第三話 戦いの原則
ーー王都 城内ーー
社はネコミミの幼い女の子に連れられ王都より少し離れた村の民家にあった隠し通路と思わしき地下通路に入った。
「ここは?」
「アデル王都に続く地下通路です、正面は敵に占領されていますのでこちらから城まで進みます」
「あ…あで…なに?」
「説明は後でします」
ネコミミメイドの女の子は社を案内して地下通路を進み数分近く歩くと城の地下であろう薄暗く苔むした場所に出た、そこから階段を上がり廊下に出てある大きな扉の前に着いた
「社さん、ここからは無礼のないようお願いします」
「…?うん、分かった」
ネコミミメイドの女の子が注意を促し大きな扉を開けた。
扉を開けた先には大広間みたいな場所の中央奥に王座がありそこにネコミミメイドの女の子と同じネコミミ姿の長髪の女性が座っていた、その横にローブを纏っている人物がいたがフードを深く被っているため顔を確認できないが王座の隣に立っていた、周りには数人ぐらいのケモノミミメイドのほか、数人の護衛の兵士が立っていた。
「すごい広いな、しかしまたネコミミぃ?なんだここは」
本物かどうかすごく触りたい衝動に駆られる社が目を細め台座に座っていた女性を見てボソッと呟いた呟いた瞬間、王座に座っていた女性のネコミミがピクっと動き、その場に立ち上がった。
「あなたは聞きたいことはたくさんあると思うけど先にこちらの用件に従ってもらうわ。ここはアデル王都よ、そして私は王女アデル・リーリス。この王都を助けてほしい」
ネコミミをピコピコ動かしながら王座から立ち上がった女性はアデル・リーリスと名乗った。
リーリスは見た目はまだ20歳もいかないであろう容姿だったが声はしっかりと張っていてまさに一国を担う王女だと雰囲気から感じ取れた。しかし見た目から明らかに社より年齢は下であろうはずなのに急に連れてこられて急に助けてほしいなんて図々しいにも程があった。
「頭の耳はスルーか…、けどそれは助けを求める人の発言か?」
「ちょっ!? 社さん?その発言は!」
社は腕を組み上から目線でリーリスの助けを拒否した。ネコミミメイドの女の子は社の隣にいて社の発言に驚き止めに入った。
「それに助けを求めるのは何故だ?それに助けたところで俺にメリットはなんだ?」
「…分かった現状を伝える、むしろ先に伝えるべきだったわね。失態だわ…」
社はこれと言って助ける理由はない、そしてその能力はないのかもしれない。しかし今よくわからない世界にいるため現状把握と情報収集にはうってつけだと思った社は強気にでる。そしてリーリスは先に今置かれている現状を全て説明した、敵国が攻めてきて王都が陥落寸前まで追い込まれていること、民間人は城内である程度保護しているがそう長くは持たないこと、必要な情報は全て社に伝えた、また社がこの世界に来ることも全て洗いざらい話す。
「分かった、救ってやることに最善を尽くすがあとはメリットだ、これが逆転に導いたら俺にはどんな報酬が?」
「それに関しては成功してから、というのは?」
「なるほど腕試しということか、まぁ救わないことには意味がないからな、よし分かったとりあえずは成立だ、まずは時間がないが作戦を立てるところからだここに机と王都内の全ての地図、地下道の入り口から出口までの地図、全て持ってこい!」
「聞いたか?早急に取り掛かれ!」
机と地図を要求して即席の作戦台を作る、社自身はそこまで強気な性格ではなかったがここで発言力を強めなくてはいけないと思った。今後として必要なもの失敗を恐れず緻密で正確に最大限にやる。それは二度と後悔しないため社は今この時、この作戦にだけ集中する。
数分後、大広間の中心には大きな円卓と王都内の地図が広げられていた、その周りにはリーリスの他にネコミミメイドの女の子や白い鎧を着た護衛の兵士三人にローブを纏った人物、そして杖を持った兵士三人が囲っていた。
「おそらくだが聞いた話に察するにお前らはバカだ」
「なっ!? バカぁ?」
バカと言われ腹が立つリーリスだが社は無視して言葉を続ける。
「戦いにおいて絶対的な原則がある。目標、攻勢、集中、兵力の節用、機動、指揮の統一、警戒、奇襲、簡明だ。この九つが原則でそれに準じないと破綻する。お前たちはこれが欠けている、策もなしに防衛、兵力の配分など様々なものが欠如している。だからバカだ」
絶対的な原則それは『戦いの原則』とよばれるもの。それは社が考えていたものではなく昔からあった原則で社はそれに従って作戦をたてる。
「まずは目標、敵勢力。中央の大通りから兵を撤退させろ」
「待って下さい!! 中央を開ける? それでは敵兵をここまで一直線に来させるつもりですか?」
社が作戦の内容を伝えている途中で白い鎧を着た兵士一人が言葉を遮るとその兵士をにらみつける。
「指揮権の統一、今俺が作戦の指揮権があるんだ兵士はそれに従えばいい」
「は、はい…」
指揮権は今社にある。采配のミスは死につながる。社はそれを身に染みて理解している、失敗は許されない。だからこそ社は今この作戦に集中していた。
「ちょっ、あんたねぇ…」
「リーリスと言ったか、助けてほしいんだろ。なら従え」
もはや独裁と言わんばかりにその場にいた人達は凍り付く、しかし社はこれも作戦の内だった。
あえて独裁的にやることで必然的に従えざるを得ない状況に陥れる事でおのずと指揮の統一が達成する。
「うぅ…分かったわよ。続けて」
「中央を開け兵士を全て誘導させる。そしてちか地下道から背後に回り挟み撃ちする。至極単純だがお前たちがバカなら敵もバカだ。敵の大将はどうせ王都の外から観察でもしてんだろ。目標ともに奇襲と機動これで十分だ。行け」
「「はっ!!」」
兵士たちは走って大広間から出ていく、社はすかさず次の作戦を伝える。
「次だ、その魔法部隊かなんかのは中央の大通りからくる敵兵を抑え込め、攻撃はいらない防御だけにまわせ!」
「「はっ!了解しました!」」
杖を持った兵士達も社の指示を聞き早急に大広間から出ていく。
「私達はどうすればいい?」
隣にいたリーリスは社に聞いた。
「指揮権ともに一国の王女が前線に出ても仕方ないだろ。あとは兵士たちを信じるだけだ」
社はそう言って机に広げた地図を見ながら答えた。だが社の中では次にやることを考えていた。
大幅修正ですね、