Last ep 振り向けば・・・
あれから数年後……
今日は、元教皇の間だった場所に皆が集まる日だ。
「フム、またいざこざか。まったくこんな日まで……国王というのも楽じゃないな」
玉座に腰かけたまま片手で頬杖をつくロウの隣で、アンリは隣に腰かけて楽しそうに笑っている。
「とーぜんニャっ♪ 全く文化の違う者同士が、一緒に暮らすようになったんじゃからの」
「ハァッ……アンリ、それは分かってるけど、僕よりも先生の方が上手くやれるよ。この『トゥーラ・ミレニアム』の王としてさ」
「ニッハー♪ それは違うぞロウよ」
アンリはロウに振り向き、分かってないなという顔を浮かべて軽く微笑んだ。
「アルカナートは確かに能力はズバ抜けておるが、性格がまるで向いておらんニャ♪」
アンリがニパッと笑うと、セイラがそれを軽く見上げながらニコッと微笑んできた。
立てた人差し指を左右に揺らしながら、ウインクしている。
「さっすが分かってるわね〜〜〜〜♪ アンリ女王様っ♪」
「ニャニャッ♪ セイラよ、お主もそう思うか」
「そりゃそーよ。あーーーんな自由人、ロウやアンリと違って国王ってガラじゃないもん♪」
「ニャッハー。もったいないがのう〜〜」
猫口をしているアンリの側で、ロウはセイラをチラッと見つめた。
アルカナートは、ここに来ていないからだ。
もちろん招待状は送っていたにも関わらず。
「そういえば、先生は今どこへ……」
「さあ? 一ヶ月前にフラッと出ていったきり、ウチにも顔を出さないし」
「フム……まぁ、先生なら問題無いとは思うが……」
ロウが頬杖をついたまま軽くため息を零すと、アネーシャが入口からスッと入ってきた。
黒い靴に赤い袴で、上はピンクの着物を着ている。
また、舞い散る桜の刺繍が施されいるのがアネーシャらしくて素敵だ。
「彼なら、さっき外で会ったわ」
「えっ?」
「ニャッ?」
ロウとアンリが軽く身を乗り出すと、アネーシャは軽く呆れたようにため息を吐いた。
「『群れるのはメンドクセェ』って、言ってたわ」
「先生っ……」
「ニャハハッ♪ らしいのうっ」
アンリがケタケタ笑ってる側で、セイラはムカーっとした顔をして拳を握りしめている。
今日はさすがに来るだろうと思ってたし、久々に会いたかったからだ。
「もーーーーーーーーーーーーっ、なんなのアルカナートは! 今日がどんな日か分かってるくせにーーーーーー!」
プンスカしているセイラを、アネーシャは静かに見つめている。
「それと……セイラに言ってたわ」
「えっ? なんて?!」
「近々帰るから、コスモティーを淹れておけと」
「はあっ?!」
セイラは思いっきり訳が分からないという顔で声を上げると、ハアッ……!! と、大きなため息を吐いた。
「まっ……アルカナートの身勝手は、今に始まった事じゃないし。まったく、しょーがないな〜〜〜」
両手を腰に当て困った風に軽く目を閉じているが、セイラは内心嬉しそうだ。
とりあえず、また帰ってくる事に安心した気持ちが体から滲み出ている。
それを皆が軽く微笑みながら見つめていると、入口のすぐ外からレイの怒る声が聞こえてきた。
「ホント、何考えてんのよ!」
「いや、悪かったってレイ」
ジークはレイに詰め寄られ、ジリジリ下がりながら背中から入ってきたのだ。
レイは真っ赤な高級ドレスを纏った姿で、タキシード姿のジークをキツく見上げている。
「大事な日なのに前日に酔いつぶれるなんて、ありえない! 美しくないわっ!」
「だ、だから謝ってんだろっ」
「誰に?」
「そ、そりゃレイ。お前さんにだよ」
「もう一人謝ってよ」
「へっ? も、もう一人って……」
謎めいた顔をしているジークの前で、レイは軽く火照った顔で斜め下を向いている。
