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急な家族

作者: 睦月

冬の寒いある日、俺に兄妹ができた。

親父が再婚して母親になる人の娘らしい。

年は同じ。俺の誕生日が10月9日。彼女が1月30日らしい。

俺の名前は高津晃。仲のいい奴は「あっきー」か「タカ」と呼ぶ。

彼女は「福田奈津美」親父と再婚したから名字は高津になっているが。


再婚なんて話は聞いたことがなかった。

いきなり親父が「晃、お前に言ってなかったが明日お前に新しい母さんと妹がくるぞ」

と言われた。

最初は「はぁ?この親父何言ってんだ?新しい母さん?妹?どうゆうこっちゃ」

そんな感じだった。

次の日奈津美と新しい母は来た。


どうでもいい話かもしれないが、親父とホントの母さんは離婚した。

親父の浮気が原因だったらしい。

母さんは俺を引き取りたかったらしいが、親父が親権を握ったらしい。

ここまですべてが「らしい」と言う口調なのにはわけがある。

俺が2歳のときに二人は離婚したからだ。

だから母さんの顔もまともに覚えていない。

思い出すのは、親父との親子とは思えないそっけないアパート暮らしぐらいだ。


だが再婚するに当たってアパートをでることになった。

新居を買ったらしい。

俺と奈津美の部屋は隣同士。

壁は俺が喋ると相手にはくぐもった声が聞こえるぐらいの薄さ。


奈津美は会った時終始下を向いていた。

奈津美は来た時、「あ、えっと、…晃君だよね…?私奈津美って言います…えっと、よ、よろしく」ペコ

こんな感じ。ずっとオドオドしてて、俺にはそんなに合わないタイプだった。

対して俺は、「あ~うん、俺は晃。よろしく。それとあとで話あっから俺の部屋きて。」

部屋に来いと言ったのはいかがわしいことをするためじゃない。

それぐらいは言わなくても大丈夫だろう。

「俺とお前は戸籍上では兄妹だ。でも学校とかでは話しかけんな。俺とお前はただ俺んちに居候としてきたただの中学2年生としてふるまえ。いいな?」

こんなことを言うためである。

奈津美はちょっと悲しそうな顔で「うん、わかった。エヘヘ私みたいなのと兄妹じゃいやだよねー」

と悲しく笑いながら言ったのだ。

その時俺はまだ自分がいったことが奈津美を傷つかせたかわかっていなかった。


奈津美が転校生として学校に来た日

奈津美は俺と同じクラスだった。

「お前ら!!今日は転入生が来るぞ~男、女どっちだと思う??」

「男だろ!」「いや、こう美人なお人じゃなーい?」「いや普通に男だろ」

「うんうん、よし、期待はそれくらいにして発表するぞー!入ってこーい転入生!!」

奈津美はオドオドしながら教室に入ってきた

「えっと、ふく、じゃなかった。高津奈津美です。えっと、そのよろしくお願いします」ペコリ

「晃~お前、この子居候なんだって?じゃあこの子にこの学校のことあんないしてやってくれ。ということで、奈津美ちゃん、君の席は晃の横ね?」

「はぁ~!?ちょっと、先生!そりゃねえっすよ~」

「いいからいいから。ほら奈津美ちゃん行った行った!」

「えっと。よろしくね、晃君」

俺は何も返さなかった。

昼休み、俺たちの学校は購買で飯を買うか、食堂か、お弁当になっている。

俺はいつも購買だ。仲のいい友達と一緒に購買で選ぶのだが、その日は

「晃君、その私の分のお弁当作ってて、えっと。あの、ついでで作ったんだけど…食べる?」

「はぁ!!?いらねえよ!勝手なことしてくれてんじゃねえよ!!」

俺はこう返した。奈津美の手にはついでで作ったようには見えない大きさのお弁当箱を持っていた。

俺が部活をして食費がかさんでいることを親父にでも聞いたのだろうか。

でもそんなことはどうでもよかった。

「何々?あっきーいいの?奈津美ちゃんお前のためにお弁当作ってきてくれてるぜ?しかも大食漢のお前に合わせて大きなお弁当箱で?」ニヤニヤ

「るせー佐藤。俺とあいつはなんでもねえよ。だまって購買行こうぜ」

その日俺は屋上で飯を食った。いつもは教室なのだが、教室にいるとあいつがいて息苦しかったからだ。


その日、部活も終わって帰ったらカギがかかってなかった。

誰かいるのかと思い、「ただいまー親父ーいるのー?」

と呼んだ。

しかし、声は帰ってこなかった。

どうせいつものように昼寝をしてカギはあけっぱ。こんなとこだろう。

