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04 慣れる
時間が決まっている。
起きる時間、入る時間、並ぶ時間、動く時間。
全部、同じ。
ミナの身体はもう迷わない。
通路も、控室も、機体の感触も、初日ほど異物ではなくなっていた。
モニターの文字を見る。
今度は隠さない。読む。
>白、慣れてきた
>赤と並んでも違和感ない
>青安定してる
>紫やっぱいい
>誰でもいいけど
「もう気にしてないでしょ」
赤が言う。前を向いたまま。
「……はい」
自然に出る。嘘ではない。
赤は頷いた。
「その方が楽だからね」
控室で、紫はいつも鏡を見ていた。
鏡の中の顔を、確認するように。
ミナは少しだけ見る。
違和感は、もう、あった気がするだけになっていた。
>紫ほんと完成されてる
>白も悪くない
>赤は別格
>青地味すぎ
>黄かわいい
「今日、このクールの初日だっけ」
黄が言う。
「そう。まあ、いつもと同じだけど」
青が答える。
初日。特別なはずの言葉が、何も特別じゃない日常の中に埋もれていく。
「変わらない方がいいよ」
赤が小さく言う。
ミナは頷く。
もう、疑わない。
機体に触れる。
冷たい。
でも、止まらない。
中に入る。
“普通”という言葉が浮かぶ。
>白いい感じ
>もう誰でもいいなこれ
>違い分かんない
>全部同じでしょ
その言葉に、もう正面から反発しない。
その方が、楽だから。




