転校
迷った。この学園広すぎ。まぁ、学園は広く私立中学高校大学が集まった巨大な学園だけど、規模がデカ過ぎ。東京ドーム何個分の敷地面積だろう?
以前、手紙で今日の昼までに大学に来るようにって言われたけど、もう30分は過ぎてるぞ。
学園内をさ迷っているとラフな格好の女性が歩いていた。やっと見つけた人間だ。ここで聞かないと遭難するかも。
「すみません。大学はどちらでしょうか?」
「大学ですか?近くまで行きますから、着いてきてください。こっちです。」
「助かります。」
女性は少しウェーブの掛かった髪の毛を靡かせて俺の前を歩いていった。15分ほど歩くと女性は1つの建物を指差した。
「あれが大学です。」
「ありがとうございます。」
俺は女性に礼をいうと校舎へ歩いていった。それにしても大学もでっかいな。
「がんばってね、転校生クン。」
「え?」
その声に振り向いたが女性の姿は無かった。大学に入ると俺を学園にスカウトした遠山さんが待っていた。
「遅いですね。予定の時間はとうに過ぎましたが?」
「すみません。道に迷っちゃって。」
本当に広すぎ、週一のペースで遭難者が出るって言われても信じちゃいそう。
「仕方ありませんね。早速ですが、学園長があなたと直ぐにお会いになるそうです。」
「学園長が?」
「こっちです。予定の時間を過ぎていますので急いでください。」
遠山さんは俺の返事を聞かず廊下を歩いて行き、彼女の後ろを静かについて行った。しばらく歩くと学園長室と書かれたプレートの扉の前に着いた。
遠山さんはノックして失礼しますと扉を開けた。俺もその後ろから同じように失礼しますと声をかけてから室内に入っていった。
学園長室の中には装飾品は少なく応接用の対面テーブルとソファ、そしてデスクワーク用の大きな机が目に入った。
「ふふふ、よくきたな。」
こちらに背を向けていた椅子が回転すると学園長がこちらを向いた。
「え?」
「ひさしぶりだね、ヤマト。」
そこには10歳前後の女の子が座っていた。
「も、もしかして、風子?」
「おういえー、みんなのアイドル件チムマスの風子だよ。」
「え?なんで?学園長は?」
「だから、私が学園長なのだ。」
状況を理解できていない俺に遠山さんが説明してくれた。
「彼女は正真正銘の学園長です。もっともその姿は例のアレの姿ですが。」
「そう、私も同じようにキャラクターに変身できるようになったのだ。いや、これが私の真の姿なのだー!!」
そういいながら俺に向けてVサインを出す風子。
「は、はぁ・・・」
いまいち状況が理解できてない俺だが、遠山さんが話を続けた。
「とりあえずソファに座って話を続けましょう。」
俺と遠山さんはソファに向かいあい座り、その様子を見た学園長(風子)は満足げに頷いた。
「当学園への入園ありがとうございます。早速ですが今後のスケジュールにまいりますが、夕方には貴方の荷物を積んだトラックが寮に到着します。今日はそのまま荷解きしてください。夜までには寮の方へ教科書が届く手はずになっています。明日から通学していただきますが、クラブ活動は第三映画研究部へ入部してください。」
「第三映画研究部?」
「ええ、表立っての活動は出来ませんからカモフラージュのための部活です。学園では全ての部活動が中学、高校、大学の垣根が無く入部することが出来ます。たとえば、演劇部だけでも4つ、軽音楽部にいたっては20を超えています。」
「はぁ・・・」
「ちなみに私が映3の名誉部長なのだ。」
机の上に立ち無い胸を張る風子
「黙れ貧乳」
「おし、貴様は降格だ」
この流れはチームのチャットでよくあった会話だった。
「ふふふ」
「ははは」
俺と風子はお互いを見て笑いあった。
「さて、2人ともよろしいですか?学園長、いい年にもなって机の上に乗らないでください。」
「なにをー私は永遠の幼女だぞー」
「はいはい、実年齢は「いうなー!!」判りましたから話を続けますね。」
「部活動は・・・いえ、訓練は毎日できます。そして、私達が守るのは関東地区です。」
「え、関東だけなんですか?」
