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出会いって大事だよね

そこは静かな世界だった。


あたり一面真っ白で、小さな雪がちらほらと空気を楽しむかのように降っていた。

地面はまだ人間の手に支配されておらず、雪が自然な土におおい被さっていた。

遠くに見える滑らかな山からは朝日が見え、これから美しい一日がはじまることを人々に知らせていた。

100mもいけば街があるようだが、近くには大きな木が一本しかなかった。

木にはよく見るとエナガと呼ばれるかわいらしい小鳥が二羽。

あるところではスノーバードとも呼ばれるこの鳥には雪がよく似合う。

二羽が暖をとるため、体をすりよる姿は見るものの頬をほこばらせる。

しかし、この場にその二羽を見るものはいなかった。


だが、すごい地響きとともに現れたものは、せっかくの小鳥を空の彼方へ飛ばしてしまった。


「いってぇー! まったく、あの元神って野郎、いつかまた会ったらぶん殴ってやる。」

あの地響きからは考えられないほどの軽傷で現れた大原は元神への怒りを表しながら立ち上がった。

「しっかしここはどこだ? あ、でもこの場所どっかで見たことあるな、そうだ、きっと俺は元の世界へ帰ってこれたんだ。でも元神ももっと優しい戻し方ってもんはなかったのかねぇ・・・」

そう愚痴をこぼしながら大原はあたりをみまわした。

どうやらここは街はずれの草原であるらしい。

人を飛ばすのにはうってつけの場所である。

「しかし、あの元神がいってた世界を救うったって、どうやってやるのかねえ、しかもなんか変な鍵渡されたし。まあ別に救う道理もないし、まあ、いっか。鍵は適当にもっときゃいいだろ。」

そして大原は変な鍵・・つまりキーブレインを自分のポケットにしまった。

「そういえば俺、記憶がすっげー曖昧なんだけど、これから大丈夫かねえ? まあとりあえず街に行ってみるか、なにか思い出すかもしれないし。」

大原はすぐそこに見える街を目指し歩き出した。


しばらくして大原は街にたどり着いた。

そう珍しくもない普通の街だ。しいていうなら少し大きな街だろうか。

見た感じどこかなつかしい気がするのは気のせいだろうか。

曖昧な記憶をたどりながら、大原はおそらく自分の家であろうところへたどり着いた。


あ、ここは俺の家だ。でも、なんか違う。

ちゃんと現物を見た瞬間に確信した。ここは俺の家だ。

しかし、どこか違和感を感じる。

なんなのだろう、どこが違うのだろうか。


そうして家の真ん前で仁王立ちで考えていると、

どこか幼さの残る女の子が話しかけてきた。

「ちょっと、人の家の前で仁王立ちしないでくださる? ニートで暇だからって人様の迷惑かけるんじゃないわよ」

「え、あの、ニートって決めつけ!? あ、てかお前由奈じゃねえか! お前、兄さんに向かってニートとはどういうことだ!」

「はあ? たしかにわたしはゆなだけど、わたしには兄なんていないわよ、どこで調べたのかわからないけど、さっさとどっかいってくださる?」

そして由奈は俺によくわからないリモコンのようなものを向けた。

するとリモコンから小さな青い稲妻のようなものがでてきて、俺のぎりぎり横を通り過ぎた。

青い稲妻の先には木の葉があり、青い稲妻に当たった木の葉は瞬時に黒い塊に変わった。

「げっ、お前なにやばいもん持っちゃってるの?」

「あなたカナリルも知らないの? もしかして、外国人?わからないけど、さっさと消えないとこれの餌食になるわよ?」

そういい、由奈はリモコンを見せつけるようにどや顔した。

妹にどや顔されるとは屈辱的だったが、木の葉の二の舞になるのはやばいのでしょうがなく俺は家を後にした。


どういうことだ?俺の記憶が間違ってたのか?

