始まりは突然
俺の名前は岡田健一。研究職の父親、専業主婦の母親、高校2年生の俺と中学3年の妹の4人家族の長男だ。ごく普通の一般家庭のイケメンでもなく不細工でもない普通の高校性だ
高校1年が無事に終わり春休みになって、いつものように自室でMMOをしていると、画面中央に***プログラムを実行しますと表示された。
「あれ、こんなの入れてないぞ?」
表示されているキャンセルボタンを連打しても全くとまる気配がないプログラム。ヤバイ。変なウィルスだったら父さんに怒られる・・・
インストール率が上がる度に焦っていくのがわかる。こうなったら最終手段だ!
「電源を抜いて問題の先送りだ!」
椅子から立ち上がり壁に刺さっている電源ケーブルを抜こうとした瞬間インストールが完了し、画面が白く輝きだした。
「うわっ!何だこれ?!」
余りの眩しさに目を瞑っってしまったが、光は直ぐに収まった。
「何だ今のひかり・・・は?」
電源ケーブルを掴んでいたはずの俺の腕は何故かロボットに変わっていた。
「な、何だ?何が起きたんだ?」
壁にかけられた鏡を見ると自分の姿が見たことも無いロボットに変わっていた。いや、これはさっきまでプレイしていたMMOの自キャラのオートマンじゃないか!
基本色が白で青いラインが入ったツインアイの細身のイケメン。カッコいい・・・。
「・・・何がどうなってるんだ?」
視界の端に装備・アイテム・ステータス・スキルとMMOで使っているコマンドがあることに気がついた。装備を選びとゲームで使っていたアサルトライフル『ナイトメア』を選択するといきなり手に現れた。
「うわっ!」
まさか何もない空間からアサルトライフルが現れるなんて思っても居なかったので慌てて落としてしまった。が、武器は手を離してから地面に落ちる前に消えてしまった。
「・・・」
再び装備欄を見ると『ナイトメア』の装備選択が外されていた。再び『ナイトメア』を装備すると手の中に『ナイトメア』が現れた。
「へぇ、実際にはこんな感じになるのか・・・」
『ナイトメア』を手に持って眺めるが、カッコいいの一言に尽きる!机に立てかけて眺めようと『ナイトメア』から手を離すと一瞬で消えてしまった。何度か『ナイトメア』を装備して手から離すと繰り返すと『ナイトメア』は手から離れれば消えることがわかった。
今度はアイテムでも見てみるかな?とアイテム欄を選択すると、先ほどまで低レベルのチームメンバーのレベリングをしていた為の最弱武器が幾つか所持していた。他には常時所持してある特殊弾丸とオートマン専用武器のランチャーが幾つかとオートマンの専用防具である装甲類を所持していた。最強ではないが高レベルの武器を倉庫ではなく持っていたのは運がいいと思う。
ステータスをみるとMMOのステータスそのままだった。ライト層に人気のMMOなのでレベルはカンストしているが廃人じゃない。
唐突に現実に帰る
このままの姿じゃマズイ。もうすぐ高校2年なのに厨二とか、いろんな意味でアウトだ・・・
「元の姿に戻れなかったら、アウト・・・って戻った!」
元の体に戻れと念じた瞬間、一瞬で元の姿に戻った。よかった!最悪だけどオートマンで通学すること考えちゃったよ。
「じゃあ、今度はオートマンになれ!」
そう口にも出しながら念じた瞬間、体はオートマンに変わっていた。
「へー、結構簡単に出来るんだなー。これで俺はカッコいいオートマンに・・・」
姿鏡に映った現実の自分を見た瞬間『もう厨二病は卒業しないと・・・』と普段の生活には必要のない姿を見て心のそこから思った
そして、ゲームの最中と気がつきPCを見るとゲームのタイトルに戻っていた。そういえばチャットの最中だったな。
再びログインするが、今まで自分が使っていたメインキャラは削除されていた。
・・・おい・・・
そして、サブキャラも消えていた・・・
・・・おいおい・・・俺の3年間の努力の結晶が・・・
ちなみにサブキャラはモヒカンにホッケーマスクで作業着を着た近接職が得意なネタキャラクターであった。
・・・長い間楽しんだけど引退時なのかな・・・チムマスに引退だけでも伝えないと・・・
再びキャラクターを作りMMOのチーム「大きなノッポのFULL時計」に加入申請を出すとすぐにスカウトされた。
「えー、元ヤマトです。何故かメインとサブが消されたのでこれを機に引退します。」
ヤマトとは自分が使っていたオートマンのキャラクター名だ。
「えー引退するの?」
「運営に復活してもらえば?」
「それは残念」
他にも多くの言葉でチームの皆は俺を労ってくれた。
「ヤマト引退ダメ。ヤマト引退すると風子の味方がいなくなるー」
一番引き止めていたのがチムマスの風子だった。彼女との付き合いは長く俺がゲームを始めてすぐに仲良くなった人物だった。
「大丈夫。風子は俺が居なくても一人でやっていけるよ。」
「そうじゃないの!私を貧乳呼ばわりしたときに助けてくれる人が居なくなるノー」
見た目が幼女の風子はよくチムメンに貧乳、無い乳、虚乳といじられていた。それで最後に俺がフォローや止めの一撃を放ったりしていたのがチーム内での良くある流れだった。
「まぁ、それだけ元気があるなら大丈夫。みんなで挑んだタイムアタックや討伐数チャレンジも楽しかったよ。」
「ああ、ヤマトは不可能を何とかする男だからな。この前のチャレンジのときも時間ギリギリまで負けてたのに最後の最後で逆転したのもヤマトのおかげだったね。」
「確かに制限時間5分前まで討伐対象モンスター数は他のチームに負けていたね。」
「うん、ヤマトがあいつらの群れを見つけてくれたから勝てたようなものだしね。」
「あのときは本当に楽しかったよ。俺はみんなに会えてよかったよ。それじゃあ、さようなら。」
「ヤマト、さようならーー」
俺はチームの仲間に見送られてログアウトしそのままゲームをアンインストールした。
数日後の夕方、ゲームをしていたがどれもやり尽くしたゲームで飽きていた。そういえば、最近はゲームかってないな・・・。思い立ったが吉日ということで夕方だけど、ゲームを買いに行こう。
身支度を整えてリビングに行くと母さんがテレビを見ていた。
「ちょっと、ゲーム買ってくる。ご飯も食べてくるから今日はいいや。
「わかったわ。気をつけるのよ」
「大丈夫だよ。知らない人には着いて行かないし拾い食いもしないよ。」
「そうじゃなくて、最近は変なのが出るから十分気をつけてね。」
テレビでは最近話題の突如現れるモンスターについての特番が流れていた。ゴブリンやオーク、オーガやトロルなどの誰もが知っているモンスターが突如現れ人々を襲う・・・。現れるのが20時から22時ごろまでに現れるというのでその時間になると多くの商店が閉店するようになった。
「早く帰ってくるつもりだから大丈夫だよ。」
そういって俺は家を出た。バスに乗り駅に着くとちょうど近隣の大きな街への電車が到着する時間だった。帰宅ラッシュ前のちょっとだけ混んだ車両に乗り込み揺られること数十分。目的の駅に到着した。
まずは本屋で新刊のチェックと雑誌の立ち読み。ああ、あの有名ゲームの続編出るんだ。おそらくクソゲーだな。グラフィックは超綺麗だけど、やりこみ要素が無く最近ではストーリーも短いことで有名な過去の栄光のタイトルをつけているシリーズね。俺は買わないな。
次は電気屋に入る。電気屋ではいつか買おうと思っている75インチのテレビが60万以上の値札が貼られていた。超欲しい。そのテレビ画面には有名なサッカー選手が写っていた。
遠山武士
高校一年の夏に肩を痛め長年練習していた野球を諦め、姉の助言でサッカーに転向し翌年、翌々年とチームを日本一へと導いた2年連続の得点王のすごい人で今は海外でプレーしてるみたいだ。
この人の給料ならこのテレビ何台買えるのかな?そういえば、この人のお姉さんって何人もの有名なスポーツ選手をスカウトしてるんだっけ?そんな事を考えながら次の店へ向かった。
ゲームセンターで懐かしの格ゲーで少し熱くなったが無事にクリア、そして目的のゲームショップに付くころには19時を過ぎていた。
しばらく店内を散策し目的だった話題のゲーム(18禁)を買うと店を出た。
空には月が闇を照らしていた。
店を出ると駅前は騒然としていた。何かから逃げるように駅から人々が遠ざかろうとしていた。逃げる彼らを追うのは緑色した小さな怪物だった。総称がゴブリンといわれる種族で緑色以外の肌のものも何匹もいた。
「うわあああああ」
俺はゴブリンを見つけるとゲームショップに逃げようとしたが、すでにシャッターは降りていた。
俺は他の人と同じように逃げ出した。たまたま目に付いたコンビニに逃げ込むが店内はすでに退避したのか無人だった。
トイレに逃げ込み鍵を閉めるとすぐにドアを叩かれた。扉の向こう側ではぎゃぎゃぎゃと耳障りな言葉を話すゴブリンが扉を叩いていた。
怖い
怖い
なにか
何かないのか
武器になるものは・・・
見渡すが、武器になりそうな物どころか掃除道具すらも見当たらなかった。
武器・・・そうだあれは!!