それを見たジークは直感した。
「ま、まさかお前さんっ!」
「だから言ってるのよ。ちゃんとしてって……パパになるんだから」
「マ、マ、マジかよっ! うぉーーーーーーーーーーーーーーーーっ!! レイ! 最高だぜーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」
ジークはメチャクチャ嬉しい顔で両腕をグッと曲げ、全身から喜びを迸らせている。
レイとの間に自分の子が出来たのが、嬉しくてたまらないから。
その姿を華美な眼差しで見つめながら、レイは嬉しそうに微笑んだ。
「フフッ♪ 浮気なんてしたら、悪夢をみせるから」
「バ、バッキャロ! する訳ねーだろっ!」
「そうっ……まっ、一応信じてあげるわ♪ その方が美しいから」
レイはジークを艶っぽく見つめている。
その華美な色気は前にも増して美しい。
この数年で、レイとジークは色々あって結婚した。
もちろん、色々あったのは他の皆も同じだ。
ノーティスがクルフォスと共に闇のゲートに消えたあの日から……
それを振り返るかのように、ジークは少ししんみりとしながら片手で頭をかいた。
「あ〜〜ったく、アイツにも教えてやりたかったぜ……」
「そうね……」
それまで騒がしかった皆は急に静かになり、軽く視線を斜め下に落としている。
今日は新しい国の建国記念日と共に、その身を犠牲にして皆を救ったノーティスの命日なのだ。
そんな皆の下に、メティアがひょこっと入口から入ってきた。
「ルミさん、まだ時間大丈夫だよ♪」
メティアも今日はドレスを着ている。
胸の上には白い薔薇が刺してある、可愛らしい黄色いドレスだ。
その姿のまま、メティアは周りをキョロキョロ見渡した。
「あれ? ルミさんはーーー?」
メティアはそう尋ねながらキョトンとしている。
「おっかしいな〜〜〜エレナとエミリオから、こっちにいるって聞いたんだけど……」
謎めいた顔を浮かべたメティアの後から、エレナとエミリオの声が聞こえてきた。
「だからエミリオ、まだ間に合うって!」
「うるさいっ、遅れたら姉さんに恥をかかせるだろ」
「お姉さんか……今はもうジークの奥様だけどね。ニヒヒッ♪」
「や、やめろーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
両手で頭を抱えるエミリオを、エレナは軽く片手を口に当てニヤニヤしながら見つめている。
メティアはそんな二人に振り返り、軽く苦笑いを浮かべた。
どちらも性格に難アリだなぁ、と思っている。
「ハハッ……もう、エレナも意地悪な事言っちゃダメだよ」
「エヘッ♪ だってエミリオ面白いんだもんっ。レイ様の事になると、すーぐムキになるから♪」
エミリオはピクピクッ……と、額に怒りを浮かべ思いっきり身を乗り出した。
「エレナ、お前ーーーーーーーーーーーーっ!」
エミリオは髪をボサボサにさせて怒っている。
さっきのは、最も触れてほしくない話だったからだ。
けれどメティアの後からレイが現れると、エミリオはピタッと動きを止めた。
軽く震えながらレイを見つめている。
「ね、姉さんっ……!」
「エミリオ、まったく何やってるのよ」
「だって、エレナが……」
そこまで言った時、レイはエミリオをサッと抱きしめた。
「エミリオ、ちゃんとしなきゃダメよ。アナタはお義兄さんになるんだから……!」
「うっ……! い、イヤだよ。僕は姉さんの弟だ……!」
意地をこねるエミリオに、レイは華美な瞳に光を揺らめかせ優しく囁く。
「当たり前でしょ。エミリオ、アナタは私の愛するたった一人の弟なんだから」
「うううっっ、姉さんっ……」
「だから、ちゃんとして。分かった?」
「う、うんっ! 僕ちゃんとするよ!」
