ep:66 ルミの覚醒とアルカナートの目醒め
「ノーティス様ーーーーーーーーーーーーーっ!!」
ルミは両手をノーティス達の方へ向けて、エネルギー波を放出している。
そのエネルギー波はただ強いだけでなく、優しく神々しい。
これまで見た事がない種類の、不思議なエネルギー波だ。
そのエネルギー波は、ルミ自身をも照しながらノーティス達に激しく流れ込んでいく。
「ハアアアアアアアッ……!!」
さっき脳内に直接聞こえてきた声が何だったのか、ルミには分からない。
けれど突然、ルミの魂の奥底からとてつもなく強大で温かい力が湧き上がってきたのだ。
桜色にプラチナの入り混じった光が、ノーティス達を煌めかせてゆく。
「な、なんだこの力は……!」
「なによこれ? 魔力でも私達の闘気でもない、この力は……!」
「どういう事? 力が溢れてきて止まらないわ……!」
「やっべぇ、なんだこりゃ?!」
「フム……信じられないが、まさかこの力は……!」
「そうニャ♪ まさか、ルミだったのはのう……ニャハハッ♪」
「これってホーリー・アークに近いけど、でも、何か違う……」
「アハッ♪ ルミちゃん、さっすがぁーーー♪」
この不思議な神々しい光は、ノーティス達の体が回復するという物ではない。
ただみんな、凄まじい高揚感を感じている。
今までの限界を遥かに超えた力が、体の内側から湧き上がってくるからだ。
これを目の当たりにしたクリザリッドは、とてつもない驚愕を禁じ得ない。
闇の力を滾らせながらも、額からツーっと冷や汗を流している。
この力が自分達にどれだけ脅威になるかというのを、十二分に分かっているからだ。
「ううっ……これは、まさかあの……!」
またクリザリッド同様、クルフォスはルミの姿を震えながら見つめている。
「バ、バカなっ! アレは皆の触媒となる伝説の力……『クナーティア』!!」
恐れおののきながらも、クルフォスにはそうしている時間は無い。
血走る瞳でルミをギロッと睨みつけた。
そして、ルミを消し去る為に闇の力を一気に膨れ上がらせてゆく。
クルフォスからしたら、ルミは一刻も早く消し去らなければいけない存在だからだ。
「光の勇者の鍵となる『光の巫女』よ! 余の力の前に消え去るがいい!!」
クルフォスは掲げた片手の上に素早く闇の力を集約させ、ブワッと勢いよく振り下ろした。
強大な漆黒のエネルギー波がバリバリバリッ!! と、音を立ててルミに向かい襲いかかってゆく。
それを防げる者は誰もいない。
ノーティス達はクリザリッドに向き合っている為、ルミからは離れているからだ。
その隙を突かれたノーティスは、一気に顔を青ざめさせた。
「しまった!! ルミーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」
ノーティスは途轍もない速さで跳び向かったが、もう間に合わない。
クルフォスの放った闇の力は、ルミを闇の光で激しく照らしながら目の前まで迫っている。
だがノーティスは諦めない。
愛するルミを守る為に、片手を前に大きく伸ばして飛び向かう。
───間に合えっ!!!
しかしノーティスの気持ちも虚しく、闇の力はルミに直撃してドオオオオンッ!! と、大きな爆発を起こした。
ルミがいた場所には大きな粉塵が立ち込めている。
その粉塵を前に、ノーティスはガクッと両膝をついた。
「ああっ……何が勇者だ……何が希望の光だ……俺は、一番大切な人を守れなかった……」
ノーティスの全身は、絶望の色に覆われている。
いくら悔やんでも悔やみきれない。
失った今、ルミを愛している行き場のない気持ちが心と魂を駆け巡る。
それに耐えきれないノーティスは両手を床にドシャッとつけ、片手で床をドンッと叩きつけた。
「ぐうっっっ、くそっ!! ルミ……ルミ……ルミーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
その姿を、レイ達は哀しく見つめている。
「そんなっ……」
「ちくしょう……」
「くっ……」
「ぬううっ……」
「う、嘘だこんなの……」
「酷すぎるわ……」
「ノーティス……ルミちゃん……」
ルミの死は勿論の事、ノーティスのあまりにも辛い気持ちが胸に痛いほど伝わってくるからだ。
愛する者を守れずに失ってしまった悲しみは、筆舌に尽くしがたい。
皆その事を充分に分かっている。
だが逆に、それを見ていたクリザリッドとクルフォスは胸を張って嘲笑った。
「フンッ……哀れだなエデン・ノーティスよ。キサマのせいでその女は死んだのだ! ハーッハッハッハッ!」
「クククッ……そうだ! 光の巫女であるクナーティアは死んだ! そしてアルカナートも覚醒める事はなく……」
クルフォスはそこまで言うと、突然サッと血相を変えた。
いなかったからだ。
先ほどまでそこにいたハズのアルカナートが。
ササッと周りを見渡したが、アルカナートの姿はどこにも見当たらない。
───まさかっ?!
クルフォスが心でハッとした声を上げた時、爆風が晴れてゆく中から聞こえてきた。
精悍で自信に満ち溢れた艶のある男の声が、教皇の間に静かに響く。
「ったく、どいつもこいつも……早とちりし過ぎなんだよ。ノーティスの大事な女を、俺の目の前でみすみす死なせる訳ねーだろ」
その声に、ノーティスはバッと顔を上げた。
そしてその声の主が瞳に映った瞬間、あまりの嬉しさに目を大きく見開いた。
「ああっ……!」
また、クルフォスとクリザリッドを除いた他の皆も同様に、嬉しさの溢れる顔で見つめている。
煙の晴れてゆく中で剣を片手で斜め上に構え、不敵な笑みを浮かべているアルカナートを。
「し……師匠っ!!」




