やっぱ神様の方がチート
俺特製の、少し殺意を持ったウォーターボールが女神に目にも留まらぬ速さで迫っていく。勝ちを確信した瞬間、水球は何の前触れも無く消え失せた。水球がただの水に戻ったわけでも水蒸気にされたわけでもない。消えたのだ。
俺が驚愕していると青筋を浮かべた女神様が迫ってきた。や、やばい。これ殺されちゃうやつでしょ。逃げなきゃ!!背中を向けるのは悪手だと聞いたことがある。どうやら本当だったらしい。俺は逃げようと背を向けた瞬間、襟ごと掴まれてしまった。
あ、終わった。くるりと回転させられた俺はまるで、般若のような怖い顔をした女神様が見える。Oh My God!!あ、この人が神様だったわ。心の中でくだらない話をして、恐怖を紛らわせていると襟から手を離された。
よっしゃ!思わずガッツポーズをすると「てい!」と叩かれた。俺の頭がぐちゃりと潰れるかと思ったのだが、ちょっと痛いぐらいで済んでいる。そんな女神は俺に怒っているのに微笑んでいる気がした。いや、笑っていた。
「ははは、面白い奴だな!!私に攻撃しておいて、キレられたら怖がって逃げるとは!気に入ったぞ!お前のパーティーに加わってやろう」
「え、マジで」
アイツが入ってしまったらバランス崩壊とかそんな生易しいものでは済まない。最早ゲームとして成立しなくなってしまうだろう。ここは丁重にお引取り願わなければ。
「フハッ、深刻そうな顔をするなよ。ちょっとしたジョークだよジョーク。これで腹の虫は収まった。では訓練再開だ。くれぐれも私に無礼を働かないようにな」
マジでよかった~~神の感性がおかしくて。でも、あの水球がまったくもって脅威ではないのだからあの反応も道理か。神の感性がおかしいから助かった、というよりは神の能力が高すぎて助かったということだな。
次、無礼を働いたらどうなるかわかったもんじゃないな。しっかりやるとするか。
「では、魔法は撃てたから...次はその魔法の威力を高めるための魔力操作の訓練を行う」
「魔力操作の訓練を行わないと魔法の威力を高めることは出来ないの、んですか?」
「ああ、そうだ。いかに魔法適正の高い妖精族であろうと魔力操作が出来なければできん」
「わかりました。お願いします」
すると女神様は俺の背中に手を当てた。
「では私が魔力を少し動かすから、それ以降は自分で動かすんだ」
「わかりました」
そんなんで出来るのか?でも、ここは従って努力しないといけないな。頑張るか。
「動かすぞ!」
「はい」
再び体の中に温かい物を感じる。
魔力だ。
それが循環しようとしているのがわかった。特に筋肉を動かしているような感覚はない。ならば意思で動かすしかない。俺はそう思うと心を落ち着かせた。そして念じる。
回れ
回れ
・・・
魔力が確かに回っている。
だんだん慣れていき、念じなくても動かせるようになってきた。
「では、魔力を手に集めて放出するんだ」
「わかりました」
さっきの応答で若干滞っていた魔力を整えて、手に集めていく。
いけ!!!!
ブォンという音を立てて水が発射されていく。え?こういう時って純粋な魔力が出るんじゃないの?そう思っていると発射された水は雲散霧消し、それを見た女神様が意図せずとも答えてくれる。
「やはりお前は水属性の魔力持ちか。それに魔法作成も出来たな」
え?するとチリンと鈴の音共にウィンドウが出現する。
『ステータス
名前:セルア
LV:1
種族:妖精族
職業:水魔法使い
称号:幸運に愛されし者、神に期待されし者
能力値:体力:356 物攻:241
魔攻:573 速度:414
魔力:783 物防:237
魔防:602 幸運:500
スキルポイント:0
職業スキル:魔法作成
水魔法(大)【ウォーターボール】
スキル:豪運 幸運 開運の祈り
開運の呪い 不運の呪い
主神【ヴィレーヌ】の加護』