「ええ、他の地区には同じような組織がありますからね。それで、知っていると思いますが、敵の出現は夜しか現れません。出現時間もおよそ20時から22時と限定的です。私達は当番制で22時まで部室で待機します。敵が現れて応援要請があれば出撃します。」
「応援要請って・・・」
「私達は組織の末端にすぎません。出撃時には小型のインカムで通信と映像録画してもらいます。」
「まぁ、一応はチェックしてますって形にしないと上がメンドクサイんだよ。わかったかー」
風子は相変わらず机の上で(無い)胸を張っていた
「・・・なんとなくわかりました。あとは実地で理解します。」
「おういえーヤマトは優秀だからすぐに理解できるさー」
相変わらす机の上で(まったく無い)胸を張っている風子
「それでは寮へ案内します。」
「おう、ヤマトーがんばれよー」
机の上から手を振る風子に俺は手を振り替えしながら学園長室を後にした。
遠山さんは寮へ俺を案内するとすぐに学園に戻ってしまった。寮と言っても普通のマンションの一室を借り上げているだけでいたってシンプルな部屋だった。
いわゆる1Kと言われる部屋で部屋とキッチンが別になった一人暮らしようの部屋だった。家具も設置済みで着替えと布団があればすぐにでも生活できそうだった。
あらかじめ持ってきていた雑巾で床を拭き埃を取り除き一息つくと引越しの荷物が届いた。布団と着替えだけだったので1時間もあれば荷解きが終わってしまった。その荷解きの最中に学園側から送られた教科書と学生服が届き一気にやることが終わってしまった。
ふと、時計をみると7時を示していた
「そうか、一人暮らしだからご飯の準備もしなきゃいけないのか。」
今日も晩御飯に何を作ろうかと考えて冷蔵庫を開けた
・・・からっぽ
当たり前の話である。
「近くにスーパーがあったはず。」
そういうと財布と鍵を持って部屋から出て行った。スーパーの惣菜とお弁当を買い家に着くと誰も居ない室内は静かだった弁当をレンジで温めて食べ終えるととシャワーを浴びて早々にベットに入った。
夢を見た
親父の仕事の都合で引越しした時の夢だ。
仲が良かった女の子が行かないでって俺に向かって泣いている。
「――――――――」
「うん、いいよ。約束するよ」
彼女が何て言ったか覚えてないけど俺は車の窓から彼女と約束した。
そして車が動き出す。
彼女が俺を追いかけるけど、車には追いつけない。
・・・本当に懐かしい夢を見た・・・
翌日
「今日からこのクラスの仲間になる岡田修一君だ。」
「岡田です。よろしくお願いします。」
「席は窓際の最後尾だ。」
「わかりました。」
普通に挨拶をして席に座る。
「委員長。彼の事を頼むぞ。」
「わかりました。」
俺の隣に座っているのがどうやら委員長のようである。黒髪の品の良いお嬢様って感じだ。
「私、幼馴染っていうの。よろし・・・あれ?岡田クン?もしかしてイックン?」
「え?どうしてそのあだ名を?」
「ほら、私よ。小さいときに一緒に遊んだ宮久保瑠璃よ」
「・・・ああ、思い出した。今まで元気だった?」
「ええ、元気よ。・・・あのときの約束覚えてる?覚えてるから会いに来てくれたんでしょ?」
「約束?」
「委員長!おしゃべりはそこまでだ。連絡事項を言うぞ。今日は―――」
担任が連絡事項を言うが主人公の頭の中は幼馴染の言う約束がなんなのか思い出せずにいた
あっという間に昼休み
「イックン、お昼一緒に食べよ?」
「ああ、いいよ。」
瑠璃は隣の席から俺の前の席の椅子を反対側に向け座ると弁当箱を俺の机に置いた。
「本当に会えてよかったわ。イックンに手紙出したけど返事くれないんだもん。寂しかったわ。」
「え、そうだっけ?」
「そうよ。でも、こうして会いに来てくれたって事は約束えお守ってくれたのね。」
「・・・ああ、そうだよ。もちろん約束覚えているよ。」
俺が一瞬だが、言葉を躊躇った瞬間、瑠璃は泣きそうな顔をしていたのでつい、覚えていない約束を覚えていると言ってしまった。
「そうよね、私との約束を忘れるはずないわよね。」
「ああ、もちろんだよ。」
笑顔になる瑠璃にホッとした俺だった。
