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闇落ち砕きの利己主義者(エゴイスト)  作者: コミネカズキ
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応答

「ごちゃごちゃうるぜーぞクソガキが。また悪魔が戻ってきちゃうだろ?」


クルクル回る。

クズがクルクル宙を舞う。

まるではしゃいで踊っているかの様だ。


落下した高田は、、、まあ辛うじて死んでは居ないもののピクピク痙攣して見るからにヤバイ状態で転がっている。


「あ、あんた何を!?」


俺は思わず質問を浴びせる。


「あ?だからお前がクズに制裁?俺に言わせれば暴力だが、お前が言うところの制裁を加える事に関しては別に文句は無えんだよ俺は。そんなん俺もしょっちゅうやってるしな。うりゃ!!」


そう言うと今度は岸田に回し蹴りを喰らわす。


「ギャッブッ!!」


下でも噛んだのか変な声を挙げて吹き飛ぶ岸田。


「こいつらのやってる事は確かにクズだし当然の報いだろ?いくらでも気の済むまでやればいい。」


「え?じゃあ何で……」


言いかけた俺の言葉を遮るように男が続ける。


「但し!それは闇堕ちせずにやれ!悪魔の力は使わずに自分自身の力で……意思でやれ!俺はな、調子に乗ってるクソ悪魔が死ぬほどムカつくんだよ。」


無気力だった男の目に一瞬、後ずさりするほどの殺意が灯る。


「ひっ!?」


暴力教師の海沢に至っては、ションベンを漏らしている。


男はすかさず携帯を取り出して海沢の痴態をカメラに納めた。


「な!?お前何を!?」


海沢が慌てふためく。


「おいクズ教師さんよ〜。お前のやってる暴力指導な、いろんなヤツに裏を取って証拠もかき集めてあるんだよ〜。ほら、例えばコレとか〜。」


「なっ!?!?」


俺からは見えないが男は海沢に何かを見せた。

するとみるみる海沢の顔が青ざめていく。


「犯罪者になって家族に迷惑かけたくなけりゃ今すぐ自主退職して学校を去りな。じゃ無いとコレにさっき撮った失禁写真を添えてPTAとメディア関係者に情報流しちゃうぜ〜?」


「そ、そんな!教師を辞めてどうやって生活していけば良いんだ!?」


「あ?知るかよ。職安にでも行けよクズ野郎。」


唖然とする教師の顔に男はオマケとばかりに拳を打ち据え気絶させた。


「ちなみに佐々城。高田、岸田の三人にも同じような感じで脅しをかける予定だぜ?二度とこの学校の敷居はまたがせねぇ。」


俺は思わず息を飲む。

悪魔の力を使って暴力で制裁を加えていた自分と、自分の力で社会的制裁を加えた上でさらに気を晴らすために暴力まで行使する男。

比較してしまう。

比較してしまうと……自分が酷くショボく感じた。

でも、でもだったらどうしたら良かったんだ?

住む家も母親も将来も無くしてしまった俺は……何にこの感情を、虚しさを、憤りをぶつければ良かったのだろうか?

どうするのが正解だったのだろうか?


そんな俺の思考を見透かすように男が言葉を続ける。


「ああ、因みにお前の父親と祖父母にもそれなりに社会的報復ってヤツをしておいてやったぜ。お前や母親を追い出した事を今頃は後悔しているだろうよ。」


「え??な、なんであんたがそんな事まで……」


「だから、闇堕ちにいたる経緯から現時点の事まで全部こいつが教えてくれるんだよ。関わったヤツの事も全部な。」


そう言ってハデスの福音書(エヴァンゲル)をパラパラ開く。


「違う!そうじゃなくて!何で関係無い俺の為にそこまでするんだよ!?」


「あ?お前だって街にでて自分と関係無い社会のゴミに制裁加えてたろ?」


「お、俺のは……ただの憂さ晴らしたよ。八つ当たりに近い。人の為とかじゃ無く、自分のエゴでやってたんだから。」


「ん~~じゃあ俺もお前と同じだな。」


「は?」


「別にお前を幸せにしたくてやってんじゃ無ーよ。お前のメンタルが落ちるとまた闇落ちして悪魔や怪異が取り付くだろ?んで暴れたり悪さしたりするわけだ。俺は悪魔や怪異がチョーシクレてんのがマジでムカつくんだよ。だからその芽を摘む為にやった。あと人間で調子に乗ってるバカやゴミも見てて不快だから、コイツらもぶん殴った。そんだけだ。」


納得出来るような出来ないような微妙な解説に若干ポカーンとしてしまった俺をみて、ああ忘れてた、と男は付け加えた。


「作田者人、お前に取り付いていたシャックスって悪魔な、[ウソつきな事] で有名なんだ。お前の記憶、途中から書き換えられてるぜ。」


「……え??」


「お前を闇堕ちに誘うために書き換えたんだろーがな。お前の母親、過労で倒れはしたが死んでないぜ。」


「な!?」


「今は駅前の中央病院に入院してる。後で顔出してやれよ。」


頭が混乱した、、、が、俺の足はそれを聞いた途端病院に向かい走り出していた。

屋上から校内に戻る扉を開ける寸前、俺は振り返り男に叫ぶ。


「あんた!あんたの名前は!?」


「あ?どうでもいいだろそんな事!」


「礼をしたい!今度、落ち着いたら必ず礼をする!!だから名前を!」


男は一瞬躊躇ったが、若干照れたように言った。


「……夏人(なつひと)拳龍氏夏人(かんりゅうじなつひと)だ。」


「……ありがとう!夏人(なつひとさん!」


俺は勢い良くドアを開けて中央病院に向かい走り出した。

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