そう思い部活での汗を流すため、脱衣所に行った。

するとそこには、奈津美がいた。

素っ裸で、タオル一枚もって風呂場に入ろうとしていた。

「…………」

「寒いよ…」

と、奈津美は恥ずかしがるわけでもなく、悲鳴を上げるでもなく、か弱く小さな声でオドオドと言った。

俺はあわててドアを閉めた。

たまらなくウザかった。

オドオドしてたら誰でもかんでも助けてくれるわけじゃねえぞ!って言ってやりたかった。

ふとそんなことを思いながら脱衣所に部活で汚れた服を出していると、

「ごめんね、お父さんとお母さん、今日から月曜まで旅行だって聞いて、一番に帰ってきたからお風呂入ろうとして、そのごめんね」

という声が風呂から返ってきた

(なんで謝るんだよ、てめえが謝ってすむもんでもなんでもねえだろうが)

そう思った。

部屋に帰ると、俺の部屋の中に俺の服が畳まれて置いてあった。

「あ、お風呂あがったから、晃君次入ったら?」

「おい!てめえ!何勝手に人の部屋入ってんだ!!?」

「えっと、そのごめんなさい。服畳んでそれで扉の前に置くと崩れちゃうかなって思って中に入ったの。…ごめんなさい!!」

「ち、ああもう!これからは俺の部屋に入ってくんな!!いいな?」

俺は妙にいら立っていた。

俺は几帳面じゃない。だから部屋は汚れていた。

自分で言うのもなんだが、性格は明るいほうだった。だからいつも友達といた。

俺に無駄な気遣いを送るあたり、あいつは几帳面なのだろう。

言うまでもないが性格は真逆。


俺と奈津美はその日から3日間二人きりだった。

一緒の空間にいるのが嫌で、コンビニに行こうとした。

するとリビングに奈津美がいた

「あ、晃君どっかいくの?」

「コンビニだよ、あと俺に気安く話しかけんな」

「ごめん…」

(ああもう!その顔が見たくねえんだよ!このやろ!!)

コンビニに行こうとしたその途中雨が降ってきた。

しかも財布は家だった。

(ちくしょう一回家帰っか)

家に帰ると玄関でタオルを持ってオドオドする奈津美がいた

「あ、晃君。大丈夫?濡れなかった?寒いと思ってお風呂たきなおしたけど入る?」

「うっせえまたコンビニいくからそのあとでイイ。」

俺はタオルを奪うように受け取り、部屋にあがり財布を取った。

その時窓を見ると、あけていたはずの窓がしまっていた。

「おい!てめえ!何度いわせりゃ気が済むんだよ!!?部屋には入るなって言ったろうが!!」

「ひっ!で、でもお部屋、濡れちゃうから…閉めようと思って…ごめんなさい」

(謝るぐらいならすんな!アホが!)

「あーもういいよ!風呂入る。コンビニは行く気なくなった。」

俺はイライラしながら風呂に入った。

いや、イライラしていたのはフリだった。

わざとイライラして、奈津美を自分から遠ざけているようだった。


風呂に入ると今日一日のことがバーッとよみがえってきた。

奈津美にあったこと、学校で席が隣になったこと、ついでとは思えない大きさのお弁当箱を持っていた奈津美のこと、裸の奈津美、俺に怒鳴られた時の奈津美、タオルをもった奈津美、イライラして風呂にはいる俺をかなしい目で見ていた奈津美。いろいろなことが思い出された。

しかし、そこで思考は途切れた。

停電。


(ああ!!?停電かよ!?人が風呂入ってるときにだるいことしてくれたな、おい。)

俺はとりあえず風呂から出て、ブレーカーを見に行くことにした。

しかし、初めて来たばっかりの家。なにぶん勝手がわからず、一階をうろうろしていた。

(この階じゃなくてニ階か?それか家の外か?…とりあえずニ階に行こう)

俺はそう思いニ階にあがった。

すると、ニ階のベランダのとこのドアのとこで物音がした。奈津美が干したばかりの洗濯物を中に取り込もうとしているらしかった。

「おい、そこにいんのか?」

「ひっ!!?あ、晃君…?うん、そうなんだけど開かないの…」

「ちょっと待ってろ今あけてや…うわぁ!!」

いきなりドアが開いた。

俺と奈津美は抱き合う格好になった。

「うわぁ!!ご、ごめん!!…大丈夫?」

「ああ、大丈夫だ。って洗濯物取り込んでたのか?」

「うん、晃君にタオルわたしたとこで気づいてさ…ぅぅぅぅうう…」

「え、ちょ、おい大丈夫か??」

「うん、大丈夫。ちょっと怖くってさ…もうちょっとこのままでいい?」

(えーちょい、待て待て。さっきいらついてた振りしてた相手に抱きつかれるってどういう状況!!?)