突然ガラガラと教室のドアが開くとスーツを着た太った男性が立っていた。教室を見渡し、俺を見つけると彼は迷いもせずに俺の方へ歩いてきた。
「君が岡田修一君だね。」
「はぁ、そうですけど・・・」
「話は聞いていると思うけど。第三映画研究部の顧問の四之宮康三だ。君が入部するって聞いてスカウトに来たんだ。」
「はぁ・・・」
「まぁ、詳しい内容はこの紙を見てくれ。部室は大学部の屋上にある。放課後になったらこの紙を必ず持って来てくれ。」
A4サイズの紙を俺に渡すと四之宮顧問は教室を出て行った。渡された紙を見ると、どこかデフォルメされた風子を思わせる女の子が描かれていて、部員募集と書かれていてその下に小さく地図が書かれていた。
「ふーん・・・」
俺は渡された地図を見ながらコンビニで買ったパンを食べていた。
瑠璃は四之宮顧問と俺が話しているときは不機嫌そうな顔をしていたが、四之宮さんが立ち去った後は機嫌が直ったように笑顔になっていた。
午後の授業も終わり放課後になるとそれぞれが部活や帰路へと向かうために教室を出て行ったりしていた。俺も昼に渡された紙をみながら大学までの道と校舎内からの道を確認していた。
「それじゃあ、イックン。また明日ね。」
「ああ、また明日。」
瑠璃はクラスの女友達と一緒に教室を出て行った。さて俺も第三映画研究部にでも行くか・・・
教室を出て大学へ向かう。俺以外にも大学に部室がある部活動へ向かう多くの高校生が同じ方向へ歩いていた。
大学へ入り、渡された地図を頼りに屋上へ向かう。階段を昇り屋上への扉を開けようとするが開かない
「鍵か?これは・・・」
扉の横には暗証番号を入力する装置がついていた。セキュリティー過剰すぎませんかい?
「・・・番号わかんないよ・・・」
ヒントがパンフレットにあるかな?と必死に探すが、デフォルメされた風子の笑顔に少しだけイラッとした。
「ん?これは・・・」
風子が着ている服に不自然な数字の羅列があった。
「これかな?・・・えーっと、・・・」
数字を入力するとガチャリと鍵が開いた。ドアを開けて屋上へ出ると、そこには小さな小屋がありそれ以外に建物は何もなかった。
「あれが、部室・・・か?」
一度小屋の周囲をぐるっと回ってみるが窓も無くトタンでできた2畳ほどの小屋に部室と呼べるのか疑問に思った。
意を決してドアをあけると・・・
「よくきたなヤマト。」
「え?風子?」
そこはボロイ小屋ではなく20畳ほどの作戦室のような部屋になっていた。
「え?これは?」
「あー、まぁ気にするな。それよりもみんなを紹介しよう」
そういって入ってきた扉の反対側にある扉へ歩いていった。俺も後に続き扉に入ると、今度の部屋は豪邸のリビングのような部屋だった。高価なソファがいくつも置かれ大型のテレビ、システムキッチンと大型の冷蔵庫も設置してあった。
「みんな、紹介するよー」
風子の声でソファで寛いでいた者やキッチンで料理を作っていた者たちが風子の周りに集まった。
「はいはーい、彼がヤマト君でーす」
「あ、岡田修一です。ヤマトはキャラ名なんです」
「じゃあ、まずは普通の状態で自己紹介でいこうか。まずは私から、知ってるとおり風子は学園長で幼女なんだよ?」
風子が無い胸を張って自己紹介した。
「幼女関係ないでしょ?一応私も自己紹介しておくわ。遠山恵美よ。学園長秘書してるわ。」
出来るOLのようなビシッとした姿で綺麗なお辞儀をした。
「んじゃ俺だな。俺は四之宮康三だ。一応顧問だが、構内では用務員をしている。まぁ、簡単に言えば何でも屋だな。」
太った男性が額に汗を流しながら言う。
「それじゃあ、次は部長の私ね。私は三島沙紀よ。大学2年ね。それと。またあったわね。」
部長とな名乗った女性は大学への道案内をしてくれた女性だった。
「あ、ぼ、僕は長島裕二です。中学2年です。」
存在感の薄い少年が自己紹介した。
「私は島津紗江子よ。高校1年ね。この基地は私が作り出したのよ。」
「作り出した?」
「ああ、皆ヤマトと同じようにゲームの能力があるんだよ」
風子が言う。
「んじゃ、みんなへんしーん」
