手加減
今回は午後を中心に更新したいと思います。都合により一日三回更新は難しいかもしれません
もう良くわからん。取り合えず距離を取ろう。幸いあんまりゴブリンが見つからず、草原の深くまで来ていたからな。「トイレに行きたい」と言えば大丈夫だろう。
「ち、ちょっと、お手洗いに行ってくるわ」
「うん」
ただ一言二言を交わそうと思っただけで声が震えてしまう。別に恋をしたことがないわけではない。俺は人並みには恋をして、人並みには失恋してきた。だが、こんな経験は初めてである。
今までの恋が嘘ではないか?と思うほどだ。まあ初めて、恋愛病の重症患者になったということだろう。俺はどんどんノースさんから離れていく。離れて止まっては深呼吸をしてを繰り返しているとどんどん頭が冷えていく。
ちょうど、ノースさんが見えなくなった辺りで完全に頭が冷えた。はぁ、俺はため息を吐いた。恥ずかしい。ただ、恥ずかしい。高校生にもなってあれはないね。
今はノースさん曰く、イケメンらしいからそれ相応の態度をとらないと。というのは無理そうだけどせめて、ノースさんの前でキョドりたくはない。
そんなことを考えているとこちらに背を向けているゴブリンが、パっと目に付いた。
俺は手加減が出来るのではないか、という自分の仮説を思い出す。もしこの仮説があっているならば頼りない男から頼りがいのある男にチェンジ出来るはずだ。俺はアクアショットより弱いだろう、アクアボールを念じる。
すると水球が出来てきた。
これから魔力操作で循環している魔力にひきずり込むようにしていく。
・・・
・・・
確かに水球の大きさは小さくなったがこれでは全く意味がない。確実にオーバーキルするだろう。というかここでやるのは危険だな。他のプレイヤーが見てしまうかもしれない。
それにこの方法では最初の大きさでバレてしまうな。では、最初から魔力が出るのをせき止めればいいのか。人がいないことを確認し、今待機中のアクアボールは遠くの地面にぶつけて、再びアクアボールと弱くしたいという意思と共に念じる。
今度は小さい水球が出てくる。
そして念のために魔力操作で魔力を引き込んでいく。
・・・
これならいける!!!
俺はゴブリンに水球を解き放った。すると水球は自動車並みの速度を出してゴブリンに迫っていく。そしてゴブリンにヒットした。なんとゴブリンは瀕死の状態ながら生きていたのだ!!
よっしゃ!!俺は思わずガッツポーズをする。そして俺は迫ってくるゴブリンと距離を取りつつさっきと同じ方法で詠唱し、倒すことに成功した。
常に手加減さえしていれば普通のプレイヤーと同じ体験が出来るぜ!!!!!俺は歓喜した。そして、俺は陽気になりながらノースさんの下へと戻る。さっきの緊張がうそのようだ。少しドキドキしているだけである。
きっと、役立たずという烙印を惚れたノースさんに押されるのが怖かったのだろう。そんなこと優しいノースさんが思うわけないのにね。
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