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闇落ち砕きの利己主義者(エゴイスト)  作者: コミネカズキ
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乱入

大天使メタトロンから解き放たれた神撃雷光(ラグナボルテクス)

その威力は俺がシャックスの力を全開で放った攻撃であるブラックリベリオントリガーの数10倍は間違いなく有ろうと言うくらいの圧を放ちながら、さながら死を告げる大津波の様に俺に向かって一直線に向かってきた。


俺も、俺に片足突っ込んで抜けられなくなったマヌケな悪魔も、正直助からないであろうと完全に諦めていた。


……ああ、こんな事なら母さんにもっと親孝行しておけばよかった。


この後、この街はどうなってしまうのだろう?

この多翼の天使は、また殺人を繰り返すのだろうか?

……夏人さん……仇を取ってくれるかな。


そんな思考を0.1秒以下しかない短い時間で巡らせた。

一瞬、夏人さんの声が聴こえた気がした。


そして……


尋常では無い爆発音が響き渡り、

跡形も無く全てが吹き飛んだのだった。


……そう、俺の目の前まで迫っていた神撃雷光(ラグナボルテクス)のエネルギー全てが!!


「おいおいモノヒトぉ、何を簡単に諦めてんだよ?ダセ~な。」


「……なん、だと!?」


大天使メタトロンが驚愕の声を漏らす。

そりゃそうだろう。

限りなく神に近いと自称する自分の渾身の一撃がたかが人間の男に片手で掻き消されたのだから。


「ったく、ハデスの黙示録(エヴァンゲル)は反応しなねーしよ。やな予感がしたから帰って来て正解だったぜ。」


あのエネルギーをかき消すことが出来る人物に、俺は1人しか心当たりが無い。

その人は俺の恩人で闇堕ち砕きの師匠、何より俺にとって掛け替えの無い年上の兄のような友人。


「おかえりなさい、夏人さん!」


俺は半ベソをかきながら何とか立ち上がる。


「おう、ただいま~。」


夏人さんがぶっきらぼうに答える。

ああ、何て心強い声なのだろう。


「俺が修行している間に色々ゴタゴタしてんなぁ。まあ詳しい事情とかモノヒトの中にいる奴の話は後で詳しく聴くとして……。」


俺の中のシャックスが「ヒィッ!?」と悲鳴をあげて縮こまる。

ああ、まあ1回ボコボコに半殺しにされて地獄までぶっ飛ばされてるからコイツにとって夏人さんはトラウマだろうな。

しかし俺も他人事ではない。

ジャックスの……悪魔の力を使った事がバレたら何をされるのだろうか?

恐ろしい。


恐ろしいと感じると同時に、何だか笑いそうになってしまった。

だってそうだろ?

さっきまで死ぬ未来しか見えなかったに、夏人さんが来た途端、この後の事を考えてしまったのだから。


「それはそれとして、そこの天使。俺の弟分が随分世話になったな。」


あからさまに動揺していたメタトロンがビクンと固まる。

そして異物を見る様な目で夏人さんを凝視した。


「……貴様、今何をした?どんな異能を使って私の神撃雷光(ラグナボルテクス)を打ち消した?」


「あ?異能なんて使って無ェよ。」


「で、では神のアーティファクトか!?」


「そんなモン持って無ェ。」


そう、そうなのだ。

この人は……。


「あの程度の雷撃なら生身で充分だろ?」


「な?……生身?……え?生身!?」


大天使が超動揺している。


「……ふざけるなよ。我が神の雷光が、たかだか生身の人間如きに防げるわけが無いであろう!」


そう叫ぶとメタトロンは全ての翼をフル稼働させ、両手に先ほどの神撃雷光(ラグナボルテクス)クラスの雷撃を纏わせ超高速で夏人さんに飛びかかった。

やっぱり俺と殴りあってる時はかなり手を抜いていたみたいだ。

速度が段違いに速い。

しかし……


「ごちゃごちゃうるせぇな。」


夏人さんはメタトロンの最速最強の一撃をなんと人差し指1本で受け止め、そのまま指を弾くような動作をする。


同時にメタトロンが空中を十数回転して吹っ飛ばされる。


「お前くらいなら異能無しでも問題無くおちょくれるぜ?」


……ん、あれ?夏人さん修行前より遥かに力上がってないか?もともと信じられないくらい強かったけどますます化け物じみて来ている気がする。


「んでモノヒトぉ、コイツ何やらかしたの?」


不意に声が飛んできてビックリしたが、メタトロンに情状酌量の余地が無い事を伝えなければ。


「人殺しです!大勢の罪の無い人達が殺されました!」


夏人さんの身体が一瞬強ばる。

直接、この世の物とは思えないほどの殺意がメタトロンに向けられた。


「……!!??」


直接殺意を向けられていない俺でさえ蛇に睨まれたカエルよろしく身動き一つ出来なくなる。

メタトロンの現在の心境たるや……!想像したくもない。


「おいクソ天使ぃ……ちいとおいたが過ぎちまったな?お前は殴ってぶっ飛ばして終わり、って訳にはいかねーぞ?」


「いや、ちょ……」


そこまで言いかけたところで夏人さんが目の前を蹴りあげる。

すると十数メートル離れた場所にいたメタトロンの羽が蹴りの風圧で半数ほど吹き飛んだ。


「ぎゃあああああぁ!!」


大天使が余りの激痛にのたうち回る。


「うぐっ!!クッソがああああっ!!こんなものスグに再生してやる!!……あれ!?な、なんで戻らないっ!!??」


「俺は万物の根底の原子からぶっ壊す事が出来るんだよ。天使は再生能力や治癒能力を持ったやつが多いらしいが……俺に付けられたギズが再生できると思うなよ?」


もはや人間じゃねーな。

夏人さんには逆らわないことにしよう。

万物の根底の原子から砕かれたらたまったもんじゃない。


さしものメタトロンも平常心を保てなくなり半狂乱で逃げようとする。


「ヒィッ!ば、化け物めっ!!お、お助け下さい!お助け下さいゼウ……」


ドガガガガガガガガガガガカーッ!!!


その時、突如天空から巨大な雷撃がメタトロンに降り注いだ。

そして、跡形も無く消し去った。


「な??」


余りの出来事に俺は言葉を失う。


「……やれやれ、ハデスの黙示録(エヴァンゲル)が反応しない時点でたかだか天使の仕業じゃあ無いとは思っていたがな。」


「ど、どう言う事ですか!?」


「この本は基本的に異能に関することなら何でも教えてくれる。たとえそれが悪魔だろうが天使だろうが妖怪だろうが……神だろうがな。唯一例外が有るとすればそれは……。」


夏人さんの顔が一瞬マジになり、空を見上げる。

直接、空間が割れ時空の狭間から光り輝くオーラに身を包んだ筋骨隆々な初老の男が舞い降りた。

下顎に髭を蓄え、肩と胸元は豪華絢爛なきらびやかな黄金の鎧に包まれ、下半身はスカートの様なゆったりとした布、背中にはこれまた豪華絢爛な宝石をまぶしたようなマントを羽織っている。

そしてこの老人の放つ威圧感は、先程まで存在していたメタトロンなど足元にも及ばないほどに強烈で強力で無慈悲だった。


「それは……バデス……冥王ハーデスと同格かそれ以上の大神だけだ。」


間違いない。

余り神やら悪魔やらに詳しくない俺にも理解出来る。

コイツは……この初老の老人の正体は……


「主神……絶対神ゼウス!」

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