そういうと一瞬で全員の姿が変わった。
四之宮顧問は西洋の鎧姿の金髪イケメンに
遠山さんは妖艶なサキュバスに
三島先輩は女のロボットに
長島君はヘルメットを装着した外国人男性に
島津さんはローブを着た妖艶な美女に
そして、
風子は幼女のままだった。
「ヤマトも変わってー」
風子の言葉で変身する
「これが僕の姿です」
オートマンの姿に変わった
「君の武器はなんだい?」
俺は四之宮顧問に聞かれたので武器を『装備』する。
「君は銃か・・・学園長と一緒だな」
四之宮顧問は腕を組んで考え始めた。
「違う違うー。ヤマトは近中距離特化で私は遠距離特化なのさー」
「まぁ、いいさ。編成は考えてある。」
「おk、難しいことはまかせるよー。ンじゃ、施設の説明なー」
風子と一緒に奥の扉を開くとエレベーターになっていた。エレベーター内で数秒するとチーンと音が鳴り扉が開いた。
「ここが射撃場なんだな。」
風子がいくつか並んだレーンに立ち足元のボタンを踏むと奥の壁に人型の的が現れた。
「まぁ、ここよりも奥の方が楽しいかな?」
風子はそういうと奥の扉へ歩いていった。扉をくぐるとそこは戦場だった
「これは?」
「ここはVR訓練場だ。ヤマトは私の得点を超えられるかな?」
風子が現れる敵兵を持っていた銃で打ち抜くと敵兵の頭上に100と現れると敵兵は倒れて消えた。その後しばらく風子が敵兵を倒すが風子が敵兵の銃弾を5発受けた時点で周囲の敵が消えた。
「ゲームオーバーだ。私の点数は・・・。お、19800点かー。まずまずかな?」
空中に19800点と現れていた
「風子の最高点数は?」
「40000オーバーだ。」
風子が(無い)胸を張って答えた
「んじゃ俺もやってみようかな?」
「おう、ヤマトガンバレよー」
変身して現れる敵兵を撃っていく。しばらくして5発被弾すると空中に18200点と現れた。
「初めてにしては良い点数だな」
「よし、敵の出現位置や武装はランダムだけど遮蔽物に気をつければ何とかなりそうだな。」
「そうか、でも今日はもう終わりだ。時間を見てみろ」
「あ、もうこんな時間か・・・」
携帯で時間を確認すると18時に近かった。
「もう、帰ろう。私もお腹すいたし」
風子が扉へ向かい歩いていくと俺も後に続いた。エレベーターから出るとリビングには遠山さんしか残っていなかった。
「待たせたなー」
「すみません。遅くなりました」
「いえいえ、大丈夫です。今日は私達が当番ですので入部初日のの岡田君はもう帰りなさい。」
「はい、それでは。また明日・・・」
「おう、明日な。ってこれ渡すの忘れた。」
風子は俺に小さな水晶がついたキーホルダーを手渡した。
「これが無いと次からは部室に入れないから肌身離さず持っているように」
「わかったよ。早速家の鍵につけるよ。」
俺が家の鍵にキーホルダーを付けると風子は満足したように頷いた。
「んじゃ、明日な」
「また明日ね」
学校の帰りにスーパーでお弁当を買い家に帰った。
それから数日間の行動は初日の繰り返しだった。授業が終わり昼食は瑠璃と一緒に食べて放課後はVR訓練。それが終わるとスーパーでお弁当を買い帰宅する。
そして、初めての当番日を迎えた。
20時
部室には風子と俺の2人がソファに座って食事していた。
「それにしても遠山さんは料理が上手ですね」
「彼女は料理が趣味だからな。この手料理を作る相手が居ればいんだが、見た目がキツそうに見えるからなー」
確かに、美人さんで完璧に見えるから男から見たら高嶺の花なんだよね。
「それよりも、ヤマトが持ってる武器と装甲を教えてくれないか?」
「ええっと・・・武器は『Sハンドガン』『Sライフル』『Sランチャー』と『ナイトメア』にランチャーは『巡洋艦主砲』かな?あといくつかのネタ武器くらいだね」
『Sハンドガン』『Sライフル』『Sランチャー』はS(初心者)シリーズと言われる低価格&低性能で低レベルの敵が必ず落とす物だった。
「なんでそんなもん持ってるの?」
「えっと・・・確か誰かの2キャラをレベリングしてたんだと思う。」