「フフッ♪ やっぱりアナタは美しいわ」
レイはそう告げるとエミリオからスッと離れ、メティアを見つめた。
少し謎めいた顔を浮かべている。
「でも、どういう事なの?」
するとエレナが、横からちょっと顔を火照らせながらレイを見つめてきた。
「なんか、お姉ちゃん急に走っていったから」
「そうなんだよ姉さん。ルミの奴、何か一瞬体が黄色く光った途端、急に走り出してさ」
「そーなんですよレイ様。だから買い物から帰ってきたメティアさんに、お姉ちゃん先に行ったよって言ったんだけど……」
エレナもエミリオもまだ色々と話しているが、レイもメティアも二人の話はもう耳に入っていない。
目を見開きしばらく固まっていたが、レイとメティアは見つめ合ったまま瞳で頷いた。
震えるような想いが二人の胸を駆け巡る。
二人が思った事は同じだ。
なので、レイもメティアも入口から飛び込むように入りロウ達を見つめた。
その瞳を、かつてない光で煌めかせている。
「早くっ! 行くわよっ!!」
「ううっっ……! み、みんなっ……!!」
◆◆◆
その頃、ルミは晴れた空の下をタッタッタッタッ……! と、全力で走っていた。
その姿を街の人達は軽くチラチラ見ている。
ルミが可愛いからだけではない。
その瞳から、後ろに涙を流しながら走っているからだ。
「ハアッ……! ハアッ……! ハアッ……!」
ルミは息を切らしながら走っていた。
こんなに走った事がないというぐらい全力でだ。
そして大きな川の近くまで辿り着き、両手を膝に当てて前かがみの姿勢で息を切らしている。
しばらくして息を落ち着かせて体を起こすと、川沿いに立ち並ぶ桜の景色が目に飛び込んできた。
「わあっ……! 綺麗っ!」
川沿いに立ち並ぶ桜の木はみんな満開で、はらはらと舞い散る花びらが優しく儚げな美しさを漂わせている。
トゥーラ・レヴォルトとスマート・ミレニアムが、共に暮らしていくとなった時に植えられた桜だ。
『トゥーラ・ミレニアム』として永遠の友好の誓い。
その光景を、ルミは心を愛で満たされながら見つめていた。
けれど、その静かで幸せな時間を邪魔するかの様に無粋な輩達が絡んできた。
「おい、姉ちゃん可愛いじゃねぇか」
「花なんか見てねぇで、俺らと遊ぼうぜ」
「そーそー、ちょっとこっちこいよ」
男の内の一人が卑らしい顔でルミの腕を掴むと、ルミはそれをバッと振り払ってキッと睨んだ。
「何をするんですかっ! やめてくださいっ!」
けれど、男達は怯まない。
むしろ抵抗してきたルミを、より下卑た顔でニヤニヤしながら見つめてきた。
「へへヘっ……可愛いじゃねぇか」
「ちょっと気が強いとこ、そそるぜ」
「まっ、ホントは弱そうだけどな。ハハッ!」
男達は舐め回す様にルミを見ながら、ぬ〜〜〜っと、手を伸ばそうとしてゆく。
が、その瞬間、彼らは全身にとてつもなくゾクッと悪寒を感じその場にドシャッと両膝をついた。
「ああっ……!」
「がはっ……!」
「うごっ……!」
あまりにもリアルにゾクッと感じたからだ。
まるで巨大な刃で、一気に全身を真っ二つにされたような死の感覚を。
だが斬られたハズなのに、体からは一滴の血も流れていない。
その事が彼らの心に、より不可思議な恐怖を沸き立たせてゆく。
彼らは全身にダクダクと汗をかいて、震えながら自分の両手を見つめるのみ。
そんな時、彼らの後から精悍な声が聞こえてきた。
「お前達、危なかったな。後少しルミに手を伸ばしてたら、さっき感じた通りになっていたぞ」
男達はその声の方を振り向いた瞬間、よりガタガタと震えだした。
嫌でも分かってしまったからだ。
目の前にいる男には、自分らが束になってもどころか、千人がかりでかかっていっても相手にすらならない事を。
