表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/36

26 ノーウェイバック

舞台袖に赤が入ってくる。


歩みは変わらない。


一定の速さで、迷いもなく、

まっすぐ奥へ向かう。


いつもと同じ動き。

同じ軌道。


それでも、どこか違う。


わずかに速い。

わずかに重い。


止まらないことだけが、はっきりと分かる。


ミナは動かない。

その背中を見る。


呼び止める理由は思いつく。

言葉も、いくつか浮かぶ。

けれど、どれも届かない気がする。


赤は止まらない。

奥へ行く。線の先。


しゃがむ。

手を伸ばす。

接続する。


音が鳴る。

低く、長い。


今までよりも明確に、

何かが流れていると分かる音。


ミナは目を逸らさない。

見ている。


指先が動く。

選ぶ。押す。送る。


その動きは正確で、

迷いが一切ない。


一つひとつが、

すでに決まっていた手順みたいに進む。


ミナは理解する。


これは試しではない。

やるかどうかを考えている動きではない。


すでに、決めた後の動きだ。


送っている。


どこへか。

誰かへか。

何をか。


分からない。

けれど、それは“外”に向かっている。


音が続く。

時間が伸びる。


戻らないことだけが、

はっきりしていく。


やがて、音が止まる。


赤は手を離す。


何も変わらない動作で立ち上がる。

振り返る。


ミナを見る。

一瞬だけ。


その視線には、

説明も、迷いも、残っていない。

ただ、終わったという事実だけがある。


「……もう戻らない」


静かに言う。

断定だった。


選択の結果ではない。


最初から、そこに至ると決まっていたみたいに。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