18.
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話を終え、リーザがマリアに連れられて退出していく中、笹丸とアクラはそのまま残っておりました。
先ほどの空気とはうって変わって重苦しい感じはなく、ロータスもエルフの長も軽く微笑んだまま、口を開きます。
「ササマルくん、君が守り手になると言ってくれたこと、嬉しく思うぞい」
「我ら、感謝して、いる」
「いえ……まだ、何が出来るかはわかりませんから」
「いいんじゃよ。……かつて勇者と出会ったわしも、旅立ったときは何が出来るかわからなかったものじゃ」
「ササマル、聞け」
長は目を閉じ、手を前にかざしました。
すると手のひらが淡く緑色に光り始め、木々が擦れ合う音が聞こえてきました。
「……おいおい、なんだこれは。これが魔法ってやつか?」
「森の声、エルラカーンの意思」
「エルラカーンとはこの森の神のことじゃ。……コマコ」
ロータスの言葉を受け、下唇を噛んだ状況のコマコが前に出ます。
眉間にはしわをよせ、今にも泣いてしまいそうな面持ちでした。
「……さぁ、コマコ」
「……さ、」
一度だけ先走って言葉を口にして、首を振ったあとに深呼吸をするコマコ。
下を向いていた視線をあげ、笹丸とコマコの視線が重なりました。
「――ササマル、コマコ、……友達」
「コマコ……僕らの言葉が」
「コマコは賢い子じゃからのぅ。ササマルくんと出会ってから長老さまに教えでもらったそうなのじゃよ」
「……ロータス様、コマコは僕らの言葉を理解は出来るんですか?」
ロータスは小さく頷くと、笹丸はコマコと再び視線を合わせ、口を開きます。
「コマコ、あのときはありがとう。ナガマサさんたちにはよくしてもらったし、この世界のことも少しだけ知れたよ」
「Ul ja diara……」
「……コマコは私の方こそありがとう、と言っておる」
コマコの言葉に頷いた後、笹丸たちはロータスたちからとある作戦の概要を説明されました。
森を守るため、笹丸とアクラには協力してもらわねばならないのです。
「……正直、不本意だな」
作戦の内容を聞いたアクラは露骨に嫌そうな顔をしました。
それもそのはず、作戦のなかに盗賊団のアジトを利用するものが含まれていたからです。
「もともと勝手に住んでおったのはアクラくんたちじゃろ。……それに作戦が成功すれば、もっとよい住居を用意出来るぞい」
「……もっといい住居? どこにだ?」
「それは成功報酬じゃ」
「……ま、俺らは一応捕虜みたいなもんだ。拒否権はないな」
「ササマルくんはどうじゃね? 君は一番危険が伴うことになるが……」
「僕も大丈夫です。……リーザさんを脅迫に使うよりはずっといいです」
「では決定じゃな。わしはエルフの守護隊とアクラくんのお友達にちょちょいと訓練でもしてやるかの。アクラくん、付き合うかの?」
「……戦うって決まったわけじゃないだろうに、元気な爺さんだな」
ロータスとアクラが退出し、場には笹丸と長老、コマコが残りました。
「ササマル、伝えておくこと、ひとつある」
「なんでしょうか?」
「コマコ、神の巫女。エルラリア、非常に大切」
「……神の巫女?」
「エルラカーンの巫女、エルラリア、見捨てる、出来ない」
「……エルラリアを助けてほしいということですか?」
笹丸の言葉に長老ではなくコマコが頷きました。
「エルラカーン、もうすぐそこ。エルラリア、欠ける、いけない」
「……? よくはわかりませんが、作戦のときに交渉してみます」
「マリア、ササマル、付いていく。彼女、短気、気をつけよ」
「……それは僕も十分経験しています」
長老と笹丸の言葉を聞いて、コマコが思わず笑ってしまうのでした。