とりあえず、俺は奈津美にタオルを渡した。

しばらくして電気は回復した。その時俺たちは二人の姿があまりにも接近していることに気づき急いではなれた。

そして、俺は謝った。

「ごめん、奈津美。部屋に入られたり、弁当学校に持ってきたぐらいであんなに怒って…女と一緒に生活するのって初めてだったから、ちょっときつく当たりすぎた。ごめん。」

「………うん。でも、私、晃君が来てくれてよかった。独りで不安で不安でしょうがなかったから。…」

「ただの停電で騒ぎ過ぎだよね。私」

(あ、俺のことじゃないんだ…)


俺はいろいろなことを停電して奈津美に会うまで考えていた。奈津美は俺とちがう。そう思っていた。オドオドして、几帳面で、優しくて、THE女みたいな感じだなって思ってた。そしてその反面、奈津美は俺と似ていると思った。初めての相手でどうすればいいのかわからない。それも異性。自分の部屋に入られて必要以上にあたったのは、自分の部屋と他人の部屋を見比べてくなかったから。不安で、怖くて、嫌われたくない。そう思っていたのだと思う。いや、そうだったのだろう。彼女は初めて会ったときから、俺のことを気遣ってくれていたからだ。


「じゃあ俺は風呂も入ったし、寝る。おやすみ」

「あ、おやすみ」


次の日


俺は土曜ということもあり9時に目が覚めた。

リビングには奈津美がいた。

「あ、おはよー。今日は晴れてるよ。」

「おはよ…」

奈津美は俺が育てている金魚にえさをやっていた。そしてずっと微笑んでいた。

「奈津美」

「え。なに…??」

「餌やりすぎ」

「ふぇ!!?ごめんなさい…」

「いいよ、それぐらい。たまにはそいつらも食ったほうがイイだろ。」


俺はリビングで麦茶を飲み、日課のジョギングに出ようとした。

「晃君…その…出かけるの?お昼いるんだったら何か作るけど…えっとその…」

「ジョギングだよ。あと昼飯は…俺が作ってやるよ」

奈津美は驚いていた。そんなのお構いなしに俺はジョギングを始めた。コースは今日から決めるから、いろいろと回らねばならない。その時間もあってか帰るのは11時過ぎだった。

「おかえり。ハイ、タオル。」

「あ、ありがと」

「んじゃ俺飯作るわ。つっても炒飯と焼きそば。あとギリ、ハンバーグってとこだけど。…今日は材料もそんなになかったと思うから炒飯でいいか?」

「うん、ご飯はたいてるから…」

「ありがと。じゃあお前は俺が作るまで待ってろよ。」


(つっても俺の炒飯を女の子に食わしていいものなのかな?…まぁあいつがいいって言ったからな…)

「晃君…そのケータイだと思うけど。鳴ってるよ?」

(ケータイ?確か机の上か…)「ああ…」

「奈津美、悪い取ってきて。」

「え?」

「今炒飯作ってて暇ないから取ってきて!机の上!」


初めて一緒になる人と生活すること。その人に嫌われるかもしれないこと。それはどっちか片方が感じることなんじゃないこと。いつもの日常が変わることは怖いことだけじゃないこと。

それを奈津美から俺は教えてもらった気がした。

炒飯を奈津美はおいしいと言ってくれた。ほっぺたにご飯粒をつけながら。

金魚見ながら花見てたな。今度花屋でも誘おうか。

これからは購買じゃなくて弁当にしてもらおうかな。あいつの作る飯おいしそうだし。

そう言えば、ぼちぼちあいつの誕生日だ。何かプレゼントしようか。なにがいいだろう?

断られたらどうしよう?

でも大丈夫だろう。

奈津美なら大丈夫な気がした。


「晃君…何ブツブツ言ってるの?…」

「あ~なんでもないよ。それとさ」

「………?」

「俺はあっきーでいいよ」


奈津美とは仲良くなれる気がした。


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