ちなみに『ナイトメア』と『巡洋艦主砲』はどちらとも最高級武器からは2つか3つ程ランクが下がるが、それでも通常のプレイヤーから見れば廃装備に見える物であった。
「まぁ、普段使うのはSシリーズのみにしておいてくれよ。」
「え?何で?」
「現実世界ではSシリーズが標準仕様なんだ。私の『ヴィクトリーライフル』なんてあまりにも高威力すぎて1発で車が爆発したんだぞ」
「爆発って・・・」
「本当なんだからな。信じられないって言うなら下で『巡洋艦主砲』でも撃ってみな。」
「別にいいけど・・・撃てる場所なんてあるの?」
「ああ、なんたってダンジョンマスターが作った施設なんだよ。私が楽しめるモノを頼むのは当たり前じゃないか?」
「うぁ、ひでぇ・・・」
「じゃあこっちだ。」
風子の後ろをついて行きエレベーターに入り、しばらくするとドアが開いた。
「ここなら撃ち放題だ。」
そこは砂浜と穏やかな波のリゾートビーチだった。ただ一つ穏やかではないのが座礁船や乗り捨てられた車がいくつかあり、リゾートというには余りにも殺伐とし過ぎていた。
「ヤマト、あれにSランチャーで撃ってみて。」
風子が指差したのは沖に座礁してあったタンカーだった。
「まかせろ」
変身した俺はSランチャーを構えると視界に緑色の照準が現れた、。
ロック・・・
そう思うと緑色の照準が赤くロックした状態になった。
俺は何のためらいも無く引き金を引くと反動も無く弾丸が発射された。
弾丸は狙った場所に着弾すると小さな爆発をして船体に大きな穴が開いた。
「んじゃ次は『巡洋艦主砲』な。」
俺は装備を変えて再び船体に穴の開いた座商船をロックした。
躊躇いもせずに放たれた弾丸は一直線に座礁船に当たると大きな爆発を放ち俺達の場所まで爆風が飛んできた。
「うわああぁあぁぁ!!!」
風子は爆風に耐え切れず転がると地面に頭を伏せていた。俺には何故か爆風を感じることが出来なかった。そして爆風が収まると座商船はその大きな船体の半分以上を失い沈没していく所だった。
「い、威力高すぎ・・・」
「だ、だから言っただろ?Sランチャーも周りのことを考えたら使って欲しくないんだよね」
「あ。うん。そうする。ランチャー類は元々得意じゃないし、足止めないと撃てないのが嫌なんだよね。」
「あと、防具はどうなってる?ヒューマン用の防具は使えないみたいなんだよね。オートマンはどうなの?」
「いや、今普通に装備してるけど?」
「ふむ、どれどれ?」
風子と一緒に調べると色々なことが判った。変身後の装甲は本物になり鉄は鉄になり鋼は鋼となった。
俺の装甲はメデルキ鋼というゲーム中に出てくるレアメタルを装備していて最上位装備では無いが超硬度の装甲だった。ゲーム内では鋼の装甲値が25でメデルキ鋼の装甲値は1250と軽装甲では抜群の硬度だった。ちなみに重装甲用のメデルキ重鋼は装甲値が5000と4倍の数値だが、移動速度と跳躍、ロックオン時間、命中率が通常の25%まで低下してしまう。
また、大火力のランチャー系の武器は重装甲を装備していないとノックバックがあり、軽装甲の場合攻撃後に5秒間の行動不能状態に陥る。など、ゲームと全く同じシステムだった。
「ふう、まぁこんなものかな?」
「たすかったよ風子。俺の装甲は超頑丈って事でヨロシク!」
「んじゃ、時間も時間だし今日は帰ろうか」
携帯で時間を確認すると22時を少し回っていた。
「大丈夫なの?」
「この時間に応援要請がないって事は違う場所にでも出たんじゃないのかな?まぁ、私達の管轄外だからねー」
風子はそういいながらエレベーターに入っていった、俺も風子の後に続いてエレベーターに入るとリビングに到着した。
「んじゃ、今日はカイサーン。またねー。」
風子はそういうと部室を後にした。
「ちょ、戸締りとかいいの?」
「大丈夫だよー。キーホルダーが無い人はここには入れないんだから。」
「なるほど。んじゃ帰りますか」
「おう。帰ろう帰ろう」
夜の大学は不気味だったが、隣にいる風子の少し外れた音程の鼻歌を聴きながら校舎を出た。
毎朝5時起きなのにまだ寝ない悪い子がいます
一応最後までのプロットは出来てるんで気長に書いていきます