一瞬で姿をオートマンに変え、装備を選択すると一瞬で手の中に『ナイトメア』が現れた。
ゲーム内では上級者しか扱う事ができない装備条件が厳しく、しかし威力は絶大の愛銃。スキルを確認すると今まで使っていた攻撃用のアクティブスキルが載っていた。スキルを選択しようとした瞬間、扉からひときわ大きな音が響いた
今までのドンドンドンと叩く音からガシッガシッと何かで扉を切りつける音が狭い個室に響いた
「う、うあああああああああ!!!」
スキルを選択せずに銃口を扉に向け引き金を引いくと、タンタンタンと一定のリズムで銃弾は放たれ扉を簡単に貫通していった。
その瞬間、扉の向こうから何かが倒れる音がして静かになった。
恐る恐る扉を開けるとそこには豚の頭をした大きなモンスターが巨大な鉈を持ちながらも額から血を流し、いや、頭部の半分が爆発したような状態で倒れていた。ゴブリンは狭いトイレへの通路にオークを通す為にオークと入れ違いになったようで店内にはまだ3匹のゴブリンがこちらを見ていた。
咄嗟に『ナイトメア』でゴブリンに狙いをつけ引き金を引くが銃弾は目標から大きく外れレジに命中するとチーンと音がしてお金が中を舞った。
「え!、ロックとかないのか?!」
焦って声に出すと視界の中央にカーソルが現れゴブリンを捕らえれると小さな文字でROCKと出た。
ゴブリンがレジに注意が行っているうちに引き金を引くと何かの補正が掛かっているかのようにゴブリンの体に弾丸が命中した。再び近くのゴブリンをロックして引き金を引くとあっけなく命中し倒れた。
「のこりの1匹は・・・」
と見回すとゴブリンは持っていた錆だらけの剣で俺に死角から切りかかってきた。
肩に鉈が食い込むかと思われたが、俺の装甲に傷をつけることもできなかった。驚くゴブリンの頭にライフルを突きつけて引き金を引くと、ゴブリンは後頭部を破裂してその場に仰向けに倒れた。
「よし・・・これなら何とかなるか・・・いや、威力が高すぎるな・・・」
ゴブリンを貫通した銃弾はドリンク棚を貫通してペットボトル数十本をも破壊していた。
武器を射程が短く威力の低いハンドガンに変えた。
コンビニの外にはまだたくさんのゴブリンやオークが人々を襲っていた。俺は自動ドアから出ると少し離れたところにオークが女性を担いで歩いていたのを見つけた。
俺は咄嗟にそのオークに向かって駆け寄ると飛び蹴りを放った。
が、
予想以上の跳躍でオークを飛び越えその先にあった車の上に着地した。天井を凹ませた車の上から飛び降りオークに駆け寄るとハンドガンでオークの両足を打ちぬいた。
オークはピギイイイと叫び声を上げながら倒れると女性を放し両手で地面に手を付いた。そのままオークの頭に銃弾を打ち込み倒すと近くで倒れている女性を引き起こした。
「大丈夫か?」
「あ・・・え?・・・」
恐怖で震えている女性を抱き上げ近くに停車していたワンボックスカーの天井に飛び乗り女性を降ろした。
「ここで待ってて。」
俺は女性の返事を聞かずに周囲のモンスターを倒していった。あとは簡単なルーチンワークだ。攻撃されても傷つかない装甲を利用して襲ってくるモンスターを確実に仕留めていった。
ゲームの設定通りに通常攻撃は銃弾を消費しないのでリロードが無かった。
残りが片手で数えられるくらいになると遠くからパトカーのサイレンの音が聞こえてきた。
そして、最後の1匹を倒すと目の前にパトカーが止まった。
「りょ、両手を上げて銃を捨てろ!」
パトカーから聞こえてきた言葉に素直に従い、その場で両腕を上げて銃を両手から離すと地面に落ちる前に消えていった。
「なっ!!」
驚く警官の声にチャンスと見て思いっきり駆け出した。数歩駆け出すと背中と脹脛からスラスターが展開されて移動速度が一気にあがった。
そして俺を追いかけてくるパトカーを尻目に全力ジャンプで塀や民家を飛び越えたりしながら警察から逃れることが出来た。