「あ……あっ……」
「うっ……あ……」
「ひ、ひいーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
一人の男が悲鳴を上げた瞬間、他の二人もとてつもない勢いでその場から逃げ出した。
けれどルミはその場から動かず、瞳に涙をブルブル浮かべて見つめている。
「うっ、うううっっっっっ……ノ、ノーティス様……」
「やっ♪ ルミ、久しぶり。いや、クルフォス倒した後に異空間に巻き込まれちゃってさ。まぁ、これぐらいは余裕かな〜って思ったんだけど、ちょっと遅く……」
すまなそうにノーティスが片手で頭をかいた瞬間、ルミは飛びつくように抱きついた。
「ノーティスさまーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」
ルミは嬉し涙を迸らせながら、壊れそうなぐらい強く強く、どこまでもギュウッと抱きしめている。
心から愛しく大好きなノーティスを抱き合えて、心がおかしくなりそうな程嬉しくてたまらない。
「ノーティス様!!! ノーティス様!!! ああっ!!! ノーティス様!!! ずっとずっと、もう、二度と会えないかと……会いたかったんです……会いたかったです!!!!!」
ルミの溢れ出て止まらない愛を全身で、いや、魂その物で感じ受け止めたノーティスは優しく笑みを浮かべてルミをギュッと抱きしめた。
「ただいま、ルミ……!」
「うううっっっっ、おかえりなさい、ノーティス様……!」
二人はずっと抱きしめ合っている。
永遠に壊れる事のない愛と共に。
そして、ノーティスは抱きしめた後に少しだけ体を離すと、ルミを涙の乾かぬ瞳で見つめた。
「けどルミ、どうして今日ここに帰ってくる事が分かったんだ?」
「それは……」
ルミはさっき体が光った時の事を思い出していた。
女神から、たった今ようやくノーティスを異空間から救い出し元の世界に戻したというお告げを。
その事をノーティスに言おうとしたが、ルミは咄嗟にそれを飲み込んだ。
心の中で女神に感謝とごめんなさいをしながら。
「ノーティス様、当たり前じゃないですか♪」
「えっ、当たり前?」
ノーティスは少し謎めいた顔を浮かべた。
ルミはそれを嬉しそうに見つめている。
そして、桜の花びらがヒラヒラと舞い散る中でニコッと微笑んだ。
「私は、ノーティス様の執事ですからっ♪」
ここまで読んで下さって、ありがとうございました!
なろうっぽくない話だったと思います。
最初から分かっててここまで書き切りました。
この物語で伝えたかったのは、分かる人には分かる陰謀の話。
ただ、それと同時に……いや、書いてる内にそれ以上、命を燃やして生きる素晴らしさ。
それを伝えたくて書きました。
自分は鬼滅の刃に代表されるJUMP系のマンガが好きです。
今流行りの異世界転生は『生きる場所』を変え、チートなどの『特殊能力を貰って』活躍する。
けどJUMP系は『自分』を高めて、秘めた力を『覚醒させて』活躍するからです。
特にその中でも『聖闘士星矢』は大好きで、大人になった今も心の中に生きて力になってます。
作中にも、ちょくちょく入れちゃったぐらいです。
自分のこの作品『呪宝戦記』では、現地主人公の『エデン・ノーティス』とヒロインの『アステリア・ルミ』を中心に物語が繰り広げられました。
もちろん、他のキャラも最大限に活躍して、みんなに思い入れがあります。
この物語を気に入ってくれたアナタの心の中にも、ノーティス達が生きてくれたら嬉しいです。
魔力クリスタルは心の力で、どこまでも強く鮮やかに輝きます。
アナタの魔力クリスタルも、辛い時や大変な時にこそ、光り輝く事を祈ってます。
ありがとうございました!




