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 <茸採り>

 <茸採り>


 秋の日曜日の朝、陽の当たる教員住宅の縁側で読書をしていると、K君がやって来ました。珍しく友人を一人連れています。二人は運動靴を履いて籠を背負い、K君の左手には二人と同じ籠がぶら下がっています。


「先生、茸採りに行かないか?」


と誘いに来たのでした。


 私は子供の頃、父が山で採ってきた茸を食べた経験はありますが、自分で茸採りに行った経験はありません。乃木山の『山の幸』は豊富で美味しいと聴かされていましたから、早速、支度をして出かけることにしました。


 水室神社の脇を通り、山の上へと登って行きます。春に蕨を採った原っぱへと出ました。春に比べて雑草が生い茂り、背丈も高く、歩き難くなっています。原っぱを突っ切り山の方へと足を向け、だらだらした坂を上り始めると雑草の原っぱから立ち木が目立つ景色に変わり、そこはでこぼこの茶色い地面が目立つ山の中です。


 その地面から、黄金色の鼠の足のような形の茸があちこちに顔を出しているのが見えます。

「鼠茸(ホウキタケ科の茸、ホウキタケの別称)だ!」

と思わず歓喜の声を上げてしまいました。


 そのまま登れば登るほど、鼠茸の群れが目立つようになりました。ここは鼠茸のシロなのかもしれない、と思いました。茸を採ってきた父が箸を着けながら「茸にはシロがあって、群生しているんだ。」と語っていた顔が脳裏に浮かんだのです。


 早速、三人で茸を採り始めました。K君たちは夢中になって採っています。私も二人の様子をチラチラ見ながら、採り始めましたが、二人の動きや手の動作が速いのに驚きを隠せませんでした。二人は、大きく逞しい茸を選びながらパッパと手を動かし、休む暇もありません。相当慣れているんだなぁと感心しながら、私も見よう見真似で手を動かします。二人の籠が半分以上詰まった頃、私の籠はまだ3分の1程度でした。


 時々K君が私の籠を覗きに来ます。


「先生、これ、毒キノコだよ。これ、不味いよ。もっと太いのが良いよ。」


こうなると、茸採りでは向こうが先生です。私はK君のアドバイスに素直に従って茸採りを続けました。


 やがて太陽が真上に来たころ、三人は茸採りを終えて山を降りました。


 教員住宅へ帰ると、丁度、用務員のおばさんが居ました。

「こんな良い茸、何処で採ってきたの?」

と感心して訊くので、場所を言うと、

「へぇ、あんな所に。」と驚いたようです。


 土地の人達は、多くのシロをそれぞれの人が知っているのかもしれません。しかし、まだ小学生のK君が、よくそういうシロや知識を持っているものだと改めて感心しました。


 茸の調理方法を知らないので、おばさんに全部あげると、また大変喜んで持って帰りましたが、その晩、煮た茸を一皿持ってきてくれました。それはとても美味しく、それだけでご飯が何杯も食べられるかと思うほどです。その味と共に、茸採りは忘れられない思い出になりました。



 私も、何時の間にか山の生活になれて来たのかもしれません。乃木山の子供たちも、山に囲まれた暮らしの中で逞しく育ち、力強い大人になっていくのでしょう。




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