表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブレイキング・クリスタル ─光と闇の呪宝戦記─  作者: ジュン・ガリアーノ
cys:6 最終決戦! 教皇の間で激突する光と闇
69/71

ep:69 死して生きる場所

「なっ?!」


 ノーティス達はクルフォスを見据えたまま、思わずザッと後ろへ飛び退いた。

 クルフォスから突然強大な闇の魔力が立ち昇ってきたからだ。

 それと共に立ち上がったクルフォスからは、絶大な闇の力が放たれている。

 つい先程まで瀕死だったとは思えない。


「クククッ……! あの五大悪魔王(あのお方達)からの力が余に注がれたのだ」


 復活したクルフォスはニヤリと邪悪な笑みを浮かべた。

 先程アルカナートが与えたダメージも、綺麗に回復してしまっている。

 それを前に、アルカナートは苛立ちを滾らせた。


「クルフォス! テメェ!!」


 アルカナートが怒声を上げ身を乗り出した瞬間、クルフォスはザッと両手を上に掲げた。

 同時に、頭上からかなり高い場所に大きな闇のゲートを作り出してゆく。

 闇のゲートは教皇の間の天井で大きく広がり、全ての邪悪を生み出すような黒紫色に煌めていている。

 そしてそこから、数多の黒紫色の光線がノーティス達に向けてズドドドドドッ! と、勢いよく放たれた。

 黒紫色の光線がまるで雨のように降り注ぎ、多くの爆風が吹き荒れる。

 それを皆なんとか躱したが、皆バラバラの位置に散ってしまった。

 また、その中でノーティスだけ背中に深手を負っている。


「くっ……!」


 光線を避ける際にルミを抱きかかえたので、反応が一瞬遅れてしまったのだ。

 致命傷は避けたがかなりのダメージには違いない。

 白いジャケットの背中が破れ、焼け焦げた所から煙が立ち上っている。

 その傷を前にしたルミは悲壮な顔に涙を滲ませた。


「ノーティス様っ!!」

「だ、大丈夫だルミ。これぐらい……!」


 だがクルフォスはその隙を見逃さない。

 片手に滾らせた闇の光を槍方の形に変えて、ノーティスを見据えたまま腕を大きく後ろに引いた。

 この隙を突き、ノーティスを闇の槍で刺し殺すつもりだ。

 それを察知したルミは両手を横にバッと広げて、涙の滲む瞳でクルフォスに立ちふさがった。


「ノーティス様を殺させません!」


 しかし、これはクルフォスにとって好都合に過ぎない。

 普段は皆に守られているルミを亡き者にする絶好のチャンスだからだ。

 また、ノーティスとルミはクルフォスの一番近い位置にいる上に、立ち昇っている数多の砂塵により他の皆からは二人の位置を正確に把握できない。

 それを瞬時に悟ったクルフォスは、ニヤリと邪悪な笑みを浮かべて闇の槍を投げつけた。


「ならば光の巫女、オマエから消え去るがいい!」


 凄まじいエネルギーを放つ闇の槍が、ルミに向かって襲い掛かる。

 これを喰らったらひとたまりも無いだろう。

 けれど、ルミは退かずに横に腕を伸ばしたままギュッと目を瞑った。

 ノーティスはルミの背中を見て咄嗟に前に出ようとしたが、背中の大ダメージにより一瞬動きを止めてしまう。


「ぐっ! ルミっ!!」


 その刹那にも闇の槍がルミに迫る。

 だが、その槍はルミに刺さる事はなかった。

 その槍を代わりに受けた者がいるからだ。

 ドガアッ! と、いう衝撃音と共にルミが目を開くと瞳に漆黒の鎧を着た背中が映る。

 それが誰なのかをルミはすぐに分かった。


「ク、クリザリッドさん!」


 悲壮な声を上げたルミにクリザリッドは振り返る事ない。

 激痛に顔をしかめたまま、胸に刺さった闇の槍を両手で掴んでいる。


「ぐっ……ハアッ……ハアッ……!」


 闇の槍はクリザリッドの胸を貫通し、もう助からないのは明白だ。

 槍の刺さった胸からは血がボトボトと流れ落ちている。

 けれどクリザリッドは決してうずくまらず、息を切らしながらクルフォスを見据えたままだ。


「クルフォスよ、もう、誰も……殺させぬ……!」


 それを目の当たりにしたクルフォスは一瞬目を大きく見開き、クリザリッドをギロリと睨みつけた。

 その眼差しは怒りと蔑みに満ちている。


「クリザリッドよ、まさか余に楯突くとはな……貴様が持つ願いはもう、叶う事はなくなるのだぞ」 

「承知の……上さ!」

「ほう、ナターシャを復活させる事を諦めるのか」


 これは、五大悪魔王がクルフォスを通じてクリザリッドと交わした密約だ。

 クリザリッドは五大魔王達が野望を成就した暁には、ナターシャの復活を約束されていた。

 もちろん、死者を甦らすのは文字通り悪魔の技。

 クリザリッドは、その為に闇の力と盟約を結んだのだ。

 当然これは魔道に堕ちる事に他ならない。

 だが、クリザリッドは今日までそれを後悔していなかった。

 アルカナートへの復讐も兼ね、自身が闇に堕ちる事などどうでもよかったからだ。

 でも今は違う。


「し、死者を復活させようとした事など、初めから間違っていたのだ……」


 クリザリッドは息を切らしながら言葉を続ける。


「死した後……生きる者の中にのみ、人は存在し続ける……だからこそ人は、愛が必要なのだ……!」


 そう言い放ったクリザリッドの背中を、ルミは先程までとは別の涙で滲ませていた。

 クリザリッドの切ない愛に涙が込み上げてきてしまう。


「ううっ……! ク、クリザリッドさん!」


 またそれはノーティスも同じだ。

 先程まであんなに憎み倒したかった相手なのに、今は心から死んでほしくないと願っている。


「クリザリッド……!」


 けれどもう、クリザリッドは助からない。

 クリザリッド自身もそれは分かっていた。

 なので、前を向いたままノーティスとルミに告げる。


「エデン・ノーティス、お前と戦えて……嬉しく思うぞ……そして光の巫女よ、コイツを頼んだぞ」


 そう告げたクリザリッドは、砂塵の晴れゆく中アルカナートを流し目で見つめた。

 クリザリッドの瞳にアルカナートの姿が映る。

 そしてアルカナートと目が合うと、ニッと笑みを浮かべた。


───すまなかったな、アルカナート。またいつか、四人で紅茶を……!


 心でそう伝えると、クリザリッドはそのまま前にドシャッと倒れ込んだ。 

 永遠に閉じたクリザリッドの目から零れ落ちる涙が、頬を横に伝っている。

 アルカナートはそれをクールに見つめたままゆっくり近づくと、背中のマントを取りバサッとクリザリッドに被せた。

 決して取り乱しはしないない。

 だが、拳をギュッと強く握りしめている。

 死の間際ではあったが、クリザリッドが魔道から抜け愛を持った事を充分に感じていたからだ。


───クリザリッド……お前の心、この俺が刻んでおいてやる……!


 アルカナートの姿を見つめるノーティスの間に、悲しみの静寂が広がってゆく。

 その静寂を破ったのは、皮肉にもクリザリッドを刺し殺したクルフォスだ。


「クククッ……クリザリッドめ。哀れな男よ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ノーティスが、皆を守る為に犠牲になったのは 全然思っていなかった展開だったので良かったです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