きぃー!!なんなのそのラフな態度。ムカつく〜私は王女よ!」
「いやその俺は別に友達に元帥が居たからなんとなく普通に接してるわけで…」
「ムカつく〜〜」
地団駄を踏むリーリスに面白いネコミミ女だなと社は思ってお茶を啜る。
そしてお茶を飲み終わりしっぽを逆立て怒るリーリスをあとにして部屋を出て廊下を歩く。
「はぁ……んでお前は何の用だ?」
先程まで無かった気配が現れ社の背後に立っていた。
それはリーリスの隣にいたフードを被った人物だった。
「…いつから?」
女の声だった。
「地下から出てずっと」
「察しがいいね」
「伊達に指揮官をやっていた訳じゃない」
そのまま歩き始める社、それに合わせて背後にピッタリとつき歩くフードの人物。
「さすがね…」
「何の用だ?」
「貴方は救世主。けどこの世界じゃない」
「それどういう意味だ?確かリーリスの話では俺が救世主って…」
「……」
「おい、聞いてるのか?」
振り返るとそこには誰もいない。先程まで感じていた人の気配も無くなってる。
「気味が悪い…」
社はそのまま城をあとにした。






