入学式
「ねぇ君、死んでみたいと思ったことある?」
それは頭の中で響いた。
一体誰の声なんだろう。聞いたことのある声だ。
「きみは死後の世界があると思う?」
やはり、頭の中で響き、誰の声か思い出せない。
「ケント、あなたは選ばれたのよ」
その声には艶があり、今にもその声の持ち主の所へ駆け寄りたくなる。
「早く目覚めなさい、ケント」
*
俺は起きた時に泣いていた。
「何だったんだ、今の夢は。」
俺はそう呟いたが、何の返事もなかった。
やはりあれは夢だよな、そう考えてると
ピンポーン
インターフォンが鳴った。
時計を見ると、7時50分だった。
玄関を開けると、
「おはよー、ケント。今日は入学式だよ。急いで!」
俺を向いに来てくれたのは、幼馴染の神崎綾音である。茶髪で髪もサラサラで、とても可愛いと思うが、恋愛感情はあまりない。
「悪い、少し待ってくれ。」
俺はまだ寝間着姿だった。
それを見た綾音は、
「わかった、待てるから早くしてね」と、満面な笑みで答えた。
俺は部屋に戻り、新たに行く高校の制服を着た。
そして玄関前で待っていてくれた綾音に
「待たせて悪い、じゃあ行くか。」
と声をかけ、一緒に高校へ向かった。
俺と綾音が向かっている高校は
『国立大学付属睦月学園』である。
その他に国立の学校があと11校ある。
俺は補欠合格ということで何とか入学ができたが、綾音は首席でごうかくしたらしい。だから、綾音は新入生代表で挨拶することになり、早くに家を出たのだ。
「今日って入学式の他に何かあるのか?」
と、綾音に質問すると、
「今日は入学式とクラス発表、あとオリエンテーションがあるって言ってたよ。」
「そうか、ありがとう。」
俺はそう綾音に言うと、綾音は俺の方を見て笑ってきた。
「ケントがありがとうって言うなんて珍しい〜」
そう言えばあまりお礼を言ったことなかったな。どうしてだろう。
「まぁ、たまにはお礼も言うだろう。」
俺はそう答えた。そして今朝見たあの夢について考えていた。あの、忘れられない声を。
ずっと考えていて、何分だったかわからくなった頃、綾音は
「着いたよ、ここが睦月学園だよ」
俺はそう言われ目の前の光景を見てみる。
新入生や在校生が校舎内に入って行った。
俺は今日からこの学校に通うのかと思いながら初めの一歩を踏み出した。
「新入生のみんな、入学おめでとう。」
こう言った人物はこの学校の学園長だ。
黒髪ロングで凛とした感じの女性だ。
「この学校は、『1人1人の魔法技術向上』を目標にやっている。」
そう、この世界には、魔法と言う不思議な力がある。それは昔からあると言われており、魔法を使う仕事が沢山ある。
だから、魔法科の高校に入学したがる。
けれど魔法科がある高校は12校しかない。その全ては、入学困難と言われている。
入学するには、魔力量、魔力操作の技術
など、色々な項目をクリアしなければならない。
そして、
「この高校には、平等など無い!」
そういったのは学園長である。
「この学校は、無能な生徒は直ちに退学にし、有望な生徒は手厚く保障する。
退学したくなければ強くなれ。自分の力で道を開け。」
そういった学園長の話は終わり、舞台袖に戻っていく。
この学園は弱肉強食の学校である。
俺はその中でも1番下の弱者だ。
しかし、俺は野望がある。それを成し遂げるまでは、この学園を去ることはできない。
俺は強く心に誓った。