それから数日後、無事に始業式を終えて帰宅する途中に綺麗な女性に声をかけられた。見た目で仕事が出来るOLって感じの女性。赤いメガネが良く似合っている。
「君の名前は岡田健一クンよね?君の秘密を知ってるよ?」
「ひ、秘密?」
年上の綺麗な女性から秘密という言葉でちょっとドキッとする。
「これ見て。」
見せられた写真はロボットの自分が戦っている姿とスラスターを使って移動している姿だった。
「これが君って言うのは知ってるわ。私も似たような者よ。」
「・・・それで?」
「簡単な話よ。私達に協力して欲しいの。」
「協力ですか?」
「ええ、突如現れるモンスターを簡単に倒せるほどの力をもった存在。私達はそんな人を集めてやつに対抗する組織のメンバーなの。ほら」
女性の姿が一瞬で変身した。その姿は妖艶なサキュバスだった。
「どう?理解した?」
女性は元の姿に戻った
「はい、理解できましたけど組織に入るってどうすればいいんですか?」
「私達の組織は大崎学園に拠点があるの。」
「大崎学園?あの有名な大崎学園?」
「そう、そこに編入して欲しいの?」
「転校ってことですか?」
「ええ、全ての経費はこっちで持つわ。」
「そ、そんな事言われても・・・」
「そうね、あなたの一存じゃ決められないわね。あなたのご両親がもし許可したら通ってくれる?」
俺は今のクラスが好きではなかった。イジメを受けているわけではないが、2年に進学してからのクラス変えで中学時代の片思いの女の子と同じクラスになってしまった。もちろん告白して断られたが・・・
「・・・いいですよ。両親が許可してくれたら通います。でも、僕は両親に何もいいませんよ。」
「それでいいわよ。私達は強制したいわけじゃないから。」
そういうと女性は立ち去った。
それから2週間後の日曜日の昼過ぎに俺は自室で昔かった格闘ゲームをやっていた。
「ねぇ、お父さんたちが呼んでる」
俺の部屋の扉が突然開き妹の美由紀が俺に声をかけた。
「ノックぐらいしろって言ってるだろ?」
「はいはい、急いで来てよね。」
美由紀は・・・。なんていうか、俺を兄とも思っていない。いつか見返してやる・・・。学力以外で・・・。
リビングにはいつか出合った女性が両親と対面していた。俺と美由紀もソファに座ると女性が本題を始めた。
「こんにちわ。私は大崎学園秘書の遠山です。今日は岡田健一君に大切なお話があります。」
「はぁ・・・」
「私達の大崎学園では多くの人材を発掘してきました。有名なところで言いますとサッカー選手の遠山武士がそうですね。」
「遠山って・・・」
「はい、私の弟です。他にも何人もの有名なプロを我が大崎学園は輩出してきました。寮への引越し費用から、家賃水光熱費などの経費全て学園側で負担します。どうか彼の才能を私達の手で育てさせてください。
そいいうと遠山さんは頭を下げた。
「判りました。いいでしょう。」
父さん即答かい?!
「な、なんでー?」
「実はアメリカへ長期出張になったんだ。母さんと美由紀は着いてくるがお前はどうなんだ?」
確かに妹の美由紀は英会話教室に通ってペラペラに喋れる。っていうか中学生のくせに4ヶ国語も話せるってチートじゃね?母さんも若いころに語学留学していたと聞いたことがある・・・。俺は日本語も最近では怪しいレベルだ。
「そっか・・・俺はこっちに残るよ。ていうか、選択肢無いよね?」
「お前の身元保証人には俺の弟に頼むとしよう」
叔父さんかー・・・。爺さんたちが年取ってから生まれた子だから可愛い可愛いって女の子みたいに着飾ってたらホンモノになっちゃったんだよね。何年か前に性転換したから今は叔母さん・・・かな?
「お前に何かあればアレがお前の目の前に現れるんだ。心して生活しろよ?」
「だ、大丈夫!絶対に会わないように努力する!!」
あの人って普通に筋骨隆々の見た目は漢って感じなのに豊胸手術と化粧と女装で子供が泣き出すレベルのバケモノだからなー。俺も何度も夢で魘されたよ。
この日、俺の転校が決まった