でも、あれは俺の家だしあいつは俺の妹の由奈だ。

でも家も由奈もなにかが違った。

由奈に関しては俺のことを忘れているというよりは俺のことをもともと知らないようだったし。

どういうことだろう。これは調べる必要があるようだ。

幸いお金は財布の中にいくつかあるから、しばらくはなんとかなりそうだ。

そんなことを考えながら歩いていたら、ふと喧嘩の声がした。

ああ、また喧嘩か。

どうやらこの街では喧嘩が多いらしい。

さっきも絡まれそうになってひやひやしていた。

だが、この騒ぎはどうやら、がたいのいい兄ちゃんが女の子に難癖つけているらしい。

お気の毒にと思いながら通り過ぎようとしたら、急に女の子が俺に話しかけてきた。


「ちょっと! そこのあなた! 助けなさいよ!」

「はあ!? なんだよ!? 俺には関係ないことだろ!? お前一人でなんとかしろよ!」

「そんなことできないわよ! お礼はするから、なんとかしなさいよ!」

「ほお? そこの兄ちゃん、こいつの知り合いか? だったらちょっと金貸してくれよ、金がなくて困ってたんだよなー」

くっ・・、俺としたことが、変なやつらに巻き込まれてしまった。

なんとかして回避しなくては・・


「いえ! 知り合いでもなんでもございません! どうぞこいつを煮るなり焼くなり好きにしてやってください!」

「ちょっ、あなた!なにわたしをこんなやつに売ってんのよ! 助けなさいよ!」

「ほお、確かにこいつは高く売れそうだしな、ちょっと連れ込むか」

そうだ、これでいいのだ。俺はなんにも悪いことはしていない。

良い行いをしたところで悪いのが返ってくるのは自分だ。

だから、これでいいんだ、これで・・


本当にそうか?


え?


「いやぁ! ちょっと、そんな汚い手で触らないでよ!」

「うへへ、ちょっと姉ちゃんあっちまでこようか」


「おい、待ちな」

「はあ?」


俺はなぜかあのがたいのいい兄ちゃんにたちむかっていた。

あれ、こんなつもりなかったのに。

「そんな薄汚れた手で嬢ちゃんを触るのはやめてくれるかな?」

「あ?てめえ、喧嘩売ってんのか?」

「これで喧嘩売ってないって思ったらお前は相当なばかだな」

「ああん? よし、その喧嘩、買ってやろうじゃねえか」

おいおい、なんでそんな相手の恨み買うようなことしてんだよ、俺。

殺されるぞ俺。自分でいうのもなんだが、俺は相当な軟弱なんだよ。

そして、俺に気が向いてる兄ちゃんはいつの間にか女の子の手を放していて、そして俺が見た時にはその女の子ははるか彼方のビルの裏で俺たちの様子を見ていた。


って、おい! 逃げるなよ! そして様子は見るんかい! そんで走るのはやっ!

「なによそ見してんだ? ずいぶんと余裕みたいだな」

「俺がよそ見してる間に襲い掛からないような軟弱なお前相手だからしてることだよ」

「てめっ・・ぶっ殺してやる!」

やべえ、これはまじでやべえ、殺される。

ああ、俺、人生終わったんだ。またあの元神に会うのかな?

だったらぶん殴ってやろう。うん、そうしよう。


「うおお!えっ、うわああ!!」


兄ちゃんは勢いよく俺に襲い掛かったと思いきや、

俺はいつのまにか兄ちゃんの後ろに移動しており、思いっきりその兄ちゃんの背中を蹴った。

え、ちょっ、どうなってんの?

「へへ、なかなかやるようだな。ならこれならどうだ?」

そういって兄ちゃんはさっき由奈がだしたリモコンのちょっとでかくなって赤くなったバージョンみたいなやつをとりだしてきた。

とりだしたとたん、野次馬で群がっていた連中が悲鳴をあげだした。

え、これ、がちでやばいやつじゃね?

「これで終わりだぁ!」

襲い掛かってきた兄ちゃんだが、表面上の俺は無表情でその兄ちゃんをかわし、木にむかって思いっきりその兄ちゃんを蹴りつけた。兄ちゃんは木にぶつかり、その反動で木が折れてしまった。

兄ちゃんはどうやら動く様子もないようだ。


あれ・・?俺、強くね?


そうやすやすと自分が強いと思うな、つめが甘いぞ。


え?お前、誰?


そういったが、もう反応はなかった。あたりを見回してもどこかに大急ぎで電話してる人や、

急いで俺から離れる人、もしくは近づいてくる人しかおらず、もうその声は聞こえなくなった。

代わりに拍手が聞こえてきたと思ったら、近づいてきた人達が話しかけてきた。


「あんちゃんすごいねえ、どっかで武術ならってるの?」

「大丈夫?怪我しなかった?」

「素晴らしかった!ぜひ俺とも戦ってほしい!」


いろんな人がいたがとりあえず対戦希望の方はやんわりとお断りしておいて、あの女の子を探すことにした。

あたりをきょろきょろしていると、すぐに見つかった。

向こうも人がたくさんいる中で俺を探していたらしく、目があったと思ったら、

すぐにこちらに向かってきた。


「あなた!さっきはありがとう!助かったわ!」

「あ・・いえ、どういたしまして」

「あなた強いのね!わたしで良ければだいたいのことはいうこと聞いてあげるわ!」

若干上から目線なのが気になるが、まあいいさ、俺は心の広い男だ。

まあ、とにかく


「じゃあおなかすいたからおすすめの店紹介してくれね?」

「わかったわ!じゃあとりあえず行きましょう!」

こうして、俺たちは運命的な出会いを果たす。



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