Episode 1
端正な顔立ちをした二十歳くらいの若い女性。
実年齢はこれで八十歳なんだとか。
どこからどう見ても二十歳くらいしにか見えないその女性の名は石倉 聡美。俺の彼女である。
ちなみに、俺は二十歳。名は内田 建。
俺と彼女は一緒に暮らしている。
生活費は彼女の年金から出している。
つまり、俺は働かずに食えてるというわけだ。
俺が彼女に出会ったのは、高校最後の夏休み。
たまたま通りかかった公園の入り口から、中でガラの悪い二人の男に絡まれて嫌がる彼女が見え、助けたのが始まりだった。
「おい、嫌がってんだろ」
「なんだ兄ちゃん?」
「俺たちはこの子が可愛いからナンパしてるだけだぞ」
ガスン!──俺は一人を殴り飛ばした。三メートルは行ってる。
「ヨッシー!?」
「お前も行っとくか?」
「あ……いや。さいなら!」
二人は慌てて逃げていった。
「ありがとう。助かったわ」
そうだ──と、続ける彼女。「何かお礼しないと」
「じゃあ俺と付き合ってくれ」
「え?」
頬を赤らめる彼女。
一目惚れだった。
「今、君を見て惚れた! 恋人になってくれ!」
「それはいいけど、私は八十歳だよ? 年齢の差がありすぎるんじゃない?」
「冗談。同い年にしか見えない」
「冗談じゃないよ」
彼女は懐から運転免許証を取り出した。
免許証の生年月日が八十年前になっている。
「嘘でしょ!?」
「嘘じゃないって。私なんかでいいの?」
俺は考えた。
可愛い彼女ができたらそれはそれで嬉しいが年齢が。
だけど、こんなチャンス滅多にないと思う。
彼女いない歴イコール年齢の俺にとっては嬉しい限りである。うん。
「いいよ」
「浮気とかダメだからね?」
「うん」
こうして、俺と彼女の交際は始まった。
そして高校卒業後、彼女の提案で俺と彼女は同居することになり、現在に至る。
俺と彼女は今、役所にいる。
婚姻届の提出に来ているのだ。
提出を終え、役所を後にする二人。
「建くん、お昼ご飯食べに行こう」
「うん」
俺と彼女はファミレスに立ち寄る。
席に着き、食事を注文して食べた。
料金を払い、ファミレスを出て家路に就く。
「建くんは何人欲しい? 子ども」
「一人かな。ていうか聡美さんの年齢じゃ産めないだろ?」
「私、人生の半分も生きてないけど?」
「何言ってんだよ。もう八十だろ。寿命じゃん」
「あ、言い忘れてたけど、私、地球人じゃないから」
「……え? 地球人じゃない?」
「うん」
「冗談だろ?」
「本当よ」
「地球人じゃないなら、どこの惑星?」
「ドラコ星の戦闘種族バハムートよ」
「ドラコ星なんて聞いたことないぞ」
「そうでしょうね。地球とは親交がないもの」
この姿も──と、続ける聡美。「仮の姿よ」
聡美は精神を集中させると、巨大なドラゴンへと姿を変えた。
大きさは50メートルはありそうだ。
俺が驚いて腰を抜かしていると、ドラゴンは聡美の姿に戻った。
「信じてくれるよね?」
「あんなもの見せ付けられたらね」
「とりま、帰りましょう?」
俺と聡美は家路